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私/俺の物語  作者: 古前 包平
6/6

引き寄せる声

母上とのお別れ、運命との出会い。

やっと本格的に物語が始まる。こんなに小説を書くことが大変だなんておもっても見なかった。世の中のもの書きさんはすごいな。


迫ってくる光に【攻撃予測】が示す数は背後から私を貫こうとする光線だけでも1600。

光線自体は細いが、触れれば限界まで圧縮された魔力に熱されることはこの十数年間の間に嫌というほど身にしみてる。 いや、痛みは感じないけどくそ熱い。

空中を【び足】で駆けながらスピードを落とさずに方向転換。自分から迫り来る光線の中に飛び込み 【クロノスの小時計】を発動。数秒の間だけ止まる白黒の世界で一息に光線を抜ける。

色彩が戻った世界では私の背後から迫っていた光線と左右から挟み込んできていた光線とがぶつかり合い爆音をたてながら消滅し、【魔力察知】で捉えた上空には13もの陣が重なり合った魔法陣。発動されればこの上なくめんどくさいのは経験済みだ。

槍として具現化していた魂の一部を戻し、次に創るのは身の丈を超える大弓。 蒼き燐光を撒き散らしながら顕れたソレを展開されている魔法陣に向けて、ろくな構えをとらずに弦を引く。

キィィィンと魔力収束音を響かせながら 【魔力貫通】 【術式破壊】 を付与させた矢が天を切り裂く。

カシャンとステンドグラスが割れる音を響かせ、13の陣が蒼に貫かれてボロボロと崩れ落ちる。

無理やり超規模魔法をキャンセルさせられたのだから、使用者への反動は大きいはずだ。

予想どうり相手からの攻撃が一瞬途切れたのを感じ相手の頭上に、大弓から槍へ持ち換えて魔力で限界まで強化した足に 【万象貫通】 【一点収束】 【二重攻勢】 を付与した槍をかかと落としの要領で、天から地に向けて振り抜く。

振り抜く直前に槍の通る軌道上に【加速】 の魔法陣を8つ展開。

音と衝撃を置き去りにしながら、蒼いスパークと燐光を撒き散らしながら槍は相手の頭上をぶち抜く。

今日こそやったか!?と思ったのも束の間、横合いからふり抜かれた巨大な手によってもの凄い勢いで斜め下に落ちていく。

ぎりぎりガードが間に合ったのか、ステータスを確認すれば生存値が4分の1程ごっそり減っていた。【物理防御】と【衝撃無効】が間に合ったからよかったものの、発動できていなければいくらこの身体が並外れて頑丈だとしても木っ端微塵だ。

一瞬前の言葉はフラグだったか…。

海面に壮大な波をたてながら両足を着けて、蒼雷を纏いながら戻ってきた槍を掴みその場から【縮地】を使い離脱。半白置かずに海面が凍った。

純度の高い青で覆われた海面は、私がたてた波をそのままの形で停止させていた。触れれば氷像、かすっても氷像。笑えない。

遅れてやってきた攻撃の余波が時の止まった海を破壊する。

派手にバキバキいったなあ、と思いながら私の周囲に展開された無数の魔法陣を、こちらも同じ数、同じ魔法陣を展開し相殺。

相手の目の前まで移動し、今度は槍から太刀へ持ち換え鞘から刀を抜き放つ。

物理系攻撃スキル【襲次元かさねじげん】、六つ七つ八つと同時に放たれた斬撃が目前の者を空間ごと切り刻まんと襲いかかる。

止められるのはどうせ分かっているので相手の死角に回り込み太刀から大剣へ。

荒れ狂う竜の咆哮を纏いながら斜め一閃、物理系攻撃スキル【龍断ち】。

大剣から放たれた漆黒の顎をにゅっと伸びてきた手が握りつぶす。やだ、ゴリラ……。

【龍断ち】を握りつぶした手が開かれれば【魔力察知】が反応するのとほぼ同時に極太の青い魔力が放たれる。

相変わらずの収束速度。もうこれ反則スレスレじゃん。察知系のスキルの意味ないじゃん。

距離を置く暇は無いので大剣から1枚の大鏡へ換え、両腕を交差させその前に大鏡を挟む。

リィィイン、とぶつかった魔力を吸収しながら大鏡は回転速度を上げていく。本来ならば吸収した魔力をそのままそっくり相手に跳ね返すのだか、その程度では張ってある【魔力障壁】に阻まれるのがオチだ。

全て吸収し終わった瞬間に大鏡を戻し、大弓へ。吸収した魔力と自分の魔力を重ねて弦を引き絞る。

バチリ、バチリと声高に鳴く稲妻を矢に見立てて限界まで圧縮し解き放つ。魔力系攻撃スキル【激雷】、私の魔力だけでなく吸収した魔力も載せているので、通常よりも大分強力な一矢が展開された【魔力障壁】にぶち当たる。

ギチギチと嫌な音を立てたのも束の間。【激雷】は【魔力障壁】をぶち抜き目標へ着弾。

瞬間、今日の模擬戦の終了を知らせる爆音が辺に鳴り響いた。















あー、終わった…やっと終わった。今日も生きてる、生きてるって素晴らしいなあ!!前世を人助けなんていう自殺をしておいてアレだが、今は心の底から思ってる。

次から次に当たったら即死級の攻撃は来ないし、相手の攻撃を予想する必要も無い。

3日間休憩なしに模擬戦をしていたため精神的疲労が半端ない。肉体的にはまだ余裕があるんだけどさ。

ついでに゛眷属の儀゛の後に使えるようになった、常時発動させているスキルも全て切って大の字に転がりたいがそうもいかないだろう。地味に疲れるんだけどなあ……。


「随分と半獣型も使いこなせるようになりましたね、私に一撃当てるまでの時間も最短記録でしたし。」


うるせー嫌味かコノヤロー!3日だぞ!?1発当てるだけなのに3日掛かったんだぞオラァ!!前見たく1発も当てられないままノックアウトっていうことは無くなったけどさあ!!

頭に直接響くような不思議な音で言葉を掛けてきたのは、今までの模擬戦相手。 つまり母上(本体)だ。

ぺたり、と女の子座りをしながら上から覗き込んでいるのだろう。チラっと上を見上げればかち合う碧色。

人の面影を残した竜の姿をとっている母上も色々とアレだがうつくしい。一瞬でも気を抜けば殺されるけど。


「……とは言っても半獣型は変わらず苦手だ。力の制御が難しい。」


そうなんだよね。半獣型って人型や獣型と違って、いい所取りしてるから力の微調整が難しいんだよねー。

基本人の形の枠に入ってるから腕と脚は使えるけど、人型とは身体能力は比べ物にならないほど強いし、魔力も爆発的に上がる。力加減を一歩でも間違えれば自分の体が爆発する。

1度ミスって右半身吹っ飛んだし。母上が再生させてくれたけどさ。アレにはびっくりした。いきなりとんでもない衝撃がはしったと思ったら右半身無くなってんだもん。

手を見れば肘まで黒く染まり所々鱗の様なものが見え、爪は鋭く発光する蒼いラインがいくつもはいってる。

鏡で全身を見たことはないけど母上(本体)と似たような姿になってる気はする。獣型の名残はどこに消えた。

ちなみに、獣型は竜に似たデカイ狼だ。蒼い体毛と黒色の模様がかっこいい。








いきなり蜂の巣にされそうになった゛眷属の儀゛から早十何年。如何せん最初は母上に1発当てることにすげー時間かかったから、ぶっ続けで戦い続けてたから正確な時間は分かんない。いやだって、最初はホントにノックアウトされて強制的に起こされてまたノックアウトされる事の繰り返しだったからなあ……。もうあれトラウマものだろ。

まあ、私の容姿から考えると十五、六年は経ってる気がすけど。


身長はぐんぐん伸び、体は硬くしなやかな男の身体に。綺麗に腹筋は割れてるからな。

小さな頃から期待度が高かった顔に至っては贔屓目なしでも絶世の美形だ。目つきが鋭いから近寄り難い印象を受けるけど…。まったく有難くないが完璧にラスボスの風格が出来上がってしまっている。まったく有難くないがな!!でも母上曰く、笑うと180°印象が変わるらしい。




いい加減休みたいので半獣型を解いて人型になる。小さな頃から人型で生活していたので一番楽だ。


「…疲れた…………。」


うわあ、やっぱりイリアース君のスペックでも疲れるんだ。普段なら制限がかかるのに今回かかんなかったもん。

コキコキと首に手を当てて首を回し、次は肩を軽く回す。自分でやっててなんだけど鏡で見たい。絶対イケメンだろ。服装もこれ以上無いくらい似合ってるし。

母上が直々に作ってくれた服装はイリアース君の容姿をこれ以上無いほど引き立ててくれるからこればっかり着てたりする。

首まで覆うノースリーブのインナーに長袖の短めの上着、キュッと締まったくびれときっちり鍛え上げた綺麗な体のラインが出てるからどことなくエロい。まじで腰細いんだぞ!

下は幾つかベルトのついたズボンと膝下までのゴツめのブーツ、腰にはくるぶしまで隠れる足の半分を覆う腰布。うんかっこいい。さすが母上良く分かっていらっしゃる。

圧倒的気だるげなクール系の美形です。これでピアスとかつけてたら個人的には完璧。


「少しおやすみなさい。今の貴方は体を休めることが一番の休息よ。」


へいへーい。そんな事いうけど正直母上が手加減してくれれば毎度こんなに疲れることも無いと思う。いつも全力で殺しにかかってきやがってぇ。

泣いてないぞ、泣いてないからな……!!

下らないことをつらつらと考えながら家に帰ろうと足を向ける。


最近不思議な夢を見る。

最初は殆ど夢の内容なんて思い出せなかったし気にも留めてなかったけど、どうにも近頃はソレが誰かの人生だということに気づいた。

とは言っても別に私自身がその人物に成るとかではなく、どちらかというと側で見守るような感じだ。目が覚めるような紅い髪に負けん気の強そうな金色の瞳。夢の中の彼は幼く─髪に色がついていたことから十は超えているのだろうが─どこか寂しそうだった。上には1人兄がいるらしく、紅色の子の家族はこぞって兄の方にばかり集まる。対して紅色の子はいつも1人だ。認めて欲しくて、両親の目に写りたくて、必死で勉強だって武術だって頑張っていた。まあ、友人はいなかった様だが……。別に親近感なんて感じてないからな!

昔に比べて随分とハッキリ思い出せるようにはなったがせいぜいこの程度だ。

今、その紅色の子が夢で見た歳そのままなのか、それとも成長しているのか分からないけれどもし、…もし運命といものがあるのならばイリアース君の……いや、私たちの運命はその子なのかもしれない。




なあーんて、とんでなく恥ずかしいことが頭を過ぎったわけですがそんな事あるわけナイナイ。いつもより疲れたのかな?こんな夢見るなんてイタすぎるだろ。中学二年生は何十年前だよ…。





そんな思いを消そうと笑い飛ばそうと思った時だった──





──い──






声だ。声が聞こえる。微かだけれど私たちを引き寄せる声だ。

家へと向かっていた体もはたりと止まる。





──と来い──





嗚呼、何故だろう。なぜこんなにもこの声に惹かれるのか。


「イリアース?」


母上が様子のおかしい私に気づいたのか心配そうな声音で訪ねる。

大丈夫だ、問題ないと返したい所ではあるがそうはいかない。どうしてもどうしてもこの声の元へ行かなくてはという脅迫にも似た感情が産まれる。1分でも、1秒でも、速く、速く、彼の元に──。


「……母上、呼んでいる。声が俺を呼んでる。行かないと、速く、少しでも速くアイツの元に行かないと。」


ポツリと呟くように返事をして震える指先を声の元に伸ばす。


「ああ、ついに貴方の運命が廻り始めるのですね。」


かすかに耳に入った言葉は寂しそうだった。


「いってらっしゃい、イリアース。どうか貴方と貴方の運命に祝福があらんことを。」


最後の母上言葉を皮切れに強く1歩を踏み出した。






──オレと共に来い!──






ああ、行ってやるとも待ってろよこの野郎!この超ハイスペックな私たちが応えたんだ、生半可な奴だったら承知しないぞオラァ!!!

そういえば母上がどこも半分は数が少ないから獣型で守護契約は交わせって言ってたっけ?

身体かどこかに運ばれる感じがする前に獣型に変化しといた。



母上

ついに愛息子とバイバイ。離れてもずっと見てるからね!


イリアース

外見年齢20過ぎの青年。美形。目が潰れるほどの美形。でも相変わらず仏頂面な上に目つきが鋭いから怖い。カッコイイよりも怖いが先にくる。

本人は十何年しか経ってないと思ってるが実際には40年ほど経ってる。母上が殺しにくるから必死すぎて自覚がない。中身は永遠の17歳。

獣型と半獣型と人型の三形態がある。どこのラスボスかな?

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