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 さて、フェリラも大丈夫そうだし、本題に入らせてもらおうか。って、リキートが身を乗り出した?


「ねえ、どうしてあんなに村を離れたがっていたの?」


 え、それ直接聞いてしまう? 結構リキートでぐいぐい行くんだね。俺は何となく触れられなかったのだが……。しかもそんな前のめり?


「え、あ、ああ。

 そうだね、あんたたちにはもう言ったしいいか。

 あのね、あたしが治癒魔法、光魔法ともいうみたいだけど、とにかくそれが使えるの知っているでしょう?

 魔法とかよくわからないけど、なぜか小さい頃から使えたんだ」


 光魔法。たしか特殊属性だよな。深くは教えてくれなかったやつだ。というか、この国には報告義務みたいのはないのか? それとも村人だから特にないとか。義務があるのは貴族って言っていたような……?


「治癒、っていうか光魔法って珍しいよね。

 よく、村の人は良く出ていくことを許したよね」


「許してもらってなんてないよ。

 たぶん言ったら許されない。

 でも、もう嫌なんだ。

 あそこの人は、あたしのことけがを治す便利な道具だって思ってる。

 あたしは道具じゃなくて、人間なのに。

 でも、チェシャがいたからあそこにいたんだ」


 チェシャって弟のことだよな。おそらく、出会ったときに抱えていた人。弟がいないなら、村にいたくないとたしかに言っていた。


「そんなに大切だったんだ」


「うん。

 弟は、チェシャはあたしの唯一の理解者で、ちゃんと人間として扱ってくれた。

 それに大切な家族だった。

 チェシャがそばにいてくれたから、あたしはあそこにいたんだ」


「ふーん……。

 仲がいい家族でいいね」


「そうかな。

 両親はあんまり好きじゃなかったけど。

 ねえ、リキートとハールの家族はどうなんだ?」


 あ、流れ弾。正直に話せる家族の話、ないんだけど。孤児院の子たちは、どうしても家族とは少し違う存在にしか思えなかったし。リキートもうつむいている。こういう話は切り上げるに限る。


「うん、この話はやめよう。

 俺から話しておきたいことがあるんだが、いいか?」


「え、家族の……、あ、うん。

 どうぞ」


 よし、ちゃんと空気をよんでくれたらしい。俺に発言を譲ってくれた。さて、まずは剣をだして、と。


「話したい事、っていうのはダンジョンでの拾い物のことなんだ。

 まあ、これ以外は基本的には俺たちの共有財産、みたいになるかと思うから話しておく」


「ハール、その剣は?」


「これは……、神剣、らしい。

 この剣に宿っている? 憑いている? シャリラントがそういっていた」


 あ、フェリラが思いっきり訝しげにこっち見ている。まあ、急にそんなこと言われても信じられないよな。リキートは俯いてしまっているし。わっ、急に顔上げないで!


「しんけん、って神の剣……!?」


 お、おお。リキートは聞き覚えがあるみたいだ。逆にフェリラはきょとんとしている。シャリラント、と呼びとすぐに姿を現してくれた。


「お呼びですか?」


「うん。

 自己紹介を」


「わかりました。

 私はミベラの神剣、シャリラント。

 よろしくお願いいたします」


「え!? 

 あ、はい、よろしくお願いします。

 フェリラです」


「リキート、です……。

 え、本当にどういうこと?」


「こういうこと、です。

 とにかく!

 これで俺もちゃんと武器を手に入れられたんだ」


 俺にもいまだによくわかっていないんだから、細かくは聞かないでくれ、本当に。とにかく強引にでも納得してもらう。


「え、シャリラント、様は女性? 男性?

 う、美しい……」


「私たちに性別、といった概念はありません。

 一番取りやすい形はそれぞれ女体、男体ありますが」


「え、ええ……?」


 なんだか自分で混乱を深めている人もいる。うん、話を次に進めよう。


「あと、他にもいろいろ拾ったんだ。

 鉱石と、魔石と、あとこのバッグ」


「ちょっと、ちょっとまって、ハール。

 ごめん、ついていけない……」


「あら、すごいわね!

 これを売れば多少はお金になるんじゃない?」


 三者三様ってこういうことだな。二人しかいないけど。って、そうじゃなくて、もしかしてフェリラは俺たちじゃ売れないって知らなかった? 途中のやつらは恐らく伝手があるだろうし、売れるのだろうけれど。


「あのね、フェリラ。 

 俺たちにはこういうの売れないらしい」


「どうして?」


「僕も伝え聞いた話なんだけど、ダンジョンで手に入れたものを売るには伝手がいるらしい。

 じゃないと買い取ってもらえなかったり、一番多いのは不当な値で買いたたかれたりするんだ」


「そ、そうだったの……。 

 じゃあどうしてハールはこれらを持ってきたの?」


「今は売れなくても、いつかは売れるかもしれない。

 なら持っていて損はないだろう?」


 今後冒険者養成校に入って、Dランク以上の冒険者を目指すのだ。その時になれば売れるはず。だから持ってきたのだ。それで二人も一応納得してくれたみたいだ。


「はー、もう、本当に……。

 ハールはすごいやつだよ」


「え、全然だと思う。

 俺だけだと知っていることが少なすぎるし」

 

「いや、そういう意味ではなくて。

 なんだか、ハールと一緒にいるとなんでもうまくいく気がする。

 うん、もう今日は休もう。 

 ハールの顔色よくないし、僕もいろいろ整理したい」


 そういうと、魔石とかしんけ、神剣とか……、となんだかつぶやいている。これは触れない方がいいやつですね。体調がまだあまりよくないのも確かだ。今日はもう休ませてもらおう。



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― 新着の感想 ―
[一言] ここで情報をばらしたり共有財産にする意味が解らん。
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