20話 何の意味があるのかね?
ミカの収入
アントワーヌ領の冒険者になってからは、一回の依頼で銀貨1〜2枚程度の報酬を得ている(実は、税金が引かれている)。仮に1ヶ月に20日間働いたとすると、ひと月分の収入は、おおむね銀貨20〜40枚(10万円〜20万円)になっており、収入自体はバフェットと同じくらいである。
「今から、大本命の場所に移動して売りに行く」
ミカ君は、バフェット君の言葉に半信半疑になりながら、彼のあとをついていった。しばらくして、着いた先は、ミカ君がお世話になっている冒険者の宿だった。ミカ君は、バフェット君に言った。
「何で、冒険者の宿なんかに来たんですか?」
「もちろん、ここではコーヒーが一番売れるからだよ。だって、ここに居る人たちのほとんどは、異世界転移で連れてこられた人たちだからね。コーヒーが安価で飲めるって話になったら飛びつくんじゃない?」
「確かに……というか、私も飲みたいです!!」
バフェット君の狙い通り、コーヒーを煎れる準備をした時点で、冒険者たちがゾロゾロと集まってきた。冒険者たちは口々に、「え!?コーヒー!!?」「うわ! 懐かしい!!」と言って盛り上がる。そして、このコーヒーは、予想を遥かに上回るペースで売れ始めた。その後、町の中にあう3軒の冒険者の宿に売り込みに行きその日の販売は終わった。ミカ君は、バフェット君に尋ねる。
「で? 売り上げはどうだったんですか?」
「うん。全部合わせて75杯分売れたよ。計算すると、銅貨300枚分(銀貨6枚分)だよ。とりあえずノルマ達成だね」
次の週のある日のこと、私は自室でコーヒーをすすりながら、1枚の書類を見ていた。その様子をバフェット君は黙って見ていた。私は、その報告書を読みながらバフェット君に言った。
「ほう……初日に75杯、つぎの週には130杯か……じわじわと売り上げが伸びているではないか。それに……冒険者の宿からコーヒー豆を買い取りたいと依頼されていると……。これは、利益が増えそうだな。」
バフェット君は、ニコニコしながら言った。
「ええ。機材を貸してくださったこと感謝します。それでは、これは器材レンタル代金です。受け取ってください」
そう言って彼は、私に銅貨80枚を手渡した。私は、彼に言った。
「しかし……これだけ需要が高まってしまうと、大量生産が必要になるのではないか?」
「はい。そうですね。まとまったお金が必要になりますね」
「どうやって資金調達するのかね?」
「それについては、あてがあるんです。」
「ほう……。どうするつもりかね?」
「休日に僕が冒険者の仕事をする分には構わないですよね?」
「うむ、ミカ君の登録している宿の依頼を受けるのであれば許可しよう。宿の主人には、私から手紙を出しておく。」
「助かります」
バフェット君は、つぎの休日に冒険者の宿に向かった。
「バフェットさん!! おはようございます」
ミカ君が、バフェット君に挨拶をし、彼の恰好を見て言った。
「その装備はどうしたんですか?」
バフェット君は、金属の鎧を身にまとい、大きな木の盾を持っていた。彼は、ミカ君に言った。
「今日は、ニードルワーム討伐の依頼だからね。これなら、どれだけ針を飛ばされても平気だからね。」
「たしかに、その恰好なら、無敵でしょうね。でも、一体いくらしたんですか?」
「銀貨5枚分だから、銅貨にすると250枚くらいだね。2万5千円で鎧が買えるなんて、安いよね」
「いや! 今回の依頼の報酬は銀貨2枚ですよ!! 全然、元採れないじゃないですか!?」
バフェット君は、いつものポーズでミカ君に言った。
「僕は、そう思わない。これは、あくまでも投資だよ。今回の依頼は、あくまでも事前準備だからね。さて、そろそろ行こうか」
バフェット君は、ミカ君を宿の外に連れ出した。すると、宿の前にリヤカーが止まっており、そのリヤカーには、鉄でできたオリが積まれていた。バフェット君は、リアカーを引っ張りながら言った。
「ミカ! これを運ぶのを手伝ってくれないかな?」
「いいですけど……何をする気ですか? というか、これも買ったんですか!?」
「これは、奴隷商の人から借りてきたんだよ。1か月間借りて銀貨3枚分でいいってさ」
「だから、何を考えているんですか!? というか、何に使うんですか!?」
「それは、現地についてからのお楽しみだよ」
バフェット君は、にやりと笑みを浮かべながらそう言った。
リヤカーを引っ張ること十数分、今回の依頼は、茶畑周辺に居るニードルワームの討伐だ。トゲにさえ注意していれば、大した危険のない依頼なのだが……。バフェット君は、ミカ君に言った。
「それじゃ、始めようか。ミカ、今回はニードルワームを倒しちゃだめだよ」
ミカ君は、彼の言葉を聞いて耳を疑ったが……運んできた鉄のオリを見て彼の目的を察してしまった。
「バフェットさん……もしかしてニードルワームを……」
バフェット君は、ニコニコしながら言った。
「うん! 生け捕りにするよ!!」
「やっぱり!! というか、それ何の意味があるんですか!?」
「ただし、トゲを全部飛ばさせた個体だけを捕まえるよ。まず、この大きい盾で接近して、ニードルワームを刺激し、トゲを全部発射させる。そうしてしまえば、ただの巨大なイモムシだ。それを抱きかかえて、この牢屋に入れていく。簡単でしょ?」
「たしかに、討伐したことにはなりますけど……」
「とにかく、早く済ませてしまおう。ほら、ミカの分の盾も用意しておいたから」
「わかりました。」
こうして二人は、次々とニードルワームを捕まえては、オリの中に突っ込んでいった。以外にも、効率が良い方法だったのか、1時間足らずで依頼も済んでしまった。オリに入れられているニードルワームを見つめながらバフェット君は言った。
「さてと……今日はこんなものかな。それにしても、結構捕獲できたね。……ところで、ミカは何でそれを抱きかかえているんだい?」
ミカ君が、ニードルワームを抱きかかえながら言った。
「抱き心地がすごくよくないですか? それに、トゲさえなければ、結構かわいいし、ペットとして売れそうな気がします!」
満足げなミカ君にバフェット君は、失笑しながら言った。
「………………僕はそう思わない」
「え~。じゃぁ、何でこんなにたくさんのニードルワームをわざわざ捕まえたんですか? 何かに利用するから捕まえたんですよね? はっ! まさか食べ……」
「食べないよ!!!!!」
「じゃぁ、何に使うんですか?」
「それは、明日のお楽しみだよ。さて、今日の依頼も済んだし、こいつを持って帰ろうか」
バフェット君たちは、大量のニードルワームを持ち帰り、人目のつかない場所に隠した。もちろん民衆に気付かれぬように、わざわざオリに布をかぶせた。そして、宿に戻り依頼料を受け取ると、テーブルに座り、報酬を山分けした。バフェット君がミカ君に銀貨を1枚差し出して言った。
「今日は、お疲れ様。だいぶ、楽な依頼だったね」
ミカ君は、報酬を受け取り言った。
「今日は、お疲れさまでした。やっぱり、装備をちゃん整えれば、全然怖くなかったですね。でも、いいんですか? 報酬山分けしたら、バフェットさんすごく赤字になるんじゃ……」
「問題ないよ。次の依頼が本命だから」
「次の依頼?」
「そうだよ。さっき、報酬を受け取ったとき、ついでに依頼を受けてきたんだ」
「そうなんですね。で、報酬はいくらなんですか?」
「最低でも、金貨1枚だよ」
「金貨1まいぃぃぃ!!!!」
ミカ君は、思わず席を立ちあがった。金貨1枚とは、銀貨50枚分(つまり、日本円にするとおよそ25万円)の価値があるからだ。もちろん、彼女はそのような高額な報酬を受け取ったことなど1度もなかった。彼女は、目を丸くしながらバフェット君に質問した。
「それで、どんな依頼なんですか?」
バフェット君は、にやりと笑いながら言った。
「《キラーカメリア》の討伐だよ」
バフェット君がそう言った瞬間、ミカ君の顔が凍り付いた……。
【バフェット君の経済状況】
所持品
コーヒー豆150g 銅の鎧 木の大盾 ニードルワーム50体
(リヤカー 鉄のオリ)←レンタル
収入
銅貨 40枚 4000円
銀貨 14枚 70000円
→ コーヒーでの利益
銀貨 1枚 5000円
→ ニードルワーム討伐報酬
計 79000円
支出
銅貨 80枚 8000円
→ コーヒー器材レンタル代
銀貨 5枚 25000円
→ 装備代
銀貨 3枚 15000円
→ オリのレンタル代
銅貨 5枚 500円
→ 昼食代
計 48500円
所持金
銀貨7枚 35000円
銅貨35枚 3500円
計 38500円
借金
金貨19枚 475万円
銀貨35枚 17万5000円
計 492万5000円
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