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15話 どうしてこんなに美味なのかね?

ヒ素とは

ほとんどの生物にとって猛毒になる物質。無味無臭であるため、暗殺などに用いられていた。

 

 いつものように朝日が昇ってきた。私は、その日の光を浴びて、いつものように目覚める。


「旦那様、おはようございます」


マリー君が、いつものように挨拶をしてきた。いつも通りの朝、しかし今日は、大仕事を控えていた。私は、マリー君に確認する。


「マリー君、お客様を迎える準備は大丈夫かね?」


彼女は、無機質に答える。


「問題ありません」


今日は、領地内の商人や地主を集めた会合を行う日だ。私は、交渉する内容を頭で何度も反芻はんすうしながら、マリー君の煎れた紅茶をゆっくりと飲み干した。私は、紅茶を飲み干した後、彼女に指示をする。


「それではマリー君、私は書斎で最後の確認をするから、お客様を手筈てはず通り案内してくれ」


「かしこまりました」



 私が書斎に、こもってから数時間、マリー君が書斎に入ってきた。


「旦那様、みなさんお揃いです」


「わかった。それじゃ行こうか」


マリー君とともに食堂に向かうと、すでに客人たちは席についていた。今回、招待した客人は6名、皆、この領地で多額の税を納めている大商人や大地主だ。私の商談は、まず彼らに挨拶をすることから始まる。


「お待たせした。商談の前に、昼食を用意した。遠慮せずに堪能してほしい」


そう言って、私が席に着くと使用人たちが、前菜とぶどう酒を運んでくる。ここまでは、順調だ。しかし、マリー君はどういうわけかソワソワしている。一体どうしたというのか? 私は、客人たちが前菜と料理に夢中になっている隙に、小声で質問する。


「どうしたんだね、心配することなど一つもないだろうに」


すると、彼女は私にとんでもないことを耳打ちした。


「実は……」


それは、数時間前のことだった。


「どういうこと!? 食材が届かない!!?」


マリー君は、焦った様子でコックに言った。コックも同様に慌てながら答える。


「はい、食材を運んだ馬車が冒険者に襲われたみたいです!!」


マリー君は、声を荒げながら言った。


「クソッ!! これだから冒険者は!!! とにかく、今ある食材で料理をするしかないですね」


「分かりました! とにかくやってみます!!」


そういう経緯で、料理のメニューもマリー君は把握できていない。ちゃんと料理が出来るかも怪しいようだった。私は、彼女に質問する。


「それで……どのくらい食材が足りないのかね?」


「魚介類は、全滅です。それから、料理に使うはずのオリーブオイルも届いていません。肉も鶏肉しかありません。」


「なんだと!? 大丈夫なのかね!?」


「申し訳ありません!」


不安になっている私たちに対して、商人たちは、満足そうに前菜を食べている。そんなにうまいのか? 私は目の前に置かれているサラダをマリー君と一緒に眺めた。その時気づいたのだ。見たこともないドレッシングが使われている。黄色くて、粘性のあるこのドレッシングは一体……。私は、そのサラダを一口食べてみた……。


……いけるぞ。コレ。


マリー君も、この得体のしれないドレッシングに首をかしげている。ともかく、商人たちにウケているのだから、結果オーライといったところだろうか。しかし、この後の料理が心配でならない。と思っていたのだが……


今度は、鳥を油で揚げたものに、ソースがかかっている料理が出てきた。



得体のしれないのが来たのだが!!!!??



客人たちもドン引きしている。しかし、ここで私が食べなければ……。私は、覚悟を決め、その料理を口にした…………


……………うまい。


……………少し、味がしつこいがうまい!! そして、酒がすすむ!!


脂っこい、鳥の揚げ物に甘辛いソースがかかり、そこに先ほどの黄色いドレッシング、この3つが絶妙にバランスを取っている。かつて、フィッシュアンドチップスと呼ばれる料理を口にしたことがあるが、それに似ている……そしてそれよりも遥かにうまい。私は、運んできたコックに思わず質問してしまった。


「この料理は、なんていうのかね? なぜ、今までの食事で作ってくれなかったのかね?」


「えっと……それは………………」


コックのこの反応に、何かを察知したのか、マリー君は厨房に走って行った。私は、彼女のことが気がかりになり、


「すまない、すこし席を外させてほしい。ゆっくりと料理を楽しんでくれたまえ」


と客人に言い、厨房へと向かった。私が厨房の入り口の陰から中を覗き込むと、やはりバフェット君が厨房で何かをしているようだった。マリー君がバフェット君に言った。


「あなたは、何をしているんですか! 今、お客様に出している料理は、あなたが指示したものですよね!?」


「そうだね。チキン南蛮っていうんだけどどうだった?ああそれと、あの黄色いドレッシングがマヨネーズね」


「そんなことは聞いてないんですよ!! あんな得体のしれない料理を出して!! お客様の機嫌を損ねたらどうするのですか!!」


マリー君は、意地になっているようだった。私は、2人の間に入りマリー君に言った。


「まぁまぁ、落ち着きたまえ。現に客人は、満足しているのだから」


「…………………………。」


マリー君は黙ってしまった。私は、マリー君に言った。


「マリー君、客人を待たせるわけにはいかない。早く戻ろう」


「……………はい。承知しました」


マリー君は、私にそう返事をした後に、バフェット君の方を見て言った。


「私は、あなたを信用していませんから!!」


彼女は、捨て台詞を残して、厨房を後にしたのだった。



 私とマリー君が食堂に戻ると、客人たちは昼食に満足しており、ワインを飲みながら談笑していた。その様子を見て、安心した私は、ゆっくりと席に着いた。すると、一人の商人が1本のワインを差し出しながら言った。


「領主様、いかがでしょう? うちの農園で採れたブドウで造ったワインなのですが」


私は、ワイングラスを差し出し、「ありがたくいただくとしよう」と言った。商人が、ワイングラスにゆっくりとワインを注ごうとした。そのときだった。突然、バフェット君が厨房に入ってきたのだ。


「バフェット!? 一体何を?」


彼は、マリー君の静止を振り切り、私のワイングラスを取り上げて、銀で出来たコップに取り換えた。彼は、私に言った。


「ご主人様、申し訳ありません! お客人からのワインです。特別な器をご用意させていただきました。」


「ちょっと! バフェット!! 何をやっているの!? それは、ワイングラスではないわよ!!」


マリー君は、バフェットからワイングラスを取り上げようとした。しかし、普段は反抗しないバフェット君も、この時はかたくなに、ワイングラスを死守している。そして、私に目線を送っている。私は、マリー君に言った。


「マリー君、いいんだ。今日は、客人を招いている特別な日、銀の器でワインを飲むことにするよ」


「旦那様!?」


「待たせてすまなかった。ワインをいただこうか」


私が、銀の器を差し出すと、商人はワインをゆっくりと注いだ。……確かに素晴らしい香りのするワインだ。私は、器を持ち上げ水面を揺らしながら香りを楽しむと同時に、中を覗き込んだ。そして、バフェット君と目線をあわせる。私は、商人の持っているワインのビンを取り上げ、ワイングラスにそのワインを注いで、その商人に渡した。


「せっかくだ、乾杯しようじゃないか……」


商人は、ワイングラスを受け取り乾杯した……やはり、彼は一向にワインを飲もうとしない。私は、彼に言った。


「遠慮することはない。あなたは、客人だ。あなたが口を付けてから私も飲むとしよう。」


「…………………………………………。」


「……どうしたのかね? まさか、※下戸げこというわけではないだろう? 飲みたまえ」


※お酒が飲めない体質のこと


「…………………………………………。」


商人は、無言のまま一向に飲もうとしない。私は、マリー君に言った。


「マリー君! 彼を捕らえたまえ!!」


マリー君もすでに臨戦態勢だったようで、彼を捕らえるのに苦労はしなかった。彼は、しばらく抵抗したものの、所詮は一般人。マリー君に背後から剣を突き付けられると両手を上げ、投降した。商人は、私に言った。


「なぜ、ワインに毒が入っていると気づいた!?」


「簡単だよ……銀の器が変色していたのだよ。おおかた、ヒ素か何かなのだろう?」


「そんな……」


「とにかく、話は牢屋の中で後日聞くとしよう」



 その商人は、そのまま牢獄へと移送した。その後は、商談を進めようとしたが、昼食での事件が原因で、進まなかった。とはいえ、領地内の裏切り者をあぶりだせたのだ、大収穫だろう。それにしても、腑に落ちないことがある。私は、後日バフェット君を自室に呼び出し質問した。


「バフェット君、なぜ彼が毒を盛る可能性があると判断したのかね?」


バフェット君は言った。


「ファジーさんのことですか? あの人は覚えていないと思うんですが、前にクラン領で冒険者をしていたころに、よく果実の収穫を依頼していた人なんですよ。クラン領に農地があるのに、会合にいるのは変だと思ったんですよ。」


「何!? 奴は、クラン領に農地を所有していたのか!? 知らないぞそんなこと!!」


「やっぱりそうでしたか。こっそりやっていたんでしょうね。まぁ、僕の顔と名前を憶えていないというのもだいぶ間抜けな話ですが……」


「全くだ、ともかく君がクラン領で冒険者をしていて助かったよ」


その時だ、突然マリー君が扉を乱暴に開けて、バフェット君の襟をつかみかかった。彼女は、憎悪に満ちた顔で彼に言った。


「あなた、クラン領の冒険者だったの!?」


「そうだよ」


「旦那様、どうしてこんなやつを奴隷として置いておくのですか!!!!」


「マリー君!! 落ち着きたまえ!!!」


「…………………………………。」


マリー君は、何も言わずに部屋を出ていった。




バフェット君の経済状況

収入

銀貨1枚 5000円

(今回の仕事を休日出勤扱いしてくれた)


所持金

銀貨1枚 5000円


借金

金貨20枚 500万円



最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった、続きを見たい、チキン南蛮食べてぇぇぇぇぇ」


と思った方は


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