色んな所から迎えに来られても困る
お読み頂き有り難う御座います。
馴れ馴れしい墓荒らし達に絡まれるチャミラです。
「いいや、間違いない!!私とプリティアが愛し合った日から数えて君が産まれたんだ!」
「黙れ!抵抗できないプリティアを傷物にしたお前と違って、俺が真の父親だ!計算も合う!!」
……。子供の前で計算言うな。墓場で何トチ狂ってんだ、このオッサン共。
うん、多分この変な人達……お母さんと何の関係も無いな。何となくだけど。
ツルハシとかスコップ持った周りのオロオロしてる奴らも、何なの?手下!?
イヤだなー。でも多勢に無勢っぽい!どうやって逃げよう!?
……雨だから、只でさえ少ない人通りが本当に無い!!
「あの、間に合ってますので。お母さんのお墓掘らないでください」
「怯えないでくれ我が娘よ!」
「そんな所も可愛いな、よくプリティアに似て!!」
いや、似てないっての。髪の色も目の色も違うし、敢えて言うなら声くらいしか似てない。
……駄目だ、全く聞く気ない。しかも未だ土を掘ってる。掘らないでよ。
「あの、墓荒らしは犯罪です」
聞かないし……。あー、ジリジリと大人達が迫ってくる。
どうしようかなー。取り敢えずバケツとタワシは後で回収するとして、走るかな……。
私、足は速いんだよね。……コイツら大きいから、小回りが効きそうな所に……。例えば崖の下とか逃げ込めば、ワンチャン有りかなあ。
「……き、騎士様ーー!お墓を暴いてる悪人が居ますわーーー!」
え、誰?す、凄い高音の金切り声!?み、耳が!!煩っ!
「き、騎士!?」
「馬鹿な、こんな雨の日に……!!」
「撤収致しましょう閣下がた!!日を改めて、お嬢様に相応しいお迎えを!!」
て、手下が要らない事を!!止めてよ要らない!!
あー、でも、金切り声のお陰で……変な墓荒らし達は、居なくなったみたい。
……ああ、墓石が沢山コケてる。
お母さんの、お墓……取り敢えず、掘り返されてはいるけど、棺にまでは到達してないみたい。直さなきゃ……。
「ふう、大成功ですわ!!あの小賢しいフリック・レストヴァの模倣なのが気に食わないですけど、アレンジってヤツですわ!」
え?えーと。
……誰だろう、この……葉っぱまみれで出てきた子。
カワイイ顔で赤毛の……巻き髪凄いなあ。童話のお姫様(意地悪)みたい。
……フツーの人じゃないっぽい?……何の獣人かなあ。
「……」
「貴女!其処の、赤褐色の狼の貴女!!」
「……えっと」
赤褐色?
……この赤茶色の髪と毛皮にも色んな呼び方が有るんだ……。
まあ、赤っぽい、褐色と言えば、そうなのかな。よく分からない。
「貴女、もしかしなくともアタリの王女殿下ですわね!」
「アタリの……な、何?」
王女殿下って、何……?お姫様ってこと?そもそも、そのお立場に当たり外れが有るの?庶民には分からない制度……。
いや、お姫様とか、そういう体の……『設定』にして、私を引き取りたいって人から依頼されて来たのかな……。
しかし、何その設定。私が王女?寧ろこの子の方がお姫様っぽいよ……。
「何してんのチャミラ。この人誰?」
「ギリアム……」
何でも、あの金切り声が届いたから駆けつけてくれたらしい。
あの変な墓荒らしには遭わなかったみたいだ。良かった。
ギリアムは……フツーの子だから、荒事に巻き込まれて欲しくない。怪我もして欲しくない。
私も喧嘩なんて出来ないから、逃げるしか出来ないけど。
「わたくし、シュラヴィ・キャリエルと申しますの!」
「あ、チャミラです」
「エスト……ギリアム」
咄嗟に名乗ってしまった……。
ギリアムが名前省いてる。……まあ、全部名乗られても覚えられないんだけど。
「王女殿下はチャミラ様と仰るのですわね!実はわたくし、貴女のお父様の元へお連れする為派遣されたのですわ!!誉れ高き任務ですの!」
「嘘臭い」
「嘘だよね」
最近の手口は、こんな世間知らずそーなお嬢さんまで使うのかー変な色んな手口があるな……。田舎者には分からないよ……。
最近の詐欺の手口とかの勉強に新聞取っとくべきだったなあ。お母さんはもう死んでるってのに、何でだろ。
……想い出にしたいとか?
恐るべし、お母さんのモテ。
こんな所に居たんですね。