17話 初給与は何に使うのかね?
モンスター図鑑
ニードルワーム
体長30cmほどの芋虫、直径2mmほどのトゲが合計8本生えており、動物を見つけるとミサイルのように飛ばしてくる。毒針ではあるものの、毒自体はさほど強力ではないため、針が急所にさえ当たらなければ、大事には至らない。
マリー君の過去をバフェット君に打ち明けてから数日が経過した。相変わらず、2人の仲は険悪なままだ。それに、バフェット君は、「クランを没落させる」と言っていた。一体何をするというのだろうか? 実のところ、その件に関しては、不安というより興味がわいていた。そして、今日、彼がアクションを起こすのではないかと、私は目を光らせていた。それは、なぜか……。答えは、簡単である。今日は、彼にまとまったお金が入るからだ。私は、その日の朝、彼を自室に呼び出し、銀貨の入った小袋を渡した。
「バフェット君、1か月ご苦労だった。これは、今月分の報酬だ」
「ありがとうございます。確かにいただきます」
バフェット君は、銀貨の入った小袋を受け取り私にそう言った。私は、彼に質問した。
「それで、そのお金は何に使うのかね?」
「はい、副業の資金にするつもりです。」
「副業かね?」
「ええ。当面の目標に取り組む前に、奴隷というラットレースを抜け出さないといけませんから」
「ラットレース? 聞いたことのない言葉だ。何かねそれは?」
「働いても、資産がたまらない状態のことをいいます。例えば、このお金を嗜好品に使ってしまえば、あっという間にすべてなくなってしまいます。そうではなく、この銀貨から銀貨を生み出せる仕組みを作ることが最優先です。」
「そんなことをしなくても、クランと対決するならば、私も資金援助するのだが……」
「……いいえ、それはだめです」
「どうしてかね?」
「相手は、莫大な資金をもつ資産家です。私は、まだこの世界の商売や経済を完全には理解していません。ですから、自分で資産を増やしながら、この世界の経済について知ることから始めたいのです。」
「そうか……私から見ても、君はその辺の学はきちんと積んでいると思うのだが……」
「もう一つは、クランと戦うには、あなたの協力が必要です。協力には、信頼が必要不可欠です。そのためにも、資産を形成し借金を返したいのです。その様子をぜひ見守っていてほしい。そして、信頼できると判断したのなら、その時はぜひ協力してください。」
「そうか……いいだろう。君の力をこの目で見させてもらおう。ところで、副業と言っていたが、何をするつもりなのかね?」
「ええ……まずは飲料を販売しようと思っています」
「飲料だと?」
「はい。飲料です。最初から疑問だったんです。あなたは、フランスの出身だ。しかし、コーヒーを飲んでいる姿を1度も見たことがありません。嫌いなわけでは、ないのでしょう?」
「たしかに、コーヒーは飲んでいない……というか、この世界でコーヒー豆を見たことがないのでな……まさか、あてがあるとでもいうのかね?」
「コーヒー豆は、この土地には存在しないでしょうね。気温が低いですから。でも、代用できるものは見つけました。」
バフェット君は、ポケットから木の実を取り出した。
「これは……ドングリかね?」
「はい、その通りです。これがあれば、まがい物ではありますがコーヒーを作ることができます。まずは、このドングリを集めてから試作ですね。」
「そうか……もしそれが本当なら、私も購入させてもらおう。実のところ、コーヒーが恋しいのだよ」
「とにかく、今日は休日ですからさっそく収集に行ってきます」
そう言って、バフェット君は意気揚々と部屋を出て行った。それから、まもなくして、今度はマリー君が、私の部屋に入ってきた。
「旦那様、先日ご相談した件なのですが……」
「ああ、今日休日をとりたいという件だな。構わない、思う存分羽を伸ばすといい」
「……ありがとうございます」
マリー君は、私に礼を言った後に体をくるりと向けドアノブに手をかけた。私は、彼女が部屋を出る直前に言った。
「もしかして、バフェット君を見張るつもりかね?」
ドアノブを回そうとした手が一瞬止まる。しかし、それは、一瞬のことだった。マリー君は、私の方を見ずに、
「休日ですから。私も自由に過ごすだけです」
とだけいって、部屋を出て行ったのだった………………やれやれ………………。
屋敷を飛び出したバフェット君は、軽い足取りで町にある冒険者の宿へと向かい、依頼を受注した。どうやら、ドングリの収集は冒険者に依頼するようだ。彼が依頼の手続きをしていると、一人の少女が声をかける。
「バフェットさん!! 久しぶりです!!」
「ミカじゃないか!! 久しぶりだね、元気だった」
その少女は、彼の相棒だったミカ君だった。ミカ君は、久しぶりに出会った相棒に喜んでいるようだった。ミカ君は、バフェット君に尋ねる。
「バフェットさん、今日は何しに来たんですか?」
「うん。依頼をしに来たんだよ」
「え? それなら、私その依頼受けます!! 一緒に行きましょう!!」
「そうだね、それが一番いいね。 銀貨3枚分の報酬なんだけど大丈夫?」
「銀貨3枚分ですか、それだとこちらの手元に来るのは、銀貨1枚ですね。5000円分かぁ」
「2~3時間で終わるよ」
「そうすると、時給2000円くらいですかね。いいですよ」
「ちゃんと、時給換算するようになったんだね。自分の労働価値を頭に入れるのはいいことだよ。偉い!」
「私も成長するんですよ!!」
バフェット君たちは、町から少し離れた森に移動した。森の中を散策しながら、ミカ君はバフェット君に言った。
「このあたりは、近くに茶畑がたくさんあるんですよ。収穫して紅茶にするんですって」
「なるほどね、この町には紅茶が安く出回っているもんね」
「はい、おかげさまで、ミルクティーとか飲んだりできますよ。前の世界に居たことを思い出します。ところで、この森で何をするんですか?」
「うん、ドングリをたくさん集めるたいんだ」
「ドングリですか? どうしてまたドングリなんですか?」
「そうだね……依頼を終わらせたら説明するよ」
「わかりました。それじゃあ、ここから先は私が案内しますよ。何回か別の依頼でこの森には来ているので、ドングリの木がいっぱい生えている場所を案内しますよ」
「ありがとう。助かるよ」
歩いて数分といったところだろうか、2人はドングリがたくさん落ちている地帯にたどり着いた。バフェット君がドングリを一つ拾い上げて言った。
「これは……スダジイだね。これを、たくさん拾っていこう!」
バフェット君が、作業に取り掛かろうとしたその時だった。ミカ君が、彼の肩に手を置いて言った。
「待ってください! 少し様子が変です!!」
木の上部をよく見ると、木の幹に芋虫型のモンスターが何体もへばりついている。ミカ君はそのモンスターのことを知っているようで、思わず声を漏らした。
「ニードルワーム……こんな場所にまで………………」
バフェット君は、木の上にいるニードルワームを見ながら言った。
「ニードルワームって、毒のトゲを飛ばしてくるっていうアレかい?」
「はい。最近、この森周辺で大量発生していて困ってるんです。あいつら、茶畑にもやってきて葉っぱを食い荒らしちゃうんです! 最近、ニードルワームの退治の依頼が多くて困っているんです!!」
バフェット君は、ミカ君に質問した。
「強さはどのくらいだい?」
「毒自体は、大したことありません。数日間、じんましんがでて痒くなるくらいです。ただ、毒針がかなり太いので、目とかに刺さるとかなり危ないですね」
「わかった。それじゃ、いつもの作戦で行こうか」
「え……それってもしかして……。」
「うん、僕がドングリ集めるから、近づいてきたニードルワームを片っ端から倒してよ。出来るかい?」
ミカ君は、言った。
「別に、できますけど……。いい加減、女の子にそう言う役目を押し付けるのどうかと思いますよ」
すると、バフェット君は冗談交じりに言った。
「僕はそう思わない!」
「おいコラ!!!!!!」
ミカ君は、バフェット君にツッコミを入れるのだった。
バフェット君の経済状況
収入
銀貨5枚 25000円
支出
銀貨3枚 15000円
→冒険者依頼分
残高
銀貨4枚 20000円
借金
金貨19枚 475万円
銀貨35枚 17万5000円
合計 492万5000円
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった、続きを見たい、ミカの出番増やせ」
と思った方は
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません。大変励みになります。
オレンジ色の《ブックマーク追加》を押していただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いいたします。




