第6話 根拠のない事実はやめてほしい
「そちらの人達は?」
「妾と結婚してたも!お願いじゃ!」
「お前ちょっと黙れ!話がややこしくなるから!」
「あー。こいつらは家宝が入った物を見つけたとかなんかで話がしたいと」
「分かった。話を聞こう」
「いいのですか?オレからすれば大分怪しいですけど」
「構わない。彼女達に敵意はないさ」
良い人だ。
どう見ても変人集団の俺達にここまで素敵な笑顔を向けてくれるんだから。
「オレの案内はここまでだ。くれぐれも注意してくれ」
「分かってるって」
それほどまでにお嬢様が大事なんだな。
守るべき人がいるってのは色々とやる気に繋がるからいいよな。
リンカに連れられ応接室的な場所に通された。
「さっそくで申し訳ないがその見つけた箱というのを見せてはくれないか」
「ちゃんと報酬とか貰えるんでしょうね」
「ああ。もし本物なら当分は生活に困らないだけの金額を出そう」
「おっほ。んん!わたしが見つけたのはこれよ!」
キリが例の宝石を見せた。紫の宝石がついたペンダント。
「これは......兄様の物だ」
「これ、遺跡の中にいた巨大蜘蛛が持ってたわよ」
「ということはお兄さんは......」
家宝を手放す貴族はいない。それが家を象徴するものなら尚更に。
この箱をあの蜘蛛が持っていたということはそういうことなんだろう。
リンカも思い出して泣いているのか肩を微かに揺らしている。
「リンカ~誰か来ているのかい?」
間延びした声と共に金髪の男が現れた。リンカと同じ翡翠色の目ということは父親か。
それにしてはかなり若く見える。
「ああ、これ、僕が前に落としたやつじゃないか」
おったわ。家宝を手放したバカが。
「兄様?どうしてこれが遺跡のモンスターが持っているのだろうか?」
「あえっとそれはだね......」
気をつけろ兄貴。お前の妹、今ガチギレしてるぞ。
少しでもバカ言ったらその首飛ぶぞ。
「うっかり?.......てへ☆」
自分の拳で頭をこつんとやった瞬間にリンカの剣が兄貴の前髪を切り落とした。
「これはアルフレット家に代々伝わる大事な代物なんですよ?なぜ無くした時に言わないんです?」
「忘れてたんだよ。ごめんよ」
「次なにかやったら殺しますよ」
「可愛い顔が台無しだぞ!」
「愚者か肝が据わっておるのか分からんの」
「多分ただバカなだけでしょ」
キリに言われたらお終いだな。
「結果はどうあれ、目標は達成したな。とっとと帰ろうぜ」
「助かる。このお礼は冒険者ギルドを通して必ずさせて貰う」
殺気漂う屋敷から出るとそのままギルドへと帰った。
「無事帰ったか」
「ああ。兄貴が無事かはしないがな」
「ハクお腹減った!」
「勝手に頼んでればいいだろ」
そういうとキリはメニューを広げなにを頼もうか魔王と共に迷いだした。
「お嬢様の様子はどうだった」
「どうとは?」
「特になにもないならいい」
「そうかよ。案内ご苦労さん」
オニスは座りながら首を傾けお辞儀した。
席に戻れば、大量の料理が所狭しと置かれていた。
「どんだけ頼んでんだよ!多すぎだろ!」
「いいじゃない。これから大金が手に入るんだから」
「お前まさか全部食費で溶かす気じゃないだろうな」
「他に使い道ある?」
「家を買おう」
「そんなもの必要なかろう?ハクは一人部屋で快適に過ごしてんだから」
ああ。俺は快適だろうよ。魔法で防音してるんだからな!
「お前らの夜の声。めっちゃうるさいんじゃ。他の人の迷惑になる」
「おかず提供だと思えばよかろう」
「全員が全員おかずに困ってると思うな」
「そういうハクだって夜一人で楽しんでるくせに」
「な、なにを根拠に!毎晩お前らの声で悩まされてるのは俺も一緒なんだわ!」
根拠ない事実は止めて欲しい。
「明日、良い物件がないか探すから準備はしといてくれ」