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32話 株式会社を設立します

モンスター図鑑


ガーゴイル

羽の生えた悪魔のような見た目のモンスター。見た目のわりに人に懐くため、馬車ならぬガーゴイル車として利用されることがある。ただし、馬車よりも高額である。


 「会社をつくる」バフェットはそう言いました。会社とは、一体何なんでしょうか? 旦那様も詳しく知らないようで、首をかしげながらバフェットに質問します。


「……会社……かね? イギリスの東インド会社のようなものかね?」


さすがは旦那様です。会社の意味を知っているようです。それにしても……イギリスってどこ!? バフェットは答えます。


「確かにあれも会社ですが……今回目指すのはオランダの東インド会社です。」


あ……もうこれは、ついていけないやつです。旦那様も、何とか彼の会話についていっている状態です。


「イギリスとオランダでは、仕組みが違うという事かね?」


「ええ……そんなところです。今回の事業内容は、未開の地を探索し、新たな資源を採取するというものです。これには、莫大な費用とリスクが伴います。」


「だから、商人たちに声をかけて協力してもらうのではないのかね?」


「いえ、それでは名乗り出るものは少ないでしょう。なにしろ、リスクが高いですからね。そこで……僕が今回は《株式会社》を設立しようと思います」


もう、何を言っているのかわかりません。旦那様も、さすがにこの株式会社という言葉には心当たりがないようです。バフェットは、前傾姿勢になりながら説明を始めました。



「仕組みとしては簡単です。株式会社を設立する際に、株券というものをまず発行します。そして、この株券を町の人たちに買ってもらい資金を集めるのです。


 そうですね……例えば、株券1枚を金貨1枚(25万円)で売ったとして、全部で1000枚売れたとしましょう。そうすると、金貨1000枚分(2億5千万円)を元手に、探索に行けるわけです。


 そして、探索によって得られた資源を売りさばいて、元手と合わせて金貨2000枚に換金できたとします。そうしたら、株券1枚につき金貨2枚を購入した人たちに返金します。これが株式の基本的な仕組みになります。


 これには、いくつかメリットがあります。一つは、出資する金額を株券を買い取る人がコントロールできるという点です。株券1枚の金額を低めの金額に設定すれば、多くの人が買ってくれますし、多額の資金を出資したい人は、株券の枚数を増やせばよくなります。もう一つのメリットは、この方法ならば、最悪の事態が起こっても、出資した金額以上の損失が出ないということです。どうでしょう? これならば、資金調達もかなり出来るのではないでしょうか? 」



彼の説明を聞いて、私も旦那様も株式についてある程度理解できました。私は、気になったことを彼に質問してみることにしました。


「それで、その株券というものを1枚いくらで売るのですか?」


「そうだよね。そこで、ざっくりと必要な金額を計算をしてみたんだ」


バフェットは、そう言うと数枚の紙を取り出しました。彼は、その紙に書かれている数式を指でなぞりながら説明を始めます。



「まず、目的となる地点の距離は不明ですが、移動にかかる時間はおおむね計算できます。まず、クラン領とアントワーヌ領を移動すると馬車で2日かかります。この距離と今回の目的地までの距離はおおむね25倍である可能性が高いです」


「どうしてそんなことがわかるのかね?」


「このスマホのなかに、この世界の地図が保存されているんです。調べたところ、ゲームでの距離と、この世界での実際の距離は、比例していることがわかっています。」


「ああ、そうだった。この世界は、君の会社が開発したゲームを元に作られているのだったね。ともかく、君の話が正しいとすると、片道を馬車で移動するには50日かかるということだね。」


「その通りです。そして、1台の馬車を1日輸送させるのに必要な金額は、銀貨4枚分程度であることがわかっています。なので馬車1台で探索に行くと、往復で100日かかりますから、4×100=400枚の銀貨(金貨8枚)が必要なことが分かります。


 そこに、冒険者を2人護衛として、運転手を1人雇って探索すると、1日分の人件費や食費が3人あわせて銀貨10枚。これが100日続くわけですから10×100=1000枚の銀貨(金貨20枚)が必要になります。


 必要な費用は、これだけでも金貨28枚が必要だとざっくり計算できます。そこに加工費なんかを加えて金貨30枚くらい必要になります。


 なので、株券1枚の値段を金貨1枚にして、大体150枚くらい販売したいなと考えています。そうすれば、馬車を5台、従業員を15名にできますからね。」



「なるほど……だが、いくつか修正する必要があるだろうね」


旦那様は、バフェットの試算に感心しながらも、そういいました。私には、どこに修正が必要なのか全くわかりません。しかし、バフェットはそれを言われることがわかっていたかのように言いました。


「やはりそうでしたか~。どこです?」


「馬車よりも移動速度の速い運搬方法があるのだよ。長距離の荷物の運搬には、ガーゴイルを使う方がよいだろう。賃金は高額だが、おそらく3倍~4倍の速さで移動できるはずだ。ならば、馬車で行くより安く済む」


「やっぱり、モンスターを利用した運搬方法が存在していましたか……。」


「せっかくだ。ガーゴイルを扱っている商人を紹介しよう。少し、時間はかかると思うが、その間は準備に専念してくれたまえ。」


「ええ、協力感謝します。」



 バフェットと旦那様は、会社を立ち上げる準備を始めました。私もその手伝いをするために、書類を整理することになりました。その作業の途中で、私は1枚の手紙を見つけました。どうやら、バフェット宛の手紙のようでした。私は、その手紙を彼に手渡します。バフェットは、それを読むやいなや顔が凍り付き始めました。彼のこんな表情を、私は一度も見たことがありません。私は、彼に質問しました。


「どうしたのですか?」


「うん……ついに……強敵が出現したよ。」


「どういうことですか?」


彼は、私に手紙を渡してくれました。そこには、次のような内容が書かれていました。



 初めまして、バフェットさん。私は、あなたと同じ異世界から転移してきた人間です。この世界では、グラバーと名乗って過ごしています。そして、あなたがバフェットと名乗る意図を理解している人物でもあります。私は、経営学について多少の学があります。どうでしょう、一度お会いしませんか? 私たちの力で、この世界をもっとよりよく変えていきませんか? 良い返事を期待しています。



「これって…………あなたと同じ」


「うん、異世界転移者だね。しかも、僕と同じような知識を持った人物みたいだ。」


「それじゃぁ、仲間になってくれれば心強いじゃないですか。」


「……僕はそう思わない。僕がこの屋敷に住んでいることを知っている人物って誰だと思う?」


「それを知っているのって……まさか……」


「領主クランだよ。奴の手元に経営のプロが居るってことになると、この先かなり苦戦を強いられるのかもしれないね。」



【バフェットの経済状況】


商品

  小麦粉  6000ポンド


所持金

  前話での繰り越し

   2,265,500円

  収入

  給与 25,000円

  支出 0円 


計 2,290,500円


借金 4,260,000円



最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった、続きを見たい、ガーゴイルに乗ってみた~い」


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