表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/178

8


「ああ、次に進むにはこっちは迂回した方がいいだろう」


「そうだな。

 大丈夫かと思うが、ダンジョンがあるし」


「あー、じゃあここは少し早めに切り上げるか」


--------------------

「ということだ!」


「「はい」」


 ダンジョン? 今ダンジョンっていった?


「お、なんだハール。

 ダンジョンに興味あるのか?」


「ハールって、なんだかんだそういう、男の子があこがれるものすきよねぇ」


「う、べ、別に……」


 そんなに興味があるわけじゃない。ただ、ちょーっとだけ気になっただけだし。


「いいじゃないか!

 俺だって興味あるよ」


「はは、そうか。

 だが、ダンジョンはさけていくからな」


「……どうして? 

 だって、ダンジョンにはそれに挑戦する人がいるでしょう?

 そういう人が必要なもの……、例えば冷たい水が入った水筒とか、防具とか、そういうの売れるんじゃないのかな」


 ここのお店、武器は売っていない。でも、なぜか防具は売っているのだ。とはいえ数は多くないが。そんな僕の言葉にピタリと動きが止まる。


「確かに……。

 新たな商売のチャンスか?

 いや、しかし……」


「シラジェ。

 あそこのダンジョンは特に危険だって言うでしょう。

 子供たちもいるのよ」


「うっ、わかっているよ。

 ハール、それは魅力的だが、だがやっぱり安全第一でないと」


 う、そうだよね……。男の人は多少は戦えるとはいえ、みんな商売人。もともと戦闘はあまり得意ではないのだ。それなのにわざわざ危険なところに身を置く必要はない。余計なこと言っちゃった。


「ごめんなさい……」


「謝る必要はないさ。

 今後気を付けてくれればいいだけ」


「うん……」


 あう、落ち込んでいるからって頭撫でないで……。そのとき、パサリとフードがとれる。今まで、フードに関しては本当に細心の注意を払ってきた。この瞳の色がばれても、髪の色はせめて、って。でも……。


「あっ……!」


 ばっ。慌てて外れたフードをかぶる。み、見られた、よね? ど、どうしよう。本当に。


「ハール?」


 体の震えが止まらない。もしも、これのせいでみんなに何かがあったら。そんなのだめだ。ここに来るまで、外に少し出るようになって知ったことだが、たまに、皇国の皇子の話が出てきていた。皇子が一人、行方不明らしい、と。皇国なんてかかわるもんじゃねぇ。呪われた国になんて、って。その時も僕は血の気が引いた。もしかしたら、って。


「ハール、どうした?」


「髪……」


「髪?」


「見た、よね?」


「え……?」


「だ、大丈夫。

 見えていないわ!」


「本当……?」


 うん、とうなずいてくれるのはナミカさん。本当に、見えていない? 大丈夫? あれから切っていない髪は、どんどん伸びている。今はひもで一つに縛っていた。どこかで切りたいが、髪を見せるのも怖いのだ。


 ナミカさんの言葉に、一度息を吐き出す。それで少し平静を取り戻したが、まだ少しだめだ。


「ごめん、休んでいる」

 

 それだけを言うと、返事も待たずに奥に行く。どうして、どうして僕はこんなにも恐れないといけないんだろう。腰につけていた剣を抱きしめる。ひんやりと冷たいそれが、僕の唯一のよりどころで。それが、なぜか今とても寂しく感じた。


--------------------

「ねえ、母さん。

 ハールの髪……」


 「うん。

  根元の方は白、いえ銀かしら。

  でも、先の方は黒……」


 「黒って、珍しいな。

  前に見たのはどこでだったか?」


 「それにハールはもともと瞳の色も珍しいから。

  それが原因で何かあったのかもしれないわね」


 「とっさに、見ていないっていったけれど、それでよかったのかな……。

  受け入れてあげた、方が」


 「そうね、ゆっくりと向き合っていきましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ