しめやかに行わせて欲しいだけなのに
お読み頂き有り難う御座います。
綺麗なシングルマザーに育てられた狼獣人の少女のお話で御座います。
粗筋通り母親が亡くなるシーンから始まります。
「うう、お母さん……」
この小さなポソ村で、母1人子1人で、頑張ってきたのに。
明るい笑顔を絶やさず、人気者だった母。アラフォーにも関わらず、村のオッサン共、いや子供から爺さん迄のアイドルだった母は……謎の病で看病の甲斐もなく、呆気なくその息を引き取ってしまった。
木製の棺に入った母は、村の皆が森で摘んだ素朴な花に包まれてまるで眠っているような、穏やかな顔で。
いつの間にか降りだした、煙るような小雨の中に眠っていた。
私は雨と混じった溢れる涙を拭うこともなく。
「ぐおおおおお!!」
「プリティアちゃあああんん!!」
「ぎゃああああ!!」
「うわああん!!」
横の騒音に耳を塞いでいた。
何時もは村の共同墓地。
雷撃か爆撃か、間違う程の耳をつんざく轟音が覆っている。
……それら全て男(8割オッサン)の雄叫び。
今も尚、絶え間無く、響き渡っている。
煩い!!
遺族である私を差し置いて、響き渡る他人のギャン泣き、マジ煩ええええ!!
「我が村のアイドルがあああ!!」
「天の使いが天に帰ってしまったあああ!!」
「バカ野郎!!プリティアちゃんは虹の女神の化身だぞ!!」
「お、おれは、おれは!!
全財産を擲ってプリティアちゃんの石像を建てるぞ!!」
「俺もだ!!」
「ウチも!!」
「ボクもやる!!」
「やめて!!」
おとなしいと称される私も流石に声を荒げたよ!!
何で!?
何で、一介の村民である母親の石像を建立されにゃならんの!?
罰ゲーム!?
「酷いぞチャミラ!!このシケた村に舞い降りし素晴らしき女神な母を持ちながらも、悼む人の心が無いのか!」
「悼んでるから拒否してるんだろうが!!私は遺族よ!?そんな変なもん建てたら怨むわ!!化けて出てやる!!」
オッサン共が目を剥いてるけど、こっち見んな非常識!!
大体ねえ、お葬式を手伝ってくれたのは有り難いけど、遺族より派手に泣きじゃくる奴が居るかってのよおおお!!
老も若きも、村の男が母親に骨抜きって、奥さん方やご家族に失礼極まりないわ!!
「お、おいチャミラ、顔が怖い。後、死んでからでないと化けられない」
「顔も怖くなるわああ!!」
何で母親の葬式で、こんなに神経を磨り減らさなきゃなんないのよおおお!!
マトモなの、母に惚れてないギリアムだけじゃないか!!
「まあまあチャミラちゃん、分かってるから」
「すまないねえウチのジジイが」
「ぐすっ、おばさん、御免なさい」
「いいのよお、アレは田舎に娯楽が無いもんで、病気みたいなもんだから」
「ほらアンタ、早く棺を下ろしな!!雨が強くなるだろ、ホント情けないねえ!」
おばさん達心が広すぎるよ。
寧ろウチの母より天の使い軍団!
そしてオッサン共は、天の御使いの心を持つおばさん達に土下座して謝れえええ!!
のっけから尋常じゃなくてすみません。