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俺たちは三人そろって一次試験に合格。今日は二次試験に来ていた。午前に剣の実技、午後には面接。それですべての試験が終わるらしい。会場にいる人達を見る限り、一次試験でかなり落とされたか?


「これから一人ずつ呼び出す。

 そこでAランクの冒険者と戦ってもらう。

 武器は個人のものでも、こちらにある貸し出しでもいい」


「あの、武器を扱わない人は?」


「それでも最も得意なもので戦ってもらう」


「大丈夫、フェリラ?」


 隣のフェリラに小声で聞く。この話出てきてから、フェルラの顔色が悪いのは当然だろう。村にいたときは全く戦闘系のことをしていなかったフェルラは、旅の途中で弓を持ち始めた。俺が使うために用意したあれだ。だんだん獲物に当たるようになってきたがまだ練習段階。それに、弓では1対1の対戦は厳しいだろう。


「う、うん……。

 頑張るよ」


「うん、頑張れ」


 それでもフェリラは全くあきらめた目をしていない。確かに大丈夫そうだ。それじゃあ、まずは自分の試験に集中しよう。



 公平性を保つため、他の人の試験は見ることができない。そのため、もちろん相手がどういう人なのか知らない。まあ、Aランク冒険者と言っていたし、あそこであったやつらよりはましだろう。


「おや、君が次の受験者かな?」


「あ、はい。

 ハールと申します。

 よろしくお願いいたします」


「うん、よろしくね。

 僕はキリク、Aランクの冒険者だ。

 えっと、君は剣で試験を行う、でいいのかな?」


「はい」


「武器はどうする?

 借りることもできるけれど」


「自分のを使います」


「わかった」


 あまりAランクといった感じはしない緩い雰囲気だったキリクさん。どちらかというと、親しみやすいお兄さんという感じ。それが、じゃあ始めようか、そういった瞬間にがらりと変わる。刃をむきだしにしたかのような、鋭い空気。ああ、本気だ。


 互いに無言で剣を構える。明らかに俺に似合わない剣を持っているにも関わらず、特に動揺した様子はない。さすが、といったところか?


『ハール、手伝いますか?』


(いや、いい)


 ここはちゃんと俺の力でやらないと。どちらから仕掛ける? じりじりとした時間たつ。対峙したときから、プレッシャーが半端ない。こめかみから冷や汗が伝うのすら感じる。


 どっ! とものすごい音がしたかと思ったら、目の前からキリクさんが消える。ああ、でも音は、消えていない。


 今! 剣を自分の前に構えた瞬間に火花が散る。まずい! うけ、流さないと! 横に! いやいやいや! なんでこんな音するの!? それに重すぎ。これ、魔獣の方が弱くないか!? いや、相手Aランクだったわ。


「考え事?

 これでまだ余裕か」


「いや、ちょっ!」


―――――――――――――――――――――


「お疲れ様。 

 これで試験は終了だよ」


「ありがとう、ございました……」


 だから! 余裕じゃないっていったじゃんか……。圧倒的すぎるよ。確かに今回はシャリラントも魔法も使わなかった。だけどさ……。


 初めは、どうして低ランクの俺たちの相手にAランクが? と思ったが、戦ってみて、そしてこの控室にきてわかった。大きなけがをしている人は一人もいない。圧倒的すぎる力の差だからこそ、手加減ができるのだ。こちらがけがをしないように、と。それでも決して手は抜いていない。真剣な手加減が、あそこまで厄介なものだったとは……。


 リキートもおそらくそれを理解している。結構平気そうな顔をしている。だけど、フェリラは、なんというかほかの大勢の受験者と同じ顔をしているな。一部は俺たちみたいに平気な顔をしているが。


「む、無理……。

 あたし落ちたよ……」


「そんな落ち込むことないって。

 相手はAランク冒険者、かなりの実力者だよ?」


「で、でも!」


 さっきからこんな会話を繰り返してばかりだ。だいたい、剣と弓って組み合わせおかしいから。フェリラほどの腕前ならなおのこと無理、とは割り切れないんだろうけれど。


「それでは、次に面接を行っていく」


 やっとこの妙に重苦しい空気から解放される……。面接も一人ずつらしく、先ほどと同じ順番で呼ばれていく。順番がわかると、少しは心構えができるからありがたい。



「では、こちらの扉から入ってください」


 ここまで案内してくれた人にお礼を言い、面接が行われる扉の前でノックをして相手の返事を待つ。すぐに、どうぞ、と返ってきたので扉を開けると、なぜか中にいた人達は驚いた顔をしていた。


 それにしても、面接員はキリクさんを含めた5人対1人。どんな圧迫面接だよ。先ほどのようなプレッシャーは感じないが、面接があまり得意ではないし、正直つらい。さっさと終わらせたい。


「やあ、さっきぶりだね。

 ハール君、だっけ?」


「はい。

 ハールと申します」


「さっきはとても面白かったよ。

 まさかGランクの子に受け流されるとは思ってなかった」


「おい、キリク」


「あ、ごめんね。

 えーっと、それじゃあ初めていこう」


 思ったよりも、和やかな空気だった。ここで落とす意図はあまりない、のかもしれない。まあ、高校受験とかの緊張感を想像していた俺は、入った途端に気軽な感じて話しかけられたから、さすがにおどろいたが。


 結局内容も簡単な確認、そして質問くらいのものでこんな感じでいいのか、と思ったほどだ。三人とも無事に面接まで終わり、結果はまた後日、ということで今日は戻ることになった。


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