25話 仕様書とは何かね?
アロケルとは?
ソロモン72柱の悪魔の一人。天文学や教養学に長けており博識な悪魔である。ソロモンの世界では、人間に化け、賢人として生活しているようだ。
次の日の朝、バフェット君は書庫に入りびたり、本を読み漁っていた。なぜ、キラーカメリアが大量発生したのか、その原因を探るためだ。一方で私は、バフェット君からスマートフォンを借りてあるものを読んでいた。私は、彼の邪魔になって悪いとはわかっていたのだが、興奮を抑えきれずに彼に話しかけてしまった。
「バフェット君!! このスマートフォンに書かれている内容は、本当に10代の子が学ぶものなのかね!?」
バフェット君は、魔術に関する書籍を読みながら答える。
「はい。それは、教科書と言って、その内容に沿って教師たちが生徒に科学を教えているんです。特に、その中学校の教科書の内容は、義務教育と言って、すべての国民が授業を受けているんです。」
「本当に、君のいた時代は素晴らしい! 私の研究していた内容がこうも分かりやすく書かれているとは……最も、厳密性には欠けているが。おまけに、私の肖像画も教科書に載っているではないか!! なにより、私の研究が、科学の入り口に過ぎないとは……面白い!!
……すまない。つい興奮してしまった。それで、そちらの調子はどうかね?」
「残念ながら、手がかりを見つけられていませんね。キラーカメリアの生態やら、モンスターを召喚する方法やらを調べているのですが……」
「そうか……難航しているようだな。……だが、探究とは地道なものだ。」
「……ええ。解析結果が届くまでもう少し粘ってみます。少なくとも、やつらの発生源は、解析され次第判明するんです。のんびりやりますよ。」
バフェット君が、そう言い終わった直後だった。突然スマートフォンの画面が切り替わり、音が鳴り始めた。バフェット君は、私からスマートフォンを受け取ると、画面をタップして机の上に置いた。まもなくして、スマートフォンから声が聞こえ始めた。
「またせたな。エラーの解析おわったぞ」
「うん。ありがとう兄さん」
私は、解析という言葉を聞き、バフェット君の後ろから身を乗り出して、スマートフォンの画面を覗き込んだ。すると、スマートフォンから、また声が聞こえる。
「そうだ、今回は試したいことがあるんだ。」
「なんだい兄さん」
「ビデオ通話って出来るか? 今後映像とかが分かれば便利だと思ってな」
「うん。やってみるよ」
バフェット君は、スマートフォンを操作した後、本に立てかけた。画面には、少年の顔が映っていた。私は、バフェット君に質問した。
「バフェット君、彼が君の兄君なのかね?ずいぶん見た目が若いようだが……。」
バフェット君は答える。
「彼は、こう見えて40近いんですよ。とある理由で見た目が若いんです。」
彼の兄は、私の方を見て言った。
「すまない。そちらの方は? …………どこかで見たような……。」
「そう言えば、兄さんには言ってなかったね。この方は、アントワーヌ・ラボアジエさんだよ。この世界に異世界転生したんだって。」
すると、その少年は、飛び上がり、興奮した様子で言った。
「本物なのか!!?」
「いかにも。私がラボアジエだが」
「まさか、あなたのような方にお会いできるなんて! 大変光栄です!! あとで是非お話を伺いたい! ……失礼つい興奮してしまった。本題に戻ろう。解析した位置情報は、メッセージに送っておいたから後で確認してくれ。それから、会社に問い合わせたら、ソロモンの仕様書と設定書のPDFデータをもらったから、これも送っておくぞ。」
「わかったよ。ありがとう兄さん。」
私は、2人に質問した。
「すまない、その仕様書というのは、何なのかね?」
私の質問に、バフェット君の兄が答える。
「ラボアジエさんは、弟からソロモンが、私たちの世界で開発されたゲームの世界だということは、聞いていますね?」
「ああ。ゲームというものも体験済みだ。」
「仕様書というのは、そのゲームの設計図みたいなものなんです。どんな、世界なのか、プレイヤーにはどんな力があるのか、どんなモンスターがいるのか、そんな内容が事細かく記されているんです。」
「なるほど、そんな書類を作っていたのだな。では、それを見れば、キラーカメリアが大量発生する原因もわかってしまうというわけか。」
「ところが、そういうわけにもいかないんです。」
今度はバフェット君が私に言った。
「どういうことかね?」
「ゲームでは、この周辺にキラーカメリアは出現しないんです。それに、キラーカメリアを持ち込む方法も本来存在しないはずなんです。無理やりこの地に持ち込んでも、消滅するようにプログラムしてあったはずです。」
「なるほど、ゲームの世界とこちらの異世界では、多かれ少なかれ齟齬があるということか。持ち込んだら、消滅するなど、化学の基本法則を完全に無視してしまっているからな。」
「なので、こちらの世界の書物を調べていたんですが……なかなか手がかりは、見つからないですね。」
「そうか……。うまくいかないものだな……。《アロケル》のような賢人が近くに居ればな……。」
「……え?……アロケル」
「知らないのかね? 私も滅多に会えないのだが、大変博識な人物なのだよ。」
私の言ったことに、バフェット君は何かに気がづいた。
「兄さん……アロケルって確か……」
「……ああ。ソロモンに実装される予定だった悪魔の名前だ」
「もしかして、この世界には、ゲームでは実装していない悪魔が居るんじゃ……。ラボアジエさん!! この世界の悪魔に関する書籍はありますか!?」
「あ……ああ。その本棚にあったと思うが……。」
バフェット君は、急いで本棚にある悪魔に関する書籍を探り始めた。そして、どうやら彼の見立ては的中したらしく……。
「……これだ。推測でしかないけど、この方法ならキラーカメリアをこの地に送り込めるかもしれない。」
曇っていたバフェット君の表情は、一気に明るくなった。私は、彼に質問する。
「それで、何とかなりそうかね?」
「はい。いずれにしろ、ニードルワームさえ確保していれば、キラーカメリアは討伐できますし、まずは、発生源の場所に行く必要がありそうですね。」
「そうか、なら私も同行しよう」
「いえ、ラボアジエさんには、やってもらうことがあります。」
「ほう……。それは何かね?」
「今回の騒動の犯人をあぶりだしてほしいんです。それから、キラーカメリアの天敵がニードルワームであることは、まだ伏せておいてください」
「分かった。では、詳しく話を聞こうか……」
それから、数日間バフェット君とミカ君はニードルワームを捕獲し始めた。きっと、今までと同様の方法でキラーカメリアに対処するつもりなのだろう。一方で、私は数日間屋敷を空け、ある場所に向かっていた。
「アントワーヌ殿、私に何の用かね?」
私は、クランの屋敷に来ていた。今回の一件について探りを入れるためだ。私は、彼に言った。
「ここ最近、私の領地でキラーカメリアが大量発生していてな。ほとほと困っている状況なのだよ。クラン殿の領地では、出没しているのかね?」
クランは、不気味な笑みを浮かべながら言った。
「それはそれは、とんだ災難ですな。もっともこの領地では、そんな話は出ていないがね。そうだ! うちの領地の冒険者を派遣しても構わないがどうかね?」
「そうだな。これ以上増えるようなことがあれば検討しよう。」
「それで……キラーカメリアの大量発生のことを聞くためだけにわざわざ来たのかね?」
「まさか。今日はこれを渡すために来たのだよ」
私は、クランの使用人に紅茶葉を差し出し言った。
「うちの領地で作った新しい紅茶だ。気にいれば、そちらの領地でも販売したらいい。では、私はこれで失礼する。」
私は、振り向きざまに言った。
「ああ……そうだ。クラン殿は、《バティン》という者をご存じかな?」
「バティン……知らないな。」
「そうですか。あなたのような方なら知り合いでも、おかしくはないと思ったのだが……」
私が、そのように挑発すると、彼は言った。
「なんだと! 失礼ではないか!!」
私は、にやりと笑って言った。
「なぜ、失礼なのです? 本当は、バティンが何者なのかご存じだから、失礼だと思ったのでは?」
「…………………………。」
「では、私はこれで失礼する。ああ、ちなみに、その紅茶葉は、キラーカメリアの葉っぱで作ったものだ。意外と美味なので、ぜひ試してほしい。…………では。」
私は、クランの屋敷を後にした。どうやら、今回の一件もクランの仕業であることは間違いなさそうだ。それは、私がバティンという言葉を口にしたからだ。その名前は、断じて人の名前ではない。この世界に存在していると言われている《悪魔》の名前だ。それにしても、クランが分かりやすい反応をしてくれたおかげで、探りを入れる手間が省けた。さて……あとは、バフェット君がどうやって、解決するかだ……。
【バフェット君の経済状況】
所持品
コーヒー豆150g 銅の鎧 木の大盾、スマートフォン、モバイル充電器、ビジネスバッグ
収入
金貨 2枚 500,000円
→ キラーカメリア討伐分
所持金
銀貨7枚 35,000円
銅貨35枚 3,500円
計 38,500円
借金
金貨19枚 475万円
銀貨35枚 17万5000円
計 492万5000円
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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