モヤモヤと情報過多
お読み頂き有り難う御座います。
眠り難い夜を過ごすチャミラです。
あの後。
残り物のパンと作り置きのスープを三人で空気の澱む中で食べて、もそっとシュラヴィさんにお母さんのベッドを貸して……。
「ギリアム……」
「ごめん、チャミラ。ちょっと、頭が混乱してる。御免な、おばさんが死んで、お前の辛い時に……」
「いや、うん……」
ギリアムが死にそうな顔色をしてるのに、何も言えない……。
今にもフラフラで倒れそうなのに。
「悪い夢を見たら叩き起こしてくれ。付き合うから」
「い、いや。いいの。私も寝るわ。疲れた、もの」
……話がよく、解らないけど。
辛いことを聞いた、みたいなのにギリアムは優しい。
水は引いてあったけど、何にもなくて……この半年で古いベッドとか、生活用品を入れて、生活出来るようになった小屋へ戻って行っちゃった……。
一体どういうことなんだろう。
半年前に、シュラヴィさんのおうちの卵が拐われて……親戚になる卵?で。追いかけてきたギリアム。
でもそれは、35年前に孵化して、シュラヴィさんが産まれた……。
でも、ギリアムは15歳。生まれてないでしょ。計算が、合わない。
卵は?
シュラヴィさんは、拐われたって聞いたけど……同じ卵な筈が……。
お母さんの正体も気になる。
お母さんが好きなお父さん。そのひとは、王様……か、多分そのご親戚?いや、そんな馬鹿な。
私の姿が、そのひとにそっくり、だったのかな。赤褐色の狼だっけ?……いや、凄く何処にでも居そうだけど。
……そんなひとと家族になれるような身分だったの?お母さんが?……まさか、貴族の身分?いや、じゃな何でこんな小さい村に……。あり得ない。
それとも、偶に貸本屋さんが村に来る時持ってくる、大衆向け小説みたいな……庶民の女の子が、正体を隠した王子様と出会った?
いや、あり得ない。
眠れなくて、お母さんが縫ってくれて……失敗したから、他は殆ど村のおばさんが仕上げてくれた敷布を握り締めていた。
全ては、明日に。
……何が、聞けるんだろう。
お母さんと別れて、ギリアムともお別れしなきゃいけないのかな。
……何かの誤解や間違いや行き違いって、有るから。
まさか……シュラヴィさんが、ギリアムのお嫁さんになる子だったり……?
だから、親戚になる卵!?
……いや、そんな。
あり得ない……なんて、無いのかも。
シュラヴィさん、ギリアムと同じ国のひとっぽかった。
あの子、綺麗だった。
旅人っぽい格好だったけど、赤い巻き髪なんて綺麗に手入れされてて、夜目にも素敵だった。
私の……田舎のパン屋の娘みたいな粉だらけでお洒落も大してしないような、子じゃなくて。
ああ、やだ。
どうしよう。
ギリアムに、何処か行って欲しくないよ。
ギリアム……。
お母さん……。
でも、お母さんのお葬式とかで疲れてたのかな。
眠気が襲ってきて……家の前で騒ぎが起こるまで、ぐっすりと……気を失うように眠っていたみたい。
「奥方様のお孫様は何処ですか?お迎えに参りました」
誰……。……いや、もう勘弁してよ。
これ以上変な情報要らないよ!!
……そっと居間の窓から様子を伺うと……ギリアムが、小さい人と喋ってる。
……ネズミ獣人?目茶苦茶丸っこい……。
「……あれは、チンチラ獣人……。やはり金糸雀色のプリシテ、でしたのね……」
「……シュラヴィ、さん」
……うっ、何か、マトモに顔を見れない。そう決まった訳じゃないのに……。
チンチラ獣人とその金糸雀色の人と何の関係が……。
一応辺鄙な田舎の村の筈なのに、千客万来過ぎますね。