35話 バグってすごいですね
バフェットは、スマートフォンを持ちながら、自分に命令してほしいと私に行ってきました。意味が分かりません。私は彼に聞き返します。
「命令ってどういうことですか?」
「命令は……『左手をあげてください』とかでいいかな」
バフェットはそう言うと、見えない壁の前で剣を構え言いました。
「ミカは、僕の挙動がおかしくなったら、壁に向かって殴り飛ばしてほしい」
「え!? バフェットさんを殴るんですか? それに何ですか? 挙動がおかしくなるって……」
「ものは試しだよ。それじゃ、始めようか。僕が右手を上げたら、マリーは質問をしてね」
バフェットはスマートフォンを操作し、地面に置きました。しばらくすると、スマートフォンから音声が聞こえます。
「もしもし、どうした?」
「もしもし、兄さん? ちょっと、通話をつないでみたよ。実は、試したいことがあってさ……」
「何を試すんだ?」
「《会話ストレージ》が成立するかどうかを試そうと思って」
「なるほど。それは、面白い試みだな。なら、俺はどうすればいい?」
「うん。マリーが『左手をあげてください』って命令するから」
「わかった、それじゃ俺は『左手をおろしてください』って命令すればいいな?」
「うん、それでいいよ」
バフェットは、そう言うと、左手に剣を持ち、右手を上げました。これは、合図です。私は、彼に命令します。
「バフェット! 左手を上げてください」
すると、スマートフォンからも音声が聞こえます。
「バフェット! 左手をおろしてくれ」
「うん、わかったよ」
バフェットは、私たちの命令に答えます。すると、剣を持っていた左手の挙動がおかしくなりました。なんか、ものすごく上下に動いています。残像がめちゃくちゃ見えます。というか、腕のながさが2mくらいに伸びて、グニャグニャに曲がっています。気持ち悪いです。これは、なんでしょうか? 呪いとかでしょうか? 私には、さっぱりわかりません。 しかし、ミカさんは、何が起こっているのか見当がついたようです。
「なるほどそういうことですか」
「いや、どういうことですか!?」
ミカさんは、バフェットの顔を殴りました。すると、バフェットは、見えない壁をする抜けて吹き飛ばされました……いや、本当にどういうことですか!?
「会話ストレージからの《壁抜けバグ》成功だね」
「やっぱり、バグを起こしたかったんですね」
「私を置いてきぼりにしないでください!!!」
「まぁまぁいいじゃないか。ともかく、これで侵入できそうだよ。ちょっと見てくるよ」
「いや、それは危ないんじゃ……」
すると、バフェットは2種類のビンと屋敷から持つて来たであろうビーカーを取り出し、混ぜ合わせました。すると、そのビーカーから凄まじい量の煙が立ち込めます。数分もすると、建物の中に居た人間が、火事だと勘違いし次々と外に避難します……。
それにしても……その煙は安全なのでしょうか? そんな心配はしたものの、あわてて建物から飛び出すグラバーの姿をみて、ちょっと気が晴れました。しばらくして、バフェットが何かを持って戻ってきます。
「それじゃ、退散しようか。いい物も手に入れたし」
私たち3人は、屋敷に戻り一部始終を旦那様に報告しました。
「そうか……ご苦労様」
旦那様はそう言いましたが、なんだか不機嫌な顔をしています。旦那様は、バフェットに言います。
「で? その煙を出すために、私の実験室から“塩酸”と“アンモニア水”を持ち出したのかね?」
「ええ。申し訳ありませんでした」
「はぁ~~~。まあいい、次からは、一言いってくれたまえ。それで、何か収穫はあったのかね?」
「ええ……あの連中は、とんでもないことしてますね。」
バフェットは、違法ギルドで手に入れた木の箱を旦那様に渡しました。旦那様は、その箱の中身を見て絶句しました。ミカさんは、バフェットに質問しました。
「何が入っているんですか?」
バフェットは答えます。
「ニセ銅貨を作るための型だ」
旦那様は、頭を抱えながら言います。
「こんなことをされては、通貨のシステムが崩壊してしまう」
私は、旦那様に質問します。
「どういうことですか?」
「考えてもみたまえ。銅貨50枚で銀貨1枚と交換できるのがこの領地でのルールだ。しかし、偽物の銅貨が出回ってしまえば、銅貨の信頼が落ち、交換レートを変えざる負えなくなる。例えば、銀貨1枚に対して銅貨が100枚になったりする。そうなってしまえば、銅貨の価値と信頼は、落ちてしまい、町は大混乱になるぞ。」
今度は、ミカさんがバフェットに質問します。
「バフェットさんこれって、《インフレーション》が起きるってことですか?」
「その通りだよ。最悪の場合、小麦粉1ポンド買うのにも銅貨が100枚(1万円分)必要とか、そういうわけわかんないことが起こってしまうんだ。そんなことになれば、大混乱間違いなしだね」
「バフェットさん。やっぱり、あのグラバーって人は、バフェットさんと同じで経営のプロなんですか?」
「…………いや、たぶん大したことないと思う」
「え!? どうしてですか? やってること賢そうですけど」
「僕はそう思わない。ずいぶんと浅はかな方法だと思うよ。そもそも、最初に出会ったときから、彼は大した人物じゃないとすぐに気づいたよ」
「そうなんですか?」
ミカさんが、バフェットにいいました。バフェットは、話を続けます。
「話し方も学生言葉だった、名刺交換もまるでなってなかった。僕は、普通の人よりは、人を見る目がある。多分、彼は意識高い系の大学生か社会人になりたての人間だと思うよ。それにね……」
「それに?」
「確かに、銅貨の流通量を増やされることは、厄介なことだけど、きちんと対策すれば、被害は最小限にできるよ。いや、むしろクラン領の資金を奪うことだって可能かもしれない」
「それは、本当かね?」
「ともかく、このままニセ銅貨が作られる状況は止めないといけないですね。新しい銅貨を発行した方がよいでしょう。」
「それは、構わんが。また模造されるのではないのかね?」
「ひとまず、銅に別の金属を混ぜることで、何の金属か分からないようにしましょう。そうですね……亜鉛を3割程度混ぜたらいいんじゃないでしょうか? そうすれば、※黄色い銅貨が出来上がりますから、亜鉛を混ぜていることを知らない限りは、コピーは難しいと思います。」
※ 日本の5円玉は、銅と亜鉛の合金でできています。
「わかった。では、私はひとまず新しい銅貨の発行の準備をするとしよう。」
「準備にどのくらいかかりますか?」
「1か月ほどだな」
「わかりました。それならば……その間に、こちらでも出来ることをやっておきましょう。」
「すまないバフェット君。また、君の力を借りるよ。マリー君、私たちは新しい通貨を作る準備をする。これから忙しくなると思うが、よろしく頼むよ」
「全力を尽します!!」
「……ところで、バフェット君。ずっと気になっていたのだがね」
「はい、なんでしょう?」
「その意味不明な挙動をしている左手は、一体どうしたのかね!!?」
「あはは、まずは、このバグを解決することが先決ですね」
バフェットの左手を元に戻すには、本当に苦労しました。二度とやってほしくありません!!
は!?」
【バフェットの経済状況】
商品
小麦粉 6000ポンド
所持金
前話での繰り越し
2,290,500円
支出
コーヒー代 600円
計 2,289,900円
借金 4,260,000円
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