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21話 高みの見物をさせてもらえないかね?

ラボアジエとマリー

ラボアジエは、この世界に異世界転生した際に、戦闘能力が多少向上している。おおむねレベル10程度であり、初心者冒険者よりも戦闘能力は高い。また、使用人のマリーも、トレーニングを重ねたため、同程度の戦闘能力を持っている。


 「キラーカメリアを討伐しに行く」バフェット君のその言葉にミカ君は凍り付いた。その様子を見ながら、バフェット君は言った。


「不安かい?」


「不安とかじゃないですよ!! 無理ですよ!!」


「無理って……どうしてだい?」


「何言ってるんですか!? バフェットさんも見たでしょう!? 木を切り倒しながら追いかけまわされたじゃないですか!! あんなの討伐できないですって!!」


「僕はそう思わない! 大丈夫だよ。だって、僕らのほうが足早いじゃないか」


「………………もしかして。何か秘策があるんですか?」


バフェット君は、にやりと笑みを浮かべて言った。


「もちろんだよ。明日、町の近くの森でキラーカメリアの目撃情報があったから、そこを探索するよ。でも、今回は危ないから、僕一人で行っても構わないよ」


「……いえ。私も手伝います!」


「ホントに? ありがとう、助かるよ。もちろん、報酬は山分けしよう。それじゃ、僕はそろそろ屋敷に戻るよ。また明日ね。」


「はい……よろしくお願いします。」



 その日の夜、実験室で試薬の調整をしている私のもとにバフェット君はやってきた。私は、メスフラスコと呼ばれる器具を上下に振りながら言った。


「ああ、バフェット君。久々の依頼はどうだったのかね?」


「ええ、装備のおかげで楽勝でしたね。」


「そうかね。そう言えば、君は明日も休暇を取っていたが、明日も冒険者の宿に行くのかね?」


「はい。もう依頼を受けてきました。」


「ほう……。それで、どんな依頼なのかね?」


「キラーカメリアの討伐です」


「な……なんだと!?」


私は、動かしていた手を止めて、言った。


「あれは、かなり熟練した冒険者でないと倒せないと聞くが、勝算はあるのかね?」


「もちろんです。」


バフェット君がそう言うと、反対側の机で作業を手伝っていたマリー君が話に入ってきた。


「勝算なんてあるわけないでしょう。何も考えていないだけなのではないのですか?」


彼女は、相変わらずバフェット君に対して辛辣だ。今更ではあるが、私はバフェット君の戦闘能力については分からなかった。もしかしたら、キラーカメリアなど簡単に倒してしまうのではないだろうか……。いや、それはないな。彼のことだ、それだけの戦闘能力があれば、その力を使って資金を調達するに違いない。おそらく、何か考えがあるのだろう。そう思うと興味がわいてきた。私も最近、運動不足で体がなまっていたところだ。私は、彼に言った。


「バフェット君、私も同行して構わないかね?」


私がそう言うと、マリー君が慌てて言った。


「旦那様いけません!! 危険です!! キラーカメリアですよ!」


「遠くから眺めるだけだ。安心したまえ。心配ならばマリー君もついてきたらいい。」


「ですが……」


マリー君は、食い下がったが、私の目を見てこれ以上反論するのを諦め言った。


「いえ、もう何を言っても無駄でしょうから。私も同行します。」


「うむ。それでは、私たちは、遠くから見ているから気にせず討伐に励んだらいい」


「そうですか。では、楽しみにしていてください。」


バフェット君は、笑みを浮かべながら、その場を立ち去った。



 次の日の朝、私は身支度を済ませて、屋敷の外に出ると、すでに準備を済ませたバフェット君が待機していた。バフェット君は、私の恰好を見て言った。


「冒険者みたいな格好ですね。」


「当然だ。普段の服では動きづらいからな。合理的であろう?」


私がそうバフェット君に言った直後、マリー君が屋敷から出てきた。


「すみませんお待たせしました。」


彼女も、防具と片手剣を装備していた。これで、全員だ。私は、久々の外出に心を躍らせながら言った。


「それでは、町まで行くとしよう。久々に走るとしよう。それでいいかね?」


マリー君は、涼しい顔で返事をする。


「はい。お供します。」


私も、この世界に異世界転生をしてきた。その際に、神から常人とはかけ離れた身体能力を授かっていた。もっとも、この世界には、私よりも身体能力の優れた人間が山のようにいるのだが。私は、軽く走り始めた。マリー君も涼しい顔でついてくる。軽くといっても、私の身体能力は、前の世界に居た頃よりも格段に向上している。場合によっては、馬車よりも走った方が早い場合もあるくらいだ。しかし、ふと後ろを見ると、バフェット君がついてこれないことに気が付いた。私は、彼の元に駆け寄り言った。


「バフェット君どうしたのかね? 君は、元冒険者なのだろう? それに、銅山で多くの冒険者を討伐したのではないのかね?」


すると、バフェット君は息を切らしながら言った。


「ぜぇ……ぜぇ……。僕の身体能力は、一般人と全く一緒なんです。」


「な……なんだと!? では、どうやって今までやってこれたのかね!? ……そうか! 身体能力を制限することと引き換えに、強力な魔法を習得しているか、そうなのだろう?」


すると、バフェット君は言った。


「いえ……全くの一般人です。」


すると、マリー君があきれた顔で私に言った。


「これじゃ、話になりませんよ!! キラーカメリアなんて、夢のまた夢です。遭遇したら、惨殺されます! 旦那様、もう帰りましょう!」


しかし、私はかえってバフェット君に興味を抱いていた。


「いや、そんな状況で、キラーカメリアとどのように対峙するのか、余計に興味がわいてきた。引き続き見守ることにしよう」


マリー君は、ため息をつきながら言った。



「はぁ~~。もう勝手にしてください」



 それからは、バフェット君の歩くペースに合わせて町に向かった。町の中を3人で歩いていると、バフェット君が小声で私に言った。


「変装はしなくていいんですか? ご主人様は、領民には税をむさぼる悪徳貴族として恨まれていますよね?」


「確かにそうだが、それは問題ない。ほとんどの者が、私の顔を知らないからな。それに、冒険者の恰好をしていれば、《アントワーヌ・ラボアジエ》と名乗ったとしても、誰も信じないだろう。」


「そうですか。なら、安心ですね。」



 町の広場に行くと、リヤカーで大きな荷物を運ぶミカ君が目に入った。その荷物は、非常に巨大で、布がかぶせてあった。ミカ君は、バフェット君を見つけると、リアカーを引っ張りながら近づいてきた。


「バフェットさんおはようございます! お隣に居るのは、アントワー………」


ミカ君が大声で私の名前を言おうとすると、バフェット君は、彼女の口を手でふさいだ。周囲が私たちのことを見ていたのは気のせいだろうか。ともかく、私とマリー君は、リヤカーを引っ張る2人の跡についていった。



 歩くこと数分、目的の森に到着した。この森周辺では、ここ最近キラーカメリアの目撃証言が相次いでいた。私とマリー君は、見渡しの良い高台に移動し、2人の様子をオペラグラスを使いながら見物することにした。マリー君は、つまらなそうに見張りをしている。私は、荷物入れから予備のオペラグラスを取り出し、マリー君に言った。


「マリー君も見るかね? 暇だろう?」


「………………。」


私とマリー君は、2人そろってオペラグラスを使いながら、近くの岩場に腰かけた。はたから見れば、とんでもない絵ずらになっていただろう。しばらく眺めていると、マリー君が言った。


「旦那様、キラーカメリアがバフェットの所に近づいてきています。」


「おお、確かに近づいてきているな。それに、遠くに3体ほどうろついているな。さて、バフェット君はどうするのか……。楽しみだ」


すると、マリー君がこんなことを言った。


「なんだか私たち、小説に登場する悪役みたいじゃないですか?」


「………………確かに違いない。」




【バフェット君の経済状況】




所持品

コーヒー豆150g 銅の鎧 木の大盾 ニードルワーム50体

(リヤカー 鉄のオリ)←レンタル


所持金

銀貨7枚   35000円

銅貨35枚   3500円

計      38500円


借金

金貨19枚 475万円

銀貨35枚 17万5000円

計     492万5000円


最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった、続きを見たい、マリーとラボアジエは付き合ってるんですか?」


と思った方は


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