23話 なぜ気持ち悪そうにしているのかね?
チャドクガとは
お茶の葉やツバキを食害するケムシで、見えない小さな毒針を飛ばす。その毒針に触れると、湿疹などが生じる。学校などにも発生するので、秋ごろに被害に遭う小中学生なども多い。
バフェット君の提案で、私たち4人は森の中を探索することになった。それにしても……
「バフェット君、どうしてトゲの抜けたニードルワームを抱えながら移動しなくてはいけないのかね?」
「キラーカメリアに襲われないようにするためですよ」
「これで本当に、効果あるのかね?」
「たぶん、あるんじゃないですか?」
私たちは、ニードルワームを抱きかかえながら森の中を歩き回った。外から見たら、とんでもない絵ずらになっていることだろう。明らかに不審者だ。ミカ君は、ニードルワームの扱いにすっかり慣れてしまっているようで、頭の上にニードルワームを乗せていた。ニードルワームも、その状況に慣れているようで、彼女の頭の上で体を半分起こし、頭をフリフリさせている。……意外と愛玩動物として売れるのでは?
しばらく、森を散策を続けていると、私たちは怪しげな洞窟を発見した。もしかしたら、冒険者たちが好んで探索している《ダンジョン》というやつだろうか? もしかしたら、ここに何かのヒントがあるかもしれない。私たちは、意を決してその洞窟の中に入った。
洞窟の中は、照明がついているかのように明るく、まるで建造物の中に居るようだった。そのダンジョンは、長い1本道にいくらかの横穴があるような構造だった。しばらく、歩いているとその横穴から数匹のゴブリンたちが現れた。ミカ君が言った。
「結構な数ですね。これだと私だけではキツイです。一度退散した方が……」
私は、先頭に飛び出し、ミカ君とバフェット君に言った。
「その必要はない!」
私は、ゴブリン達に駆け寄り、素手で殴り倒した。私も、この世界に転生した際に身体能力がある程度向上していたのだ。ゴブリン程度の相手などはっきり言って話にならない。だが、バフェット君たちは、その様子を見て呆然としながら言った。
「え……強くないですか?」
「何を言っているのかね? 君たちが弱すぎるのだ。私も、この世界に来てすぐに領主になったわけではない。モンスターの討伐をしていた下積みの時期もあったのだ。もっとも、大半の冒険者は、この程度の事など朝飯前のはずだが?」
ミカ君は、悲しそうな顔で言った。
「私……何年も冒険者してるのに……。領主さんより弱いなんて……。」
私がゴブリンの集団を気絶させ、奥に進むと、そこには大きな扉らしきものを発見した。明らかに人が作ったものである事は、言うまでもない。扉は、固く閉ざされており、私の読めない文字で、文章らしきものが書かれていた。しかし、その得体の知れない文字に、バフェット君とミカ君は心当たりがあるようだった。ミカ君がバフェット君に言った。
「バフェットさん……これって……」
「日本語だね」
私は2人に言った。
「その日本語という言語は、まさか……君たちの国の母国語かね?」
「ええ。その通りです。」
バフェット君は、そう答えると、扉の文章を読み始めた。
『これより先は、2類または3類の異世界転移者のみ立ち入ることが出来る。入る場合は、右側の四角い枠に手を合わせて認証すること……』
「なるほど、私とマリー君は、中に入れないというわけか……。ならば、私たちは、ここで待機していよう。他のモンスターもいるかもしれん。ここで私が足止めをしておこう。君たちは、安心して奥に進むといい。」
「わかりました。それじゃミカ! 行ってみようか」
「はい!」
2人は、扉に描かれている四角い枠に手をかざした。すると、2人の姿は消えてしまった。なるほど、別の場所に瞬間移動させられたのだな。扉が開こうものなら一緒に侵入してしまおうかと思ったのだが……残念だ。後で話を聞くとしよう。
バフェット君たちが、飛ばさせた先は、二人とも見覚えのある場所だった。そこは、真っ白な何もない空間だ。2人は、その何もない空間にフワフワと浮かんでいる。ここは、この異世界に連れてこられる前に、神と出会った場所だった。そして、何もない場所から、突如光が漏れ出し、和服を着た少女が姿を現した。バフェット君は、彼女に言った。
「随分と久しぶりですね。えっと……《救済の女神》様でしたっけ?」
救済の女神は、言った。
「2人とも久しぶりですね。ここは、いわゆる隠しダンジョンと呼ばれる場所です。ここでは、このダンジョンを発見した特典として。能力をアップすることができます。」
その言葉を聞き、ミカ君は飛ぶように喜んだ。
「え!?本当ですか!?」
「はい、まずはミカさん。あなたのレベルを10アップさせます。これで、あなたのレベルは13になります。では、行きますよ……」
女神は、両手を合わせたかと思うとその両手を天に向けた。すると、天からリンゴほどの大きさの赤い色をした玉が降りてきた。その玉を女神がキャッチすると、ミカ君に手渡した。
「レベルアップ玉です。これを使用すれば、レベルアップします。」
ミカ君は、レベルアップ玉を受け取り、いろんな角度から眺めたり、真上に投げたりしてみた。しかし、何も起こらない。ミカ君は、女神に質問した。
「えっと……これ、どうやって使うんですか?」
女神は、無表情で答える。
「食べて下さい」
「……へ?」
「全部食べて下さい」
「えーーー!!! 食べなきゃダメなんですか!?」
「そうですね。食べないとレベルアップできませんね。」
ミカ君は、恐る恐るそのレベルアップ玉を口にした。まるでリンゴをかじったような音がする。その直後ミカ君が涙を見せながら言った。
「うわ……なにこれマッズ!!!」
「頑張って下さい」
「う………うぐ………。」
ミカ君は、必死にレベルアップ玉にかじりつく。その様子を確認した女神は、バフェット君に向かって言った。
「あなたにも、特典を差し上げます。あなたには、チートアイテムを解禁したいと思います。」
女神は再び、手のひらを天に向けた。すると今度は、バフェット君が、逮捕された際に没収された彼のカバンがゆっくりと降りてきた。
「あなたが現実世界から持ち込んだ荷物をお返しします。中に入っているスマートフォンを見てください。」
バフェット君は、カバンからスマートフォンなるものを取り出した。すると、電池切れになっていたにも関わらず、スマートフォンが起動していた。女神が続けて説明する。
「あなたには、スマートフォンを授けます。バッテリーは、充電しておきました。現実世界と同様に使用が可能です。ただし、通信容量に制限があるので気をつけて下さい」
「わかったよ。それで、今後は充電をどうやってやればいいのかな?」
「安心してください。カバンの中にソーラー電池搭載のモバイル充電器を入れておきました。この充電器が壊れない限りは大丈夫です。」
「なるほど……これは、色々と試してみる価値がありそうだね。いいものを貰った。感謝するよ」
一方のミカ君は、なんとかレベルアップ玉を完食し、
「う〜!! なんとか完食しました〜! これでレベルが10アップするんですよね?」
すると、女神が無慈悲に答えた。
「何を言ってるんですか? 一つ食べるごとにレベルが1上がるんですよ。というわけで……」
女神は、どこからともなくレベルアップ玉を9個取り出し言った。
「あと9個です。頑張って下さい」
神は無慈悲だった。
2人が瞬間移動したのを見送ってから小一時間、ようやく彼らが戻ってきた。ミカ君は、酷く憔悴しきっていたが、この時は、まだその原因がレベルアップ玉を食べたことだとは知る由もなかった。
結局のところ、キラーカメリアの大量発生の原因は突き止められなかったが、バフェット君は、スマートフォンというよく分からない装置を手に入れていた。まさか、あの装置が今回の事件を解決する鍵となるなど、この時の私は思いもしなかったのだ。
【バフェット君の経済状況】
所持品
コーヒー豆150g 銅の鎧 木の大盾、キラーカメリアの目玉4個、スマートフォン、モバイル充電器、ビジネスバッグ
(リヤカー 鉄のオリ)←レンタル
所持金
銀貨7枚 35000円
銅貨35枚 3500円
計 38500円
借金
金貨19枚 475万円
銀貨35枚 17万5000円
計 492万5000円
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