表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/178

4


 あの日から2週間。毎日頑張った。来る日も来る日も基本俺、たまにリキートが薬草を摘み、たまに洗濯しに行き、何より大変だったのはフェリラの勉強だった。筆記もある、とのことであの日から勉強を開始したのだ。


 ただ、フェリラはそもそも一部しか文字が書けない! そこから始まった。2週間で間に合うわけないだろ、というのが正直な感想だった。ただ、そこは宿につられた俺たちの強さを発揮。フェリラの回復魔法を無駄遣いしながら、徹夜しつつ詰め込んだ。だ、大丈夫、だよな……?


「あああ、日の光がまぶしい……」


「久しぶりに外出たもんな」


「うん……」


「でもなんとか詰め込み終わった、はずだ!

 本当によく頑張った、僕たち」


 二人ともだいぶ消耗しているな。俺はまあ、体力はあるのだろう。そこまで疲れ切ってはいない。こんな状態で果たして大丈夫なのか、こいつら?



「おお、人がいっぱいいる……」


「そりゃそうだよ。

 絶好のチャンスなんだもん」


 絶好のチャンス、か。正直俺はリキートについてきただけだから、あまりピンとこない。でも、フェルラもここまで真剣な顔をしているのだ。きっと同じ気持ちなのだろう。


「行こう」



 三人でパーティとして受付を済ませる。Gランクのうちにパーティを組むのは珍しいが、できないことはない。だから、俺たちはすでにその申請をしていた。リーダーはもちろんリキート。毎日依頼をこなさないと追い出される宿だが、毎日俺かリキートが依頼を3人分達成することで、追い出されずに済んだのだ。そして、冒険者養成校はギルドカードで試験の受付をしているため、自然に三人一緒に受付をすることになった。


 さて、最初の試験は筆記。これはわかるものもあれば、まったくもってわからないものもある。ひとまずわかるもの、つまり最低限の知識問題は確実にとる。そして、一番大切なのはこれだろう。


フェリラの勉強を見ているとき、思ったことがある。ここを受けるのは、恐らくフェリラのように文字が書けない人も多いのでは? と。そのうえで筆記試験を取り入れているのだ。そこまでは問題の正解数は重視されていないのではないか。


そう考えてからはひたすら文字をかける、理解できる、最低限の知識を持っている、それを示せるようにした。幸いにも俺もリキートももとの出があれだから、文字は一通りかけるし、最低限の知識もある。この大陸、お金も同じなら、文字も一緒。おかげでフェリラに教えることができた。


 そして、そのうえでおそらく最も重要な問題。『あなたにとって冒険者とは?』。こういう明確な答えがない問い、あると思ったんだよね。ここをしっかりと回答する。長々とした回答は必要ない。一つ、大切なことを書けばいい。だぶん筆記はそれでどうにかなるだろう。


「ハールって頭いいよね。

 本当に最後に答えのない問題出た」


「ハールのおかげで焦らずに解けた!

 ありがとう」


「うん、二人ともどうにかなったみたいでよかった。

 次は魔力測定か」


 さて、どういう風に魔力測定をするのか。これは数人ずつ呼ばれて測定を行っていくらしい。ここに来る人、魔力持っていない人ばかりだから、そんなに時間かからないとかなんとか……。でもそんなことないな、うん。一人一人結構かかっている。


「ね、二人は最後の質問なんて書いたの?」


「うーん?

 僕は……端的に言うなら力」


 力……。一人で生きていく力を求めて、家を出てこうして冒険者養成校を受けているのだ。確かにぴったり。


「フェリラは?」


「あたしはね、自由。

 ……ハールは?」


「俺……?」


 どうして、あんなことを書いてしまったんだろう。少し、いやかなり後悔している。でも、ふとその言葉が浮かび上がってしまった。そして書いた瞬間に時間が来てしまったんだよな……。


「あたしはさ、あの村であんたたちに拾ってもらった。

 そこからばたばたと毎日過ごして、あまり話す時間なかったろ?

 だから、あまり二人のこと知らないなって思ったんだ」


 だから、教えてくれたら嬉しい。そういうフェリラは真摯に俺に向き合っていて。何となく、この言葉から逃げたくない、ってそう思った。


「憧れ……」


「え?」


「では次の三人、入ってきて」


「ほら、行こう」


 よし、ちょうどいいタイミングで呼びだしが来た。さすがにこれ以上聞かれたくなかったから、危なかった……。


「では一人ずつこちらに座って」


 指示に従い席に座る。それぞれの前に担当者と思われる人がいた。そして、俺と担当者の間に置かれているもの。これ、もしかしてずっと前にちらりと聞いた、魔力を測るやつ?


「これを使って、ここに血を垂らして」


 それにしてもなんだ? この盤は。まあやってみればわかるだろう。ぴっと切って言われた通り盤の中央に血を垂らす。すると、徐々に盤が光出した。その光は徐々に全体に広がっていく。おお、きれい。少しだけギルドカードのことを思い出した。どうしてこうも血を垂らさせたがるのか。


 隣を見ると、盤の光り方はそれぞれ違っていた。俺は盤の大半が割と強く、そして一部が弱く光っているが、隣のフェリラは六分の一の部分が光っている。さらに隣のリキートはもっと多くの場所が割と強く光っている。


「こ、これは……」


 あれ、顔を見合わせて皆さん、どうしました?


「あの?

 どうだったんですか?」


「あ、ああ……。

 君たちはパーティを組んでいるんだったか?」


「はい」


 いや、そうか、とか言っていないでちゃんと説明してくれないか? 二人とも不審な目で担当者見ている。やっぱりそういう気持ちになるよな。


「えーっと、ハール君、だったか?

 君は、その、全属性持ち、だ。

 ただ、光属性と闇属性はあまり強くない。

 ほとんど使えないだろう」


「……え?」


 ぜんぞくせい? だけど特殊属性があまり使えないと。ああ、はい。了解です。なんか中途半端だな。


「ほかの試験は明後日以降。

 本日の試験を通っていたら、また呼び出す。

 まあ、君たちは大丈夫だと思っていい」


「ありがとうございました」


 結局、フェリラは光属性のみ、リキートは基本属性4つという結果になったみたいだ。ま、俺の属性以外はやっぱりか、という感じか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ