待ちうける狼
お読み頂き有り難う御座います。
王都に到着後のお話です。
「取り敢えず何て言うか疲れただろ?汚い店だけど、風呂はリフォームしてるし行こっか。狼ちゃん」
「お、お店……?」
ギリアムのお勤め先って、お店だったんだ……。
首領って呼ばれてたジュランさんは……目茶苦茶イケメンだけど、何のお店のオーナーさんなんだろ。
こんな沢山従業員を抱えて……空飛ぶ船も持ってる?のかな。田舎者の私には分からないけど……お金持ちなんだなあ。
「ジュラン様、馬車でのお召しですの?」
「いやフツーに俺はバイク。翼竜ちゃんは狼ちゃんと乗れ。ギリアムも睨むな?乗って良いから」
バイク……あ、ギリアムが落ちてきたのとは……違う。
黒い金属に薄い青のフレームの……大きいバイク。
……どうやって動くのかな。
「……あ、浮かんだ!!凄い……」
「俺の方が運転上手えし」
「いや張り合うな盗らねえっての。先行ってるからな。兄貴が連れてきてるかも知れないし」
……変わった色の煙を上げて、ジュランさんが街の方へ凄いスピードで飛んで行っちゃった……。
……此処からでも、沢山の煙突から煙が上がってるのが見える方向へ。……凄く、巨大な都市なんだなあ……。
「あれが、空飛ぶバイク……」
「……俺の方が運転上手いからな、チャミラ」
「煩いですわよエストール!!ああ、ジュラン様!腕が治りましたら是非とも併飛行したいですわ……」
「何だヘイヒコウって。大体遅い翼竜がバイクに並んで飛べないだろ」
あ、無いんだその単語……。シュラヴィさんの国の言葉かと思った。……あのバイクに付いていくの大変そうだよね。
「失礼極まりないですわね!!」
「あの、馬が来たけど……」
カポカポ蹄の音が聞こえる。……こっちは私も知ってるような馬車だ。そんなに豪華でも無いみたい、普通の古い幌の馬車。失礼かもだけど、ホッとした。
「ああ、チャミラ様、申し訳有りませんわ!参りましょう!!」
「上がれるか?」
「ギリアム、捕まって」
寧ろ私が庇わないとね。差し出してくれた腕を組んで、ギリアムを馬車の中に押しやった……けど、お、重い。
「安全の為に、目的地までは窓を開けないでくださいませね」
「え、あ……うん」
ちょ、ちょっと残念だな……。
あの綺麗で大きい街を見たかったんだけど……。……でも、どうせ王女様疑惑とか直ぐ解けるだろうし……帰りに彷徨けば、良いかな。働かせて貰えそうなパン屋さん、チェックしたかったんだけど。
そして、街並みを見ずに、馬車に揺られて……。
私達は、ちょっと暗めの裏通りに有る……何のお店なのかな。此処。
「ええと、酒場?」
その割には……静かかも。
もう夕方だから……隣村の酒場なら賑わってる頃、なのに。
「まあ、ご慧眼!裏稼業ネットワークのシャーゴン王都本部ですわ!!」
「え、ウラ……ネット……何?」
それ、都会では酒場の別名か何かなのかな……。
裏稼業って聞こえたけど……裏、稼業!?
え、どういう事かな……。
「兎に角入ろうぜ。今日の宿だから」
「えっと、酒場付の宿泊施設?」
「似たようなモンかな」
「あ、待って、ギリアム」
……ギリアムが開けようとしたドアを代わりに開けると……綺麗な音を立てて、ドアベルが鳴った。
……?
誰か、他のお客さんが居るみたい。
「……」
あ、狼獣人かな。
照明が暗くて、毛並みは分からないけど……。
少し猫背の背中をこっちに向けて、古くて重そうなカウンターな置かれたお酒を飲んでるみたい。
……酒場なんだね、やっぱり。
チャミラは知りませんが、裏稼業ネットワークは地味に貸し切り中です。




