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第1話 クソ雑魚勇者、ここにあり

次に目を覚ました時には鳥のさえずりが聞こえる森だった。

焦げた臭いも灼熱のような暑さはない。枝の間から零れる日が心地いい。


「そうじゃない!」


飛び起きた俺は辺りを見渡した。

姫様は!魔王は!どこに行った!

気配探知を使いながら鬱蒼とした森を飛び回る。

その時だ。「きゃあ!」という女性の悲鳴が聞こえた。


「姫様!?」


木枝をかき分け悲鳴の先に向かって見えたのは黒いマントに赤黒い角。

魔族の頂点に君臨する王の証だった。


「女子女子じゃ!」

「なになになに!?誰!?なに!?お金は持ってないからぁ!」


その魔王に絡まれる被害者は赤い髪の女の子だった。

姫様ではないものの魔王が先に見つかって一安心。これで姫様を俺が先に見つければ一件落着だ。


「なにしてんだお前は!」


剣を出し魔王を斬ろうと振るが俺の剣は虚空を斬った。


「なんじゃ!またハクか!どこまで妾の邪魔をするんじゃ!」

「誰でもいいのかお前は!」

「いいわけなかろう!可愛さと強さとかしこさ。この三つのどれかを満たさぬ限り欲情せん!妾に構ってないでどこかに行くがよい!」

「出来るか!」


よは誰でもいいんだろうが。

魔王ゆえに好き勝手やってきたんだろうが俺が死ぬまではその横暴は止めて見せる。


「妾はただ女子と一緒にイチャイチャしたいんじゃ!」

「やかましいわ。初対面でいきなりは無理だろ普通!」


「ねぇ。わたし置いてけぼりなんだけど」


被害者である赤髪の少女が不満そうに言った。


「俺はハク。こいつは魔王ルナ・エルネ。危ないから街に戻っててくれ」

「わたしを誰だと思ってるの?」

「申し訳ないが知らないな」

「かわいい女子じゃろ?」

「これだから旅人は。よく聞きなさい!わたしは神々に選ばれし勇者キリ!勇者キリよ!」


自信満々にキリは言った。


「そうかそうか。勇者なのか。ならこの悪党から守ってたも!」

「誰が悪党だ。悪を倒すために悪になるならそれは正義なんだよ!」

「ほら。なんか小難しいこと言っておるし女の体にしか興味がない最低男じゃ!」

「うわ。最低。ちんちんもげればいいのに」


なんで早速二対一になるんだよ。俺が魔王になにしたよ。


「それよりも!」

「あ、話そらした」

「姫様を探さなきゃだよな!魔王!」

「そうじゃ。この辺りでピンクドレスの絶世の美女を見なかったかや?妾の妻なのじゃ!」

「ややこしくするな。見かけた程度でもいいんだが」

「そんな人見たことないわよ。しかもなんで森にドレスでいるのよ」

「ハクがさらおうと」

「元凶はお前じゃい!本当は魔法同士の共鳴だ。転移魔法と魔法封じのな」


結構丁寧に説明したがキリは首をひねるだけだった。

うーむ。一般的な知識のはずなんだがな。


「なに言ってるのか分からないわ。とにかくわたしはそんな人見てないわ」

「そうか。なら一緒に探してはくれぬかの?」

「無関係な人を巻き込むな。魔力探知でも反応がないのか?」

「ないの。ここら一体のハクよりも広範囲に探しておるが痕跡すらない」

「悪いな。そんな範囲広げたら動物の気配と区別がつかなくなるんだわ!」


魔族の王。魔力貯蔵庫の権化とは元の性能がちがうんだよ。

となるとどうするか。魔王の索敵でも拾えないとなると違う場所に飛んだのかもしれない。

なにより急いで探さないと。


「この森から近くの街までは近いけど危険なモンスターもいるから危ないわよ?」

「そうじゃな。妾はキリと一緒に行動しよう」

「姫様は」

「情報集めじゃ」


ならその欲に満ちた目をキリのおっぱいだのお尻に注ぐのは止めろ。


「ハクは探しに行けばいいんじゃないかの?」

「そうもいかないだろ。お前が迷惑かけないように見張らないといけないしな」

「なにが迷惑じゃ。かけてはおらんじゃろうに」

「女性の前にいきなり飛び出して興奮状態で抱き着くのは十分迷惑行為だ馬鹿野郎」


ただ情報がまったくないのも事実。

非常に不安だが魔王の監視のためにもキリに同行するしかないか。


「キリ。街まで一緒にいてもいいか」

「いいわよ。ただし案内料は高いから」

「ん。まあ、助かる」


ただキリにも問題があった。


「ねぇ待って!なんでわたしが狙われるの!」

「戦えばいいだろ。剣持ってんだから」

「剣とか重すぎて振れないの!見てないで助けて!」

「勇者じゃないのかよ」


勇者に選ばれたならそれなりの才能があるはずなんだが。どうやらキリはまだ駆け出しらしい。

小さなウリ坊にも逃げる始末。


「勇者は肩書だけかー」

「うるさい!煽ってないで助けて!無理なんだって動物とかモンスターとか怖くて無理なんだって!」

「愛らしいの~。小さな動物に追いかけられて野原を駆け回る姿は記録したいレベルじゃの」

「その愛しい人が死に物狂いで走ってるんですけど!?助けてってば!ねぇ!」

「仕方がないの~。あとでおっぱい触らせての」

「おっぱいでもなんでも触らせてあげるから!」


うきうきで準備し始める魔王。

おっぱいで簡単に釣られる魔王。


「ちょっと待て。そんなに魔力溜めてなにする気だ」

「ここら一体を吹き飛ばそうかと」

「それキリも死ぬよな」

「安心せい。例え死んでも生き返らせれば実質無傷だから大丈夫じゃよ」

「だそうだ。キリ、死ぬ覚悟はしておけ」

「なに物騒な話すすめてんの!ここら一体吹き飛ばしたりわたしが死んだらおっぱいなしだから!」

「うむ。なら他を考えよう」


おっぱいで簡単に攻撃を止める魔王。

見た目幼女なんだからもう少し見た目相応の言動をしてほしいもんだ。声が幼女のオッサンと一緒にいる気分だ。


「もういい。俺がやる。魔王は下がってろ」

「おっぱいに釣られたのか。変態め」

「そんなことないしー。いいがかりは止めてほしいしー」

「早く助けて!処女でもなんでもあげるから」


ただのウリ坊で貞操とか貞操が安すぎる。


「ハク?女子の純潔を散らしたらどうなるかわかっておるか?」

「ん?どうなるんです?」

「こうじゃ」


魔王が拳を握った瞬間「ぐちゃぁ」という音と共にウリ坊が内側から爆発四散した。

外側からじゃない。内側からだ。恐ろしかった。声が出なかった。

目の前の笑顔の幼女から目が放せなかった。


「分かったかえ?」

「ああ。わかった」


もう絶対に女性には手を出さないと誓った。



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