14話 どういう体力をしているのかね?
バフェットさんの奴隷としてのお給料
一日に銀貨1枚支給されます。1ヶ月にすると銀貨30枚です。銀貨1枚の価値が5000円なので、1ヶ月の給与は15万円になります。
そこから、家賃と生活費として50000円引かれ、75000円を借金の返済に補填され、残った25000円は、自由に使えるお金として支給されます。
15万円は、かなりの安い金額ですが、税金もかからず、生活費が1ヶ月で50000万円で済んでいるので、かなり条件が良いのではないでしょうか。
次の日の朝、私とバフェット君は、書類仕事をようやく終わらせて、ソファーにへたり込んでいた。それにしても、徹夜で仕事をしていた割には、バフェット君は元気にしている。私は、彼に質問した。
「ずいぶん元気じゃないか……。君の体はどうなっているのかね!?」
バフェット君は答える。
「昔、よく徹夜仕事をしていたんです。仕事に余裕のない時期が自分にもありまして。そういう状況を、僕らの時代では、《デスマーチ》って呼んでいましたよ」
それはそれは、ずいぶんと物騒な事である。それにしても、決算書類やら税の申告書類などもバフェット君は、そつなくこなしてくれた。この青年は、一体何者なのだろうか? そんな事を考えながら、私は窓から登る朝日を眺めていた。
バフェット君が、部屋から出て行こうとした時だろうか、突然扉が開きマリー君がティーセットを持って入ってきた。
「旦那様、おはようございます……って、バフェット! 何をしているのですか!?」
バフェット君は、マリー君と対峙する事が面倒であると察したのか、いつのまにやらソファーで狸寝入りをしていた。私は、この場を誤魔化すために彼女に言った。
「いや……ちょっと仕事が終わらなかったのでな。仕事しながら話し相手になってもらっていたのだよ」
マリー君は、私の言い訳を聞いてジトっとした目で私のことを見ながら言った。
「そもそも、徹夜で仕事するなら、おっしゃっていただければ、手伝えましたよ」
私は心の中で、(いや、それを頼んだら小言を言うだろ!!)と叫んでみたが……変に反論せずに黙っておくことにした。だって面倒くさいもの! マリー君は、それ以上は何も言わずに紅茶を煎れ、部屋から出て行った。
その直後、バフェット君が起き上がり私に言った。
「あなたも、いろいろと大変ですね」
「……まったくだ。さて、私は一度寝るとしよう。バフェット君、徹夜で手伝わせてしまってすまなかったね」
「いいえ、久しぶりの書類仕事、懐かしかったですよ。では、失礼します」
バフェット君は、そう言い残して部屋を出て行った。その様子は、とても徹夜で作業をしていたことを全く感じさせなかった。
私が仮眠から目覚めたのは、昼食の時間になった頃だった。扉をノックする音に起こされたのだ。
「旦那様、昼食の準備ができております。いかがされますか?」
部屋の外からは、マリー君の声がする。私は、働かない頭を使いながら返事をした。
「すぐにそちらに行く。待っていてくれたまえ」
私は、身だしなみを確認してから、ダイニングルームへと向かった。
私がダイニングルームの座席に座ると、マリー君はいつものように料理を運んできた。私は、昼食を口に運びながら彼女に質問した。
「マリー君。バフェット君の調子はどうだい?」
「はい、今日は庭師の仕事を手伝っています。彼は、よく働いていますよ」
彼は休んでいないのか!? 一体どんな体力をしているのだろうか!?
「……旦那様、彼は一体何者なのですか?」
突然、マリー君が私に質問してきた。
「バフェット君のことか? なぜ、そんなことを聞くのかね?」
「……申し訳ありません旦那様。今朝頂いた書類を整理しているときに、気付いてしまったのです。旦那様が徹夜で片付けた書類に見たことのない筆跡の書類がありました。あれは、バフェットがやったものなのではないのですか?」
「…………………………………………」
「文字の読み書きができる奴隷なんて、ほんの一握りです。ましてや、旦那様の書類仕事を手伝えるなんて、それこそ英才教育を受けてなければ不可能です。彼は、冒険者だったんですよね? あんな怪しい奴隷をこの屋敷に置いておくのは、危険なのではないのですか?」
マリー君は、バフェット君のことを警戒しているようだ。それもそうか、彼女は冒険者に対していい思いをしていないのだから……。私は、マリー君に言った。
「とにかく、私が選んだ奴隷だ。マリー君も安心したまえ」
「ですが…………」
「とにかく、私は部屋って仕事の続きをする。何か心配なことがあれば、遠慮することはない。私の部屋に来たらいい。」
「……はい。承知しました」
その日の夜、書類整理を一通り終わらせた私は、気分転換をするために中庭をふらつくことにした。空には、満月が浮かんでいる。私は、冷たい空気を吸い込みながら庭を歩いて回った。しばらく歩いていると、庭のベンチに座っているバフェット君の姿が目に付いた。彼もまた、月を眺めていた。私は、それとなく彼の隣に座り、彼と同じように月を見上げながら言った。
「今日は、庭の手入れをしたそうじゃないか? マリー君も人使いが荒いな。さすがの君も経験ないだろう?」
バフェット君は、月を見たまま言った。
「かじった程度には、やったことあるんです。難しい手入れは、庭師の方にお願いしましたし、僕がやった作業なんて簡単なものですよ」
「君は、本当に万能なのだな。天才というやつか……」
「いいえ、そんなものではありませんよ。生きていた時代が違うだけです」
「時代だけで、人はそんなに変わるものなのかね?」
「私の時代では、多様な種類の情報が、活字・画像・動画……様々な様式で見ることができるのです。一子相伝と呼ばれる技術も、比較的簡単に習得できるんです。私の生きていた時代とは、そういう時代です」
「そうか……本当に、君の生きていた時代は、素晴らしいな。私も、許されるなら君の時代に生まれたかった。ところで、マリー君とは、うまくやれているかね?」
「警戒心が強い、そんな印象ですね」
「……彼女は、冒険者というものをよく思っていないのだよ」
「そうなのですか?」
私が、話の続きをしようとしたその時だった。突然、木の陰からランタンを持った人影が現れた。
「旦那様、寒きなってきました、お体が冷えますよ。屋敷にお戻りください」
その人影は、マリー君だった。私は、彼女に頷き立ち上がったその時だった。彼女は、バフェット君に向かって言った。
「バフェット! あなたは、こんなところで何をしているのですか!? こんな外で、旦那様と話して、旦那様が風邪をひいたらどうするのです!?」
明らかに、彼女はバフェット君を敵視しているようだった。一方のバフェット君は、彼女に言った。
「そう言われればそうだね」
バフェット君は、立ち上がり私の方に体を向けて言った。
「お話を聞いていただきありがとうございました。ご主人様への配慮が足りませんでした。以後、気を付けます」
そう言って彼は、私に頭を下げ、この場を収めてくれた。私は、マリー君に連れられ、そのまま屋敷の中へと戻って行った。
それから1週間が経過した。相変わらず、マリー君とバフェット君は、ぎくしゃくしたままだった。陰から、彼らの様子を見守りたいところではあったが……そうも言っていられなかった。なぜなら、領内の大商人や地主たちとの大切な会合を控えていたのだ。そして、明日がいよいよその会合の日なのである。この日は、使用人たちも客人を出迎えるために必死に準備をしている。マリー君もいつも以上に気合を入れて、使用人たちに仕事を振っているようだった。そして、すべての準備が終わると、マリー君がバフェット君に言った。
「バフェット、明日は、たくさんの商人さんが来る大切な日です。あなたに仕事は、任せられませんので休日扱いにします。旦那様にもそう伝えますので、あなたは、ゆっくりしていてください」
「そう……わかったよ」
彼女は、やはりバフェット君を信用していないようだった。その日の夜、私とマリー君は、書類を見ながら最後の確認をしていた。そして、すべての書類に目を通し終わると……
「これで、最後です。お疲れさまでした」
マリー君は、そう言ってぺこりと頭を下げた。私は、彼女に質問した。
「そう言えば、バフェット君を休日にするのだったね。大事な日だ、何か仕事をさせてもよかったのではないのかね?」
「いえ、冒険者あがりの奴隷など仕事に支障がでますから」
「……だが、今までの仕事ぶりを見る限り彼は有能なのではないのかね?」
「…………………………………………」
彼女は、黙ってしまった。その表情は、暗く憎悪の入り混じったもののように見えた。これ以上話すことは野暮だと思った私は、深入りすることをやめた。
「まあいいだろう。君が言うことを信頼しよう。明日の会合は、特に大事な会合なのだ、よろしく頼むよ」
「…………承知しております。それでは失礼します」
彼女は、ゆっくりと扉を開き立ち去った。私は、背もたれに寄りかかりため息をつく。明日の会合では、商人たちへの交渉事もある。マリー君があんな状態で、乗り切れるのだろうか……。私は、不安を胸に眠りについた。
【バフェット君の経済状況】
1、所持品
なし
2、現金
銀貨1枚
3、借金
金貨20枚
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