降って湧いたお姫様疑惑と田舎の常識
お読み頂き有り難う御座います。
謎の甲高い声の赤巻き髪のシュラヴィの疑惑を解きたいチャミラです。
「嘘ってどう言うことですの!?わたくし、嘘を吐けなくてジュラン様からお叱りを受けますのよ!!」
「いや誰それ……」
そんな、目を三角にして目茶苦茶怒られても……。
でも、助けて貰ったしなあ。あんまり邪険にも出来ない。
「ええと、シュラヴィさん。人違いってことは?チャミラはどう見ても……王女様ってガラじゃ無いし」
いや、そりゃそうだけど!!婉曲!!オブラートに包んでよ!!マジマジ見るな!!
「どう見ても王女様っぽいからお声を掛けたんですのよ!!」
え、私ってそんなに高貴なオーラ出てる!?ま、参ったなあ!
「いや、チャミラのお母さんなら話は分かるけど、チャミラが?そんな馬鹿な……。間違いにしか思えない……」
どうしよう。本当に庇ってくれてる筈のギリアムのコメントが気に入らなくて、パン用麺棒で殴りたい……。
「チャミラ様のお母様のお名前は?」
「さっきのオッサン達が叫んでた、プリティアですけど」
「うっ、ニアミスですわね……。お髪の色をお伺いしても?」
何がニアミス……。え?お母さんの髪色?
何でまたそんなことを……。えーと、髪色って、地毛よね?
「昔から白髪を気にして、暗い紫っぽい黒に染めてましたから……」
「よりによって紫に!?」
な、何だ?物凄く食いつくなあ。紫の何が悪かったの!?仕方無いじゃん、そんなお洒落な色は田舎に売ってないんだし!!
「え、何か駄目なんですか?黒が良かったらしいんだけど、この辺の田舎で売ってる染料は、あんまり質が良くなかったみたいで」
「……金糸雀色の髪のプリシテでは有りませんの?」
「誰ですかそれは」
プリシテ?お母さんと名前の似た人を探してるのかなあ。にしても、童話みたいな呼び方持ってる人なんだなあ。お姫様か何か?
「……まさかの、間違い?まさかの大穴、葡萄色のマリエット?
いいえ、簡単に諦めてはダメですわ、わたくしったら!
チャミラさん、お歳はお幾つで!?」
「えーと、多分14、5です。田舎って歳の数え方、アバウトなんですよね」
「……19歳ではないんですの?」
「え?いやあ、多分違いますよ。生まれ歳微妙だし、何回か同じ歳を数えたことも有りますけど気にしなかったし」
「お誕生日おめでとう会とか、なさらないの?」
「何ですかそれ。ウチの村では一年の始めに、一度歳を取ったなーって騒いでって感じです」
え、ギリアムまで何。その信じられないような顔……。て言うか、おめでとう会?そんな事やるの。凄いな都会は。
「どんだけアバウトなんだよ。初めて聞いたぞ、そんな歳の数え方。届け出とかしないのか?」
「え?何の?」
「世帯主のおばさんが亡くなったんだから、パン屋の持ち主書き換え手続きとか有るだろ。要るぞ、生年月日」
「……え、そうなの?」
そのまま引き継がれるもんじゃないの?手続き要るの!?えー、誕生日に生まれ年って何時だっけー。
うっ、何でギリアムまでにそんな胡散臭げに見られなきゃなんないのさ。私の歳なんて気にすること!?大体アバウトにそれっぽければそれで済んだのに!
「と、言うことは、本当は19歳の可能性も有るんですわね?」
「何で変なところが抜けてるんだ……。変にシビアでリアリストな癖に」
「う、ううーん」
「駄目押しでお聞きしますけど、チャミラさんのお髪とお耳と尻尾は染色されてませんわね!?」
「しないよ!!流石に未だ白髪に悩んでない!!」
な、何か旗色が悪くなってきたな……。
おかしいな。
村の常識は街の常識とは違う……所も有りますが、どうなんでしょうね。