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大賢者が世界に残した三人の天才と転生譚(仮)  作者: サーモンとほうれん草
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序章-0

初執筆です。よしなに。


彼は孤児だった。

物心がついた頃には彼は既にそのことを理解していた。


当時隣国との戦争中だったエイラル国の片田舎『アーテマ』の白魔導教会で彼は育った。


アーテマは人口約6000人の小さな村。戦火は届かずとも、教会は貧しく神父と彼の二人で何とか切り盛りしていたようだ。



--典刻歴1046年--


膠着していた隣国マギルガンドとの戦争が激化。

戦火は彼の村アーテマにも及んだ。


死者300人超、負傷者多数

アーテマに駐在する国家騎士と村の自警団は壊滅。

無数の負傷者が運び込まれていた白魔道教会はほどなくマギルガンドの兵によって占拠された。

教会内で負傷者の治療を行っていた神父や、逃げ込んでいた若い村人や母子は一人残らず殺された。


その中、彼はただ一人生き残った。

その時彼を助けたのは、青魔法『ハイド』

神父の書斎の魔導書を盗み見て覚えたのだとか。

彼は馬蔵の藁に潜り、わずかなマナの香りも立てず息を殺した。

マナの抑制が完璧だったわけではないだろうが、幸い教会を襲った兵の中にマナに精通する者はいなかった。



--典刻歴1048年--


アーテマの悲劇から二年後、14歳になった彼はエイラル国の国境を越え、中立国家クレーデルへ入った。

最初は白魔道教会を頼ったようだが、その後すぐ自由国家騎士団に入団。魔道から離れ剣を帯びた。




--典刻歴1052年--


彼は中立国家クレーデルにはいなかった。


マギルガンドとエイラル国の国境からほぼエイラル国全土に広がった戦火は、最北端に広がるエイラル山脈の麓に座す首都エイラルシアに迫った。

マギルガンド兵が数万と押し寄せる中央大門。

門が陥落すれば後がないエイラルとマギルガンド精鋭兵がぶつかる最も激しい戦場に、彼はいた。

自由国家騎士から母国エイラルの国家騎士に転身した彼は一般兵として参加した戦場だったが、後に『エイラル最後の英雄』と呼ばれる。


壊滅寸前のエイラル軍は指揮系統も麻痺し、戦意を喪失する兵もみられた。

そんな中、彼は騎士団の練兵場では見せていなかった魔法と鍛え上げられた剣術でマギルガンド精鋭兵を圧倒した。

エイラルシア中央大門を守るエイラル軍は盛り返すとはいかずとも彼の活躍により士気をギリギリで保ち戦線を維持していたが、

首都エイラルシアでの開戦七日目。エイラル国王の降伏宣言により14年続いた戦争は終わりを迎えた。




--典刻歴1053年--


マギルガンドは滅亡したエイラル国を吸収し、マギルガンド帝国に国名を改めた。

エイラル国以外にこれまで帝国に滅亡させられた国家は大小合わせ4つ。

中立国家クレーデルとそれに並び同盟を結ぶ七大国家が、第八席として帝国を迎えマギルガンドの進撃は終わった。

捕虜として捕らえられていた彼の身柄は中立国家クレーデルに渡り、自由国家騎士としてクレーデルに所属することとなった。




--典刻歴1062年--


八大国家の一つ、ドワーフの王国『ダマンダル』は、

王国の北西に位置するバルバドロッサ活火山の火口から出現したひとつがいのドラゴンに甚大なる被害を与えられていた。

2頭のドラゴンはバルバドロッサ火山の麓に位置する村を焼野原に変えただけでなく、村から一番近い都市すら半壊させ、王国から派遣された討伐軍も対峙した1頭に蹂躙された。


排他的な種族であったドワーフも未曾有の危機に八大同盟国と中立国家クレーデルへ救援を要請。

その際に編成された同盟討伐軍の指揮を執ったのが彼だった。

彼は自由国家騎士でありながら中立国家クレーデル直属の王国騎士団長次席も兼ねていた。


『バルバドロッサの決戦』は今も多くの酒場で歌い継がれている。

マグマ煮えたぎるバルバドロッサ活火山の火口内、彼と対峙する最後の1頭は傷だらけになりながら1つの卵を守る様に力尽きたという。





--典刻歴1076年--


クレーデル直属の王国騎士団長に成っていた彼は剣を置き、42歳の若さで騎士団を退役した。

だが自由国家騎士にはそのまま名を残した。




--典刻歴1085年--


ドワーフ王国『ダマンダル』にて魔法研究に徹していた彼によって『暗黒マナ』が発見された。

その後それが公になったことにより魔道の根底が覆る。

彼のその研究は後に世界で最も人の命を奪う魔法『黒魔法』を生み出した悪魔の研究と言われる。





--典刻歴1094年--


暗黒マナの発見から9年。

彼は八大国家の一つ、魔道国家『イシュマルク』に身を置き更なる魔法の研究を行っていたが、とある事件が起きる。

彼と共に研究を行っていた魔導士の一人、シェーザ・ポドルスクが備蓄のマナクリスタルを大量に持ち出して外界へ下り、研究中の魔法を発動。

森林を拠点とする亜人種の村に甚大な被害を及ぼす。


報告を受け森林へと向かった彼とイシュマルクの魔導士たちは、ほどなくしてシェーザ・ポドルスクを見つけた。

シェーザは実験の成功を主張し自分の功績を称えられようと魔導士たちに近づいたが、彼は温かく迎えることはなかった。

彼はシェーザに一つの黒魔法を放ち、そこに残ったのはシェーザの骨と衣服のみだった。

彼とともに実験を行っていた魔導士は、その時彼が使用した魔法を誰一人として知らなかったという。


その後彼は魔導士たちの前から姿を消し、イシュマルクに戻ることはなかった。





--典刻歴1104年--


彼がその後歴史の中に現れたとき、10年の年月が流れていた。


中立国家クレーデルの自由国家騎士団の城門兵に、団員だ、とだけ告げた老人の名は、当時の騎士団長の耳に届いてから城中をひっくり返す大騒ぎに発展した。


自由国家騎士団の城にたどり着いた彼は三人の子供を連れていた。

騎士団の兵舎に三人を預け、彼はクレーデル王に謁見を求めた。

謁見を終えた彼は、その後三人を伴ってクレーデル国の自由ギルド本部へ赴く。


そして彼は一つのギルドを立ち上げた。

『世界』(アトモスフィア)

構成員は70歳の彼と10歳の子供三人のみ。

しかし幾度となく世界を揺るがした彼の牽引するギルドは、政治、軍事、あらゆる派閥や権力から手を引かれた。


しかし彼はどの派閥や政治、権力にもひるがえることなく、

典刻歴1108年、三人の子供たちに看取られ、『英雄』『竜殺し』(ドラゴンスレイヤー)『悪魔』『賢者』数多くの異名を冠した生涯の幕を閉じた。


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