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星が降る遊園地  作者: ミー子
春〜魔法の遊園地〜
4/17

夜桜と月明り

春の終わりと、不思議な話です。グダグダのぐずぐず

桜が満開に咲き誇っていた。

満開の桜は、見るものすべてを魅了してしまうほどの美しさで

千夜は、強化ガラスのジェットコースターである、シューティング・スターの駅舎から見える

満開の桜を見たときは、感動して、声を上げたほどだった。

3月の下旬の週末、夜桜をお客さんに見せるため、夜間営業を行った。

初めての夜桜祭りに、千夜は胸が高鳴る。

いつも見る遊園地とは、雰囲気が変わっていて、驚いた。

ライトアップされたアトラクション、ライトアップされた桜並木……

薄いピンクの桜が、淡いオレンジ色のライトに照らされて、宵闇に幻想的に、ぼんやりと

浮かび上がる。

そして、対照的に、鮮烈な光を放つ、シューティング・スターが

唸り声をあげて、駆け抜けた。

暗闇の中を駆け抜けるその姿は、だれの目をも惹き付けた。


駅舎に戻ってくる、銀色の車両。

オレンジ色の照明を浴びて、ぼんやりと浮かび上がるその車両は、どこか誇らしげだ。

暗闇の中の、オレンジ色の照明と、銀色の車体。そして、強化ガラスのレール。

銀色の照明にライトアップされて、オレンジ色の照明に照らされて、戻ってくる車両。

ユリコが、おかえりなさい! と、アナウンスをした時。

桜の花びらが、舞い散った。

その幻想的な光景は、アナウンスをしたユリコでさえも、一瞬声を失ったほどだ。

車両に乗っていたお客さんは、大喜びだった。


「まもなく止まります! まもなく止まります! 安全バーが間もなく上がります。

安全バーから手を放して、お待ちください!」


ユリコは、楽しそうにアナウンスをする。

そして、安全バーが上がった時、いつもとは違うアナウンスを付け加えた。


「流れ星の祝福を受けた皆さま! おめでとうございます。

今年の春は、きっと、いいことがあることでしょう。

またのご利用をお待ちいたしております」


千夜は、お客さんたちを車両に案内して、出発した後、車両を見送りながら

一緒に習熟を受けていたイロに、こっそりと尋ねる。


「イロさん、イロさん」


イロは、千夜の声に気づいて、そっと近づくと


「どした?」


と、訊く。


「恥ずかしながら、流れ星の祝福って、なんですか?」


その質問に、イロは、ああ、と手を、ぽん。とたたく。


「このシューティング・スターのできる前からある、まぁ、なんというか

当たりくじみたいな話ですね。

誰が言い出したのかはわからないけど、きっと、シューティングスターの前にあった

コースターに乗った人が、言い出したんじゃないかなぁ?」


私も、去年にここに来たから、ちょっと想像できないんだけどね。

と、イロは、けらけらと笑って、出口に向かった。

出口の扉を開けている。


「ふぅん……」


イロの後姿を見ながら、千夜は持ち場についた。

車両は、主ブレーキを通ったところだった。

ああ、帰ってくるな。

と、思ったその時、周りから、音が消えた。

桜の花びらが舞い散る駅舎。

宵闇に、ぼんやりと浮かぶ白いレール。

猛々しい轟音と、靴底から伝わってくる、ガラスとは違う触感。

ああ、これは、いつもの


(木製コースターの、幻覚)


そして、イロがいたはずの出口には、イロではなく、エリア長のカヤが立っている。

アナウンスは、ユリコではなく、マモだ。


(私は、何を見ているの?)


そう思ったとき、後ろから肩をたたかれた。


「千ちゃん。どしたん? 休憩の時間だよ」


いつの間に来たのか、ニコの声が後ろから聞こえて、木製コースターの幻覚は消え去る。

千夜は、自分が汗をびっしょりとかいていることに気づく。


「ああ! ニコさん! お疲れです」


ニコは、慌てた様子の千夜に首をかしげながらも、早く休憩に行くように促した。


「早く休憩に行きな。ん? すごい汗だね。そして、顔色が悪いね……」


少し黙ると、何かをニコは考えている。


「休憩に行かせるより、帰したほうがいいか……

千ちゃん、ちょっと待っててね」


そう言いおいて、ニコは、レールを渡ると、ユリコの居る操作室に向かい、内線を使い

何かを話している。

3分ほどの時間が過ぎて、操作室から出てきたニコは、イロに何かを話している。


「ああ、そういうことですね。なるほど」


ニコの話を聞いたイロは、千夜の元に来ると、咲くほどのニコからの話を千夜にする。


「今日は、千ちゃんは、顔色が悪いということで

私が付きそいで一緒に上がることになったそうな。

というわけで、千ちゃん、一緒に帰ろうか」


千夜は驚きつつも、頷いて、イロと、シューティング・スターを後にした。

事務所に向かう途中、千夜は、自分が見た幻覚のことを、シュリに

ぽつ、ぽつ、と話す。


「実は、イロさんから、あの話を聞いた後、私、多分

シューティング・スターの前のジェットコースターの、幻を見たんです」


千夜の言葉に興味を持ったのか、イロは、少し身を乗り出した。


「へぇ。どんなジェットコースターだった?」


「ちょっとしか見てないんですけど、白くて、木製みたいで、迷宮のような

ジェットコースターでした」


綺麗でしたよっと千夜は付け加える。


「まるで、タイムスリップしたみたいでした。

あの時、出口にいたのは、イロさんだったはずなのに、カヤさんが、出口にいたり

動かしていたのは、マモさんで、まるで、皆さんがまだ、入りたてみたいで」


興味津々といった具合に、イロは千夜の話に聞き入る。


「なるほどっ! 面白い事もあるもんねぇ。カヤさんの、入りたて時代かぁ。

マモさんがアナウンスなんて、これまたすごい」


うんうん。と、1人で頷いているイロが面白くて、千夜は思わず吹き出す。


「イロさんは、そのジェットコースター、見たことないんですか?」


「いやぁ。ないですねぇ。一度も。昔、木でできたジェットコースターが

この遊園地にありました。ってことしか聞いてないし。木製コースターねぇ

それは見てみたい」


背後で、風が唸る音がした。

振り返ると、桜の花びらが舞い散る中、銀色の車両が、力強く駆け抜けた。

ガラスのレールは、オレンジの光と、桜の花の灯を反射させ、輝きを増す。


「ねぇねぇ! 綺麗ねぇ!」


近くにいた女性が、男性に話しかける。


「おお! うわさに聞いていた、ガラスのジェットコースターだ!

俺乗ってくるけど、お前も来る?」


男性のその言葉に、女性は顔をしかめる。


「いやよ。怖いもん」


それを聞いた男性は、じゃあさ、と続ける。


「俺が乗ってくるから、あそこのベンチで俺の荷物を見ながら待っててくれよ

そんで、戻ってきたところを写真に撮ってくれ」


「いいわよ」


そういって、男性は、女性に荷物を預けると、券売機でチケットを買い

乗り場に走っていった。

何となくほほえましく、千夜とイロは、そのやり取りを夜に紛れて見ていた。


園内を通って帰るとき、シューティング・スターの1番高いリフトが

月明りに照らされているのを、見た。

桜の花のライトアップと、月が照らすその姿は、なんとも幻想的で

誇らしげに、そびえたっていた。

お客さんの悲鳴と、笑い声が、走行音と重なって、響き渡っていた。


千夜の初めての春は、こうして、過ぎていった。

季節は、初夏へと移っていた。

月に照らされる、ジェットコースターって、綺麗ですよね。

満開の桜との組み合わせは、もうそりゃ最高です。

そんな綺麗な景色を書いてみたくて、書きました。

言葉を選ぶのって、難しい。

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