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星が降る遊園地  作者: ミー子
夏~思い出を振り返る魔法~
8/17

真夏の夜のイルミネーション

核心に一気に近づかせました。

湿った夜に、月がぼんやりと浮かぶ。

その下で、遊園地の電飾がキラキラと輝いていた。

そして、灯篭のように、星のようにぼんやりと、イルミネーションが、優しく輝いている。

まるで、道に迷わないように、灯台が、船をこちらに誘うように。


「お盆は、みんなが帰ってくる日だからね」


カヤが、みんなにそう言ったのは、この事だったのだ。

帰ってくる人たちが迷わずに、誰かの元に戻ってこれるように。


「綺麗だねぇ」


ニコがぼんやり言った。休憩所の窓から、外を眺めている。


「また遊園地の怪談が、1つ増えるねぇ」


マモは、空気を読まずに、へらりと笑って言う。

ニコは、マモの頭を無言で平手打ちする。


「またそんなことを言う」


苦笑いをしながら、また外に視線を戻す。

外からはお客さんの声と、従業員の声が重なり合って聞こえてくる。

子供の高い笑い声が風に乗ってくる。

夏とイルミネーションの組み合わせは、おぼろげで、幻想的で

冬の澄み切った輝きとは、また違う美しさがあった。


「千ちゃんが来て、もう半年がたつねぇ」


ニコが不意に言う。


「もう半年かぁ」


マモは背もたれにのけぞり、腕を頭の後ろに組む。

外の喧騒とは、切り離されたような静けさが、休憩所にはあった。


「で、マモちゃん。シューティングの交代に遅れる」


ニコの言葉に、マモは顔を青くして、鞄を肩から無造作にかけて

休憩所を飛び出していった。

鮮やかだが、どこかぼんやりした色どりと、湿った夜の空気がマモを出迎える。

急ぎ足でシューティング・スターへと向かう。

園内を走る汽車の踏切が見えてくる。

もうすぐ入り口につく。

そう思ったとき、ふと、どこかで見た影を見た。

背格好が、千夜と似ていた。


「あれ? 千ちゃん?」


話しかけたとたんに、千夜に似ている影は、霧のように消えた。

目を白黒させる。

呆然としながら、階段を目指して歩いていく。

歩きながらポケットに入れているイヤホンを探して、ないことに気づく。

イヤホンがなければ、無線をきちんと聞き取ることができない。


(休憩所に忘れた……!)


マモは、操作室へと急いで向かった。

操作室にはナグモがいて、ちょうど車両を出発させていたところだった。


「悪い! ナグモ! 内線を貸してくれ」


きょとんとしつつ、ああ、いいぜ。と、内線を使うように促した。

受話器を手に取り、そこそこ手が空いていそうな人がいるであろう

星まつりの町に内線をかけた。

内線に出たのはユリコだった。


「ハイ。星まつりの町のユリコです」


お客さんからは見えないようにしゃがみ、内線に出た。


『ユリコか。俺だ。マモだ。そこに暇そうな人はいる?』


少し焦った様子のマモに、面食らいながらも、きょろきょろと見まわす。

千夜は手が空いているらしく、使ったものを片付けていた。


「ええ。千ちゃんが」


『じゃあ、悪いんだけど、休憩所に俺のイヤホンがあるから

シューティングまで、届けてくれと伝えてくれ』


「マモさん。また忘れものですね。おっちょこちょいなんだから」


ユリコは呆れたように言った。


「伝えておきますんで、待っててください」


ユリコは受話器を置くと、千夜に話しかける。


「千ちゃん。悪いんだけど、シューティングまで行って、マモさんにイヤホンを

届けてほしいんだ」


千夜はきょとんと聞いていた。

そして、話の意味を理解して、目を丸くする。


「えぇ? シューティングにイヤホンを届けてほしい?」


千夜の声が、星まつりの町に響いた。


「そうそう。内線でかかってきてねぇ。今はここには行けそうな子が

千ちゃんしかいなくって」


ユリコが申し訳なさそうに千夜に言う。

顔の前で手を合わせて、ごめんなさいのポーズをしている。

何があるというわけでもなく、忙しくも無かったので、快諾する。


「ええ。いいですよ。休憩所にあるんですね」


星まつりの町を出て、休憩所に向かった。

中に入り、テーブルの上を見ると、黒いイヤホンが置いてあった。

その横には、何か書かれた紙が置いてある。

見てみると


『だれの?』


と、丸っこい、少し歪んだ文字が、紙に書かれていた。

その横には、几帳面な文字で


『うっかり屋のマモちゃんの』


と書かれていた。

思わず、その紙を見て、ふふっと笑ってしまった。

しかも、マモの似顔絵まで描かれている。

千夜はその紙に、一言書き足した。


『ちゃんと届けます。安心してね』


まるで、ちょっとした伝言板だ。

イヤホンをポケットにそっと入れて、休憩所の外に出た。

その姿を、ミルクティー色の髪の少女が見ていた。

それに気づかず、千夜はシューティング・スターを目指して小走りで向かう。

鮮やかで、どこかぼんやりとしたイルミネーション。

道行く人の、誰かを思う表情。

乗り物が動く姿。

それらを眺めながら、人込みを縫って歩いた。

そんな千夜の後を、少女は追った。

線路沿いを歩き、その線路を、汽車が通り過ぎていく。


「よっ! 千ちゃんじゃん!」


同期が、千夜に陽気に声をかけた。

千夜はびっくりしてそちらのほうを向く。

悠々と、手を振って通り過ぎて行った。


「前を見ろよ! まったく」


楽し気に言葉を吐き捨て、シューティングにたどり着いた。

入り口に人がたっていたので、マモかと思い、声をかけようとして、はっとした。

マモではなかった。そして、自分に驚くほど似ていた。


「私……?」


思わず後退った。

その人は、千夜を見ると、姿を消した。

ポケットに突っ込んだイヤホンを、固く握りしめていたことに気づいた。

シューティングの轟音を聞いて、千夜は目的を思い出した。


「マモさんのイヤホン!」


階段を駆け上がり、操作室に入る。


「マモさん! イヤホンお届けに上がりました」


マモは、マイクを手に、中入れしている人たちにアナウンスをしようとしてたところだった。


「おお~! 千ちゃん! 助かったよ。ありがとう」


お礼を言って、イヤホンを受け取るマモを見届けて、操作室から

出て行った。

階段を下りていると声をかけられた。


「ねぇ」


高い、女の子の声だ。


「うん?」


鼻から抜ける声で、返事をしてしまった。

顔を赤くして、下を見る。

そこには、いつか見た、ミルクティー色の髪の少女がたっていた。


「どうしたの?」


改めて、目線を合わせて、返事をする。


「あまね、何で迎えに来なかったの」


「“あまね”?」


千夜が聞いたことのない名前を復唱する。


「ここで待っててねって、いってたじゃん」


誰かとはぐれたのだろうと思い、少女と手をつないで、一緒に操作室に戻り、マモに声をかける。

操作室には入れられないので、出口で待っててもらった。


「マモさん。内線を借ります」


マモは、ああ、いいぜ。と返事をしつつ、操作盤の確認を念入りにしていた。

少女には、出口で待っててねと伝えて、放送をしてもらおうと

内線の番号を確認した。


「どうしたんや?」


補助として、仕事をしていたタカが、千夜に声をかける。

千夜は受話器を手に持ち、番号を押そうとした。


「迷子の子がいたので」


そう返事をしたが、え? と不思議そうな声を上げた。


「そんな子、おらんよ」


自分の足元や、操作室の外を見る。


「出口で待っててもらってます。ミルクティー色の髪に、ラズベリー色の瞳の子です」


タカにはそう返事をした。


「オレ、出口にいたけど、見ておらん。お前しかおらん」


血の気が引くのを、感じた。


(だって、さっき、手を引いて……)


待って。手?


手をつないだ、感覚が、無かった。


―――どうして迎えに来なかったの―――


少女の声を耳によみがえり、それから気を失った。

イルミネーションは、灯篭のように、風に揺られていた。

怒涛の展開です。

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