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私/俺の物語  作者: 古前 包平
2/6

イリアースという少年

すぐに幼少期は終わらせる予定です。

イリアース


それが今の私の名前らしい。歳は丁度7つで父親は生まれる前に死んでおり母親と2人で小さな一軒家で暮らしている。

父親が死んでる点を除けば前世と似たり寄ったりな環境なんだが、母親がとんでもない美人さんなのだ。深い深い青色のロングストレートと大海原のような碧色の優しげな瞳、肌はミルクのように真白く触れるとしっとりしててへんな扉を開きかけた。ちなみに私は褐色に近い肌色に白と黒の頭で紫の瞳だ。全然似てない。

母親曰く父親の生き写しだと言う。

まだ家の中から出たことは無いし母親以外の人とも会ったことはないが相当な勝ち組じゃないだろうか?母親は美人で優しい上に料理上手、しかも魔法まで使えるし教えてくれる。

そう、魔法だ。この世界には魔法があるらしい。

数日前に私の意識が覚醒し、訳分からんまま鏡の前に突っ立て部屋に入ってきた母上を見た瞬間に頭の中にとんでもない量の情報が流れてきて死にそうになったところ、どうやらソレは私がinする前のイリアース君の人生だったらしく怪しまれることなくこの世界の常識やら母上の事やら自分のことを知ることが出来た。最初は勝手に死んだ上に人様の人生を乗っ取るとか自己嫌悪に押しつぶされそうになったがその日の夜、眠っている間に゛深層意識゛なる所にダイブしたらしく本来のイリアース君に出会い本人直々に「母上の愛が怖すぎて表に出たくないからよろしく」と懇願された為今現在は吹っ切れている。尚本人曰く死んでる訳じゃない様なので内側から観てると言われた(後々記憶を整理するために辿ってみたら確かに愛が重かった)。他にも私がコッチの世界に来てイリアース君にinした為世界からそれなりの不具合やら制限を受けることになるから頑張ってとも言われた。最初は意味が分かんなかったが、生活し始めて直ぐにこれやばいヤツだと感じた。

不具合の方なのか制限の方なのか分からないが当てはまるものはコレだと確信した。


「イリアース、朝ごはんにしましょう」


ご飯!はいはーい今行くよ母上!母上の御飯は美味しいからね、ほっぺた落ちるくらいだから!もちろんお皿持ちます。


「…お皿もつ。」


お分かりいただけただろうか?

そう、自分の意思で言葉は話せないし行動もできないのに勝手に時々ポロッと内心が漏れるのだ。

世界がイリアースというキャラに合わないような行動を取らないように制限をかけたのか、唯の自由に行動出来ないという不具合なのかまったく分からんが不便すぎるだろ。なんだこれ。将来友達100人できんのかよ、タダでさえ仏頂面がデフォなんだぞ!


母上から受け取った2人分のお皿を真っ白なテーブルクロスを敷いた少し大きなテーブルに乗せてこれまた真っ白な椅子を母上の為に引く。

ありがとうとふんわり笑いながら椅子に腰掛ける母上に続き私も椅子に座り、あらかじめ置いてあった木箱の中からフォークとナイフを取ってお皿の横に並べてくれた母上にお礼を言う、というか言いたい、頼む口よ動いてくれえ!


「ありがと」


「ふふふ、いいのよ母上がイリアースにやってあげたかっただけなの」


蕩けるような甘い笑顔を浮かべて自分の分のナイフとフォークを取り出す母上マジ聖母。

ちなみに今日の朝ごはんは目玉焼きっぽいのにベーコンっぽいの3枚、いい感じに焼き目のついた一口サイズの砂糖のまぶされたパンっぽいのが2切れ。どれも味は似てるんだけど使われた材料もわかんないし、料理の名前もわからん。イリアース君もここら辺は興味なかったらしく記憶を辿っても名称は分からないままだった。

カチャリと時々音が鳴るが喋らず黙々と食べる。母上はどうやら食事中にペラペラ喋ることは好きではないらしくイリアース君の記憶を辿っても賑やかな食事というものが無い。前世は母親と話す時間が夕飯の時くらいしかなかったからよく会話しながら食べていた為少し寂しく感じる。

まあ顔には出ないし出せないけどな!!!

手に持っていたナイフとフォークを置き今日も美味しかったご飯にご馳走様でしたと内心で手を合わせる。


「美味しかった」


「イリアースの口にあったのならよかったわ。

お昼に何か食べたいものはあるかしら?」


食べ終わった食器を重ねて木箱の隣に置いてあったティーカップに被さってたい布を取りポットの中身を注ぎながら母上が嬉しそうに返してくる。

お、この香りは林檎に近いなーアップルティーかな?と思いながら渡されたカップを両手で受け取る。何度でも言うけど母上のご飯はなんでも美味しいからなー、ハズレが今のところ無い。


「……母上のつくってくるものは美味しいから…その…」


なんでも食べてみたい


仕事をしない表情筋が久しぶりに仕事をした感じがした。おそらくふんわりと笑ったのだろう。頬と耳に熱っぽさを感じるから赤くなってるに違いない。


「ンンン!!」


母上が口元に手を当てて天を仰いだ。

わかる、分かるぞ母上ェ!イリアース君の顔面ポテンシャルでそんないじらしい言葉と照れ顔なんて見せられた日には悶絶ものだよね!!我がことながらスゲー可愛いんだろうな、私も見たかった。ホント顔がいいって罪。




無事食事が終わり(母上のハートに甚大な被害がでたが)汚れた食器を片付け終わったら日課の魔法訓練の時間だ。正式には魔力系スキルらしい。攻撃スキルと支援スキルとに別れていて名前の通り殴っていくのが攻撃スキルで、サポートしていくのが支援スキルだ。

おそらく皆開けるステータス画面っぽいのを頭に開き現在の習得率を見る。攻撃、支援ひっくるめて魔力系のスキルは全て習得済みだ。スキルレベルもほとんどが最大値のレベル10。

正直最初見た時目を疑った。どこの強くてニューゲーム状態だよ。

記憶を辿っても使った様子も無いしそもそもやっている事と言えば魔力操作の訓練だけだ。この日課が始まったのだって1年ほど前。

イリアース君のスペックがぶっ飛び過ぎてるのかなんなのか。いくらなんでもオーバースペックすぎるだろう。

魔法とは別の物理系スキル、恒常スキルも似たり寄ったりな感じだ。鍛えた覚えも無いし習得した覚えもないし首を捻るばかりだ。でも何故か全てにロックがかかってる状態。私がinする前からロックかかってんのにどうやってレベルを上げたんだろう?もしかしてもともとの潜在能力分とか?

これ後で解けるんだろうな?……解けるよね?

基礎能力もレベルが1の割にはカッ飛んだ数値を叩き出してるし、やけにステータス欄が長いから今まで流してたけど1度じっくり見た方がいいのかもしれない。もしかしたら最初は馬鹿みたいに強いけど時間が経つにつれて弱体化していく系の状態異常を持ってるとかだったら嫌すぎる。仮にそうだったとしたら早めに対抗手段を見つけないとこの先生き残れない気がする…。

でもチラリとお皿を片付けてる母上のステータスを見るとこれが普通なのかなって思えてくる不思議。母上の0がいっぱい並んだ数値見てると自分がしょぼく感じる。てか、家族とはいえ勝手に他人ひとのステータスとか見れちゃって大丈夫なんだろうか?

レベルも能力も全部見られるとか私だったら嫌すぎる。後で自分のステータスを保護できる手段が無いか探してみよう。ピンポイントに弱点を付けられて後ろからグサリとか冗談じゃない。

しかし母上の名前の欄に付いてる(人型端末)ってなんだ。ん?つか、アレ?母上の種族人間じゃねぇ!?精霊︰神格ってなに!?!?もしかして私人間じゃねーの???

急いで自分の欄を確認すると半精霊︰獸格じゅうかくと載ってた。なんだよ獸格じゅうかくって……。精霊なのに獣なの?なんなの?どっちかにしとけよ。アレか?死ぬ直前に人間に産まれたくないとか思っちゃったから人間以外のものを混ぜたの?なんなの?でも、母上の話を聞く限り父上人間みたいなんだよなあ。

眉間に皺を寄せながら虚空を睨んでいると片付けが終わった母上がこっちに来た。


「ごめんなさい。少し待たせちゃったかしら?」


「……べつに気にしなくていい」


「ふふふ、そんな拗ねたような顔しないでちょうだい。食べたくなっちゃうわ。」


目元を薄桃色に染めた母上は可愛らしいが言ってることが物騒すぎるだろ。冗談だよね?ね??あと別に拗ねてねーし。


「さて、イリアースはお父様に似てとても飲み込みが早いから魔力操作に関しては死にかけても精密に操作できそうね。」


パンっと両手を合わせて嬉しそうに笑う母上。

え……えっ!?死にかけって何?死にかけるようなことにこれから合うの?痛いの嫌なんだけどォ!!


「少し予定より早いけど魂の具現化に挑戦しましょうか。」


魂の具現化?ナニソレ、すげー強そう!


「ぐげんか?」


「ええ、魂の具現化よ。自分の魂を一部切取って、切り取った一部を武器に換えるのよ。」


ほうほう、つまるところ武器を買わなくても好きな時に武器を出し入れできるってことか。魂の一部を切り取るってどのくらいだろ?半分とか?それとも4分の1くらい?武器の種類はいくつくらい作れるんだろう?もしかして1人に1つだけとか?


「どれくらいの大きさに切るの?」


「そうねえ……」


ひたり、と碧が私を貫く。


「貴方は容量も密度も多いからコップ1杯分で大抵の武器は具現化できるはずよ。」


おっ、流石規格外の塊イリアース君!魂の容量?と密度?も多いらしい。


「みつど?ようりょう?」


お、良くぞ動いた私の口!


「具現化といっても魂の容量が少なければ一種類の武器しか具現化できないし、密度が小さければ中身がスカスカの脆い武器になってしまうのよ。」


へー、容量と密度が多ければ中身がギッシリ詰まった鉄塊がいくつも造れるけど、どちらも少なければ発砲スチロール1つとかで、容量が大きくても密度が少なければいくつもの発砲スチロール、反対に容量が小さくとも密度が多ければ一つの鉄塊が造れると…。


「ぼくは何個つくれるの?」


「大抵の子たちは1つ、多くて3つくらいなのだけれど、貴方はどちらも多いから幾つでも創れると思うわよ。」


「1度つくったものは変えられないの?」


「変えられないわ。1度創った武器は切り取った魂が具現化したものだから戻す時も登録されたカタチのまま魂内にストックされるの。そもそも本来は創れるものが決まっているのよ。」


なるほど、大抵の人は具現化できる武器は一種類だけだからそれが本来の創れる武器になるのか?

じゃあ、私の本来の創れる武器ってなんだろう?


「ぼくは?」


「そんなに慌てないでちょうだい?今日はイリアースのソレを創ってみましょう。こればっかりは母上でも分からないわ。デザインも色もカタチもみんな違うんですもの。」


「母上はどんなの?」


「母上は1人では出来ないのよ。」


少し困ったように、けれどどこか懐かしそうに母上は笑う。


「……なぜ?」


えっ!?そこ聞くの!?確かに気になるけど明らかにズケズケ突っ込んでいい話題じゃなくない!?自分の口がコワイ。


「貴方のお父様が人間にだということは知っていますね?」


こくり、と返事をした。


「母上は種族でいうと精霊族なのも知っていますね?本来、精霊族やその他の幽世かくりよに住んでいるモノたちは産まれ持った力が大きい代わりに人間のように魂に関してのことは何もできないのです。けれど、ある一部の人間達は私たち幽世かくりよに住まうモノと守護契約なるものを交わし、守護獣や守護者になった私たちの魂を具現化させて武器として振るうのです。」


あー、そういうことか。母上が精霊、父上が人間な私はハーフな訳だから父上から譲り受けた人間の血によって具現化できて、精霊の母上の血によって守護契約を結ばなくても具現化する魂を自前で持ってると……。ホントハイスペックだなイリアース君。


「そのもの達を人間は共鳴者リンカーと呼んでいましたね。共鳴者リンカーと守護契約を結んだモノは一生をかけてその人間に尽くすそうです。しかも、共鳴者リンカーとの出会いは運命だとか…。」


貴方もそんな人間に巡り会う時があるかもしれませんね。


ふわり、ふわり、と私の頭を撫でる母上の手つきは優しく向ける眼差しは陽だまりのように暖かい色をしている。

そんなに人間の事情に詳しいのは母上も誰かと守護契約を結んだことがあるのだろうか?例えば父上とか。


「母上は結んだことがあるのか?……父上とか。」


「いいえ、母上は誰とも結んだことは無いのです。全てまだ生きていた貴方のお父様から聞いたことです。」


「父上はだれと契約してたの?」


「精霊族の美しい狼でしたよ。」


狼かー。カッコイイな!母上が父上と守護契約を結んでなかったことは驚いたけど。それなら父上と母上はどんな出会い方をして互いに愛を交わすようになったんだろう?めちゃくちゃ気になる。


「そろそろ本題に入りましょう?今日しなければならないことはイリアース、貴方の魂の具現化ですよ。」


うぃーっす。


「早速やりたいのだけれど少しお家だとスペースが狭いかもしれないからお外に出てやりましょうか!」


えっ、お外出れんの!?出る出るう!!いい加減家の中に居るの飽きてきたんだ!!


付いていらっしゃい、という母上の後をパタパタと追いかけた。待ってろよ初めてのお外!あわよくば近所の人に会いたい!!



母上

めっちゃ美人。人型端末


父上

イリアースそっくりの人だったらしい。今の時点でそう断言できるとかどんだけ……。


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