表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?   作者: mio
3章 冒険者養成校

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/178

20

 結局そのあとイシューさんのパーティに会うこともないまま、とうとう卒業前の剣術、魔法大会の日が明日になった。養成校がある日が多いのもあるが、イシューさんが忙しいというのが大きな理由。国からの依頼でいろんなところのダンジョンをこなしにいっているらしい。


 それにしても本当に一年なんてあっという間だ。剣術も魔法も基礎から教えてくれ、しっかりと鍛えてくれた。そして魔獣に対する実践も何度もやって、それを売りに行くという流れも経験した。それを先生の監視、というかサポート下でできたのだ。


 さらにきれいな寮、おいしい料理、それらも用意されている。考えれば考えるほど、ここはあまりにも恵まれている。それでも、ここにいられるのは一年と、そう決まっている。剣術、魔法大会が卒業試験となって、ランクがもらえるらしい。


「さて、君たちは明日で卒業だな。

 まずはおめでとう。

 僕が見る限り、きっと君たちは皆Dランクとして卒業できるのではないかと思う。

 ぜひ全力を尽くしてくれ」


 キリク先生の言葉に締めくくられてすぐに解散となる、明日に備えて休めということらしい。明日。すべてが始まる。できる限り力はためてきた。情報はサーグリア商会で聞いたものだけだが0よりはだいぶましだろう。


 自分の足で皇国に戻り、そして内情を探ってから行動を移すのもありかと考えてたこともあったが、まあそこは剣術、魔法大会でうまくいかなかった場合にそうしよう、という結論に落ち着いた。その方が正当性のある行動をとれるかもしれないが、情報収集をして、地盤を固めて、では時間がかかりすぎる。それに皇宮に戻っていく理由を作りにくい。だったらいっそ迎えに来てもらって、しぶしぶ戻ったほうが楽だ。


 それとある程度まとまった金が手に入ったこともあって、服も買いなおした。魔法を使って高めていくと魔力が高まっているのか、光も強くなるよう。今までは必ず厚手の服を着ることでしのいでいたが、正直ひやっとすることもあった。だが、なんとかここまでやってきた。


 後は、明日。


 ここにくるまでずっと二人に何か話すべきかを悩んでいた。ここまで来れたのは二人のおかげだ。それに二人はこれからも三人でパーティを組もうといっている。言った方が、いいんだよな……。



 その日の夕方。俺は二人を呼び出した。詳しく話すことはできないが、それでも少しでも言っておきたかった。


「それで、話って?」


「明日はやいのに」


「うん、ごめん。

 すぐ終わるから」


 ああ、わかりやすく不審な顔をしている。まあそりゃそうか。


「俺、明日が終ったらパーティ抜ける。  

 たぶん、冒険者として活動することはない」


「……は?

 どうして?」


「あ、あたしたちに、愛想が尽きたとか!?」


「違う、そういうのではないよ。

 どうしても、俺にはやらなくてはいけないことがあるんだ。

 そのためには、ここにはいられない」


「ハールのやりたいこと?

 それは僕たちと一緒にはできない?」


「……うん。

 今はまだ話すこともできないが……」


「そっか。

 寂しくなるけど、応援するよ」


 フェリラは未だに泣きそうになっているが、リキートは思ったよりもあっさりと送り出してくれた。ありがたいのだが正直少し驚いた。もうすこし止められるか事情をきかれるかと思っていた。


「ハールが気づいているのかはわからないけれど、ハールは少し変わったよ。

 それがハールが言っていたやらなくてはいけないことがきっかけなら、僕が止められるわけがない」


 そういって、リキートは微笑んだ。変わった……? 俺が? リキートの言葉にフェリラもうなずいている。自分ではよくわからない……。

 

「ハールが、一人でどんな行動をしているのかわからないよ。

 けどさ、あたしたちはあんたに救われたんだよ。

 とっくにあんたのこと信じるって決めてる。

 だからハールが決めたことを応援するよ、寂しいけれど」


「フェリラ……」


 まっすぐに見つめてくれる二人。違うよ、きっと。俺が二人に、いや皆に救われたんだ。返しきれないほどの恩をくれたのはサーグリア商会の皆だし、ここまで導いてくれたのは二人だ。


「うん、ありがとう」


 そう言うのが俺には精一杯で。結局そのまま俺たちは解散となった。


 二人が部屋に戻るのを見送った後、俺は一人外に残っていた。もう少し外の空気を吸っていたい、そう思ったのだ。


『緊張していますか?』


(まあ、多少は)


『きっと大丈夫です。

 うまくいきますよ』 


 そんな諭すように言われなくても。でもおかげで少し元気でてきた。うん、きっと大丈夫。懐の懐中時計を取り出す。そして蓋を開けた。もう前みたいに目をそらしたいとは思わない。


 もしかしたら自分から破滅へと近づく可能性がある一歩目。二人に見守っていてとか、うまくいくように、とか、そんなことは言えない。二人が望まないことをやるんだから。あのままリキートとフェリラと居たほうがいい、そう言うかもしれない。でも決めてしまったんだ。


 本当は俺の気持ちのままにした行動が、二人の想いと重なれば楽なのに。本当に難しいな。


『もう戻りましょう?

 明日は大切な日なのでしょう?』


(うん、そうだな。

 もう戻ろう)


 もう一度懐中時計を見ると、それを大切にしまう。二人に願えない分心の中で願っておこう。どうかうまくいきますように。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ