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【7話】錬金術師の仕事は意外とブラック

この世界での魔法、武器の質、アイテムの質などは

見習い、低級、中級、上級、極級、超級、神級、創造主

という段位わけをされています。

店の中に入ると、外まで漂っていた薬草の匂いは一層強くなり、慣れてない人であれば思わず鼻をつまみたくなる程に匂いが濃くなる。


錬金術や合成をやっている以上自分も慣れてはいるのだが、とても好きになれる匂いではない。

鼻の中にとどまるような青臭いにおいは、ゲーム内の自分の店では【ニオイケシ】という本来潜伏や追跡のかく乱などに使われるアイテムを使って消臭していた。そのため久しぶりに嗅いだこの薬草独特な匂いに何故か懐かしさを感じる。


匂いとは別に、この合成屋の内装は整えられており清潔感がある落ち着いた雰囲気を出していた。

部屋の中央に置かれた錬金術用の丸釜は中に透明な液体が入っており、その窯を中心にして規則正しくアイテムが置かれている。


規則正しく置いてあるアイテムを見ればその足元に魔法陣がチョークで書いたような白い線で描かれていた。



どうやら何かを合成している途中だったようだ。


「これは...ポーションを作ってるんですか?」


俺の記憶が正しければ、これは中級合成術の一番最初に所得できるポーションの作成だった筈だ。


確かこれ、結構手間がかかるくせに回復量もあんまりだったから序盤のキャラか変な縛りプレイをしてる人くらいしか使ってなかったっていう残念アイテムだったはずだ。


もしこれを真面目に作ってるんだとしたらこの人は中級アルケミストか?


というか、この魔法陣作りかけで放置してるけどそろそろ魔法陣の魔力が拡散して品質の低下が起こるんじゃないか?恐らくはこれ、なんかの依頼で作ってるんだろうしそれは不味いんじゃないかな?


そう思い魔法陣に魔力を込め、魔法陣を起動させる


白色で書かれた魔法陣が青色に変色し、光を放ち始める。


「そうですよー、って何やってるんですか!?」


魔法陣から放たれた青い光で、さっきから棚の中から客人用のお茶の用意をしていた彼女はこちらが合成をしている事に気づき慌て始める。


「いや合成術を途中で放置し続けると魔力が散って品質が悪くなるからちゃっちゃと作っておいたほうがいいかなっと」


「ありがたいですけど、せめて何か言ってからにしてくださいよ!」


ツッコまれながらも起動した魔法陣でアイテムを消費して一つのポーションを作り出す。

自分能力で補正されているためかなり良質なポーションが出来上がった。

出来上がったポーションは丸釜の上にふわふわと浮いているため、それを手に取りテーブルの上に置く


「まぁまぁ、とりあえず魔力の拡散はリセットしましたし全部作り終えたらどうですか?」


特に悪びれることも無くウェシルは彼女へそう言う。

彼女はそれにムッと頬を膨らませ怒るが、それも華麗にスルーすると、ため息を付きながら話を切り替える。


「それもそうですね、それじゃ…ってまだお互い名前も名乗ってなかったですね」

「私はテトラって言います一応中級アルケミストです」


「俺はウェシル、俺はオールマター…って言ってもわかりづらいか、錬金術師と鍛冶師を両方やってる」


「それじゃウェシルさん、ここで座ってゆっくりしててください、私は一仕事終わらせてきます」


「あ、おう、がんばってな」


テトラと名乗った彼女は来ている服の袖をまくりあげ丸釜の前へと立ち魔法陣へと魔力を込めはじめる。


彼女は中級アルケミストであるため魔力を込めてからの魔法陣を維持する時間が多くなるため、その様子をのんびりと椅子に座って眺める。


俺だったら一瞬で終わるんだし手伝うべきなのかなぁ?


とは言っても、テトラは真剣な顔をして魔法陣に向かって魔力を込め続けている、せっかく頑張っているのにそれを一瞬で終わらせてしまうのは少し可愛そうな気もする。


だがウェシルがほぼ一瞬で作ったのに対し、彼女は1分で1個というペースである、魔法陣の維持をするのには魔力を常に消費するため、中級アルケミストの彼女では効率も良くないし、魔力の消費も多くなるだろう。


「よかったら俺も手伝いましょうか?何にもせずに待ってるのもあれですし」


急に声をかけられたテトラは一瞬こっちを向き迷っていたがすぐに魔法陣のほうを向く。


「いえいえ、これは私の仕事ですし自分で片付けますよ」


そういいテトラはまた魔法陣へ魔力を込め始める、だが彼女は4つ目のポーションを作り終えると同時に彼女の体が突然よろめき倒れそうになる。


「おっおい!?」


それを椅子から飛び出し受け止めると彼女の顔色が悪くなっていることに気づく。

おそらく魔力の使い過ぎなのだろう、しばらく安静にしてれば魔力は回復するはずだ。


「すこし魔力を使いすぎました…大丈夫です…いつものことですから」


「いつもって、魔力管理はしっかりしないとだめだぞ?」


気分が悪そうな彼女になぜか親のように注意してしまった。


「あぅ、いつも大丈夫大丈夫ってやってたらいつの間にかふらふら―ってなるんですよ」


出会った時から感じていたが、彼女はかなり天然のようだ。

多分だけどこの世界の魔力っていうのは血流みたいなものなのだろうし、それを管理できないのって結構危ないんじゃないのか?生命の危機に気づかないほどの天然ってどんなだよ…


「はぁ……しばらく安静にしていてください、残りは私が作っておきますから」


彼女に肩を貸し椅子へ座らせると、自分は丸釜の前へと立つ。


「そんな、いいですよ!私の仕事ですから!」


後ろから彼女はそういうが、さすがに自分より若い女の子をこのまま働かせるというのは男として許せない。


「無理をしてやる仕事っていうのはやあればやるほど効率は落ちるものです、一度落ち着いてゆっくり休まないと過労死しますよ?」


これは元社畜であった黒井 誠からの体験談からだ。

自分が新入社員で入りたてほやほやだったころ、教育係として配属された先輩と一緒にいろいろな仕事をやらされていた。その先輩は自分の仕事と新入社員である私の面倒を見るという重労働を課せられ、ついには過労死してしまった。

そんなこともあって、うちの会社ではそれ以降多少残業や役割分担などが改善されたが、それでも社畜と呼ぶに十分なほど重労働の毎日で先輩の過労死は世間体を気にした少しの配慮だということに気が付いた。新入社員を面倒みよく指導してくれた先輩の死は今も深く自分の心の中に残っている。


働きすぎで死ぬのは本当にバカなことだと思う。



「ウェ、ウェシルさん?」


は!しまった!ついよくないことを思い出していたせいで顔が暗くなっていた。


「まぁ、今日のところは安静にしといてくださいね」


振り向きながらそう言うと、テトラはしぶしぶといった感じで「お願いします」と頭を下げた。


「それで、あと何個作ればいいんですか?」


「えぇっと、今作り終わったのが5個だからあと10個ですね」


4個でふらついてたのにあと10個もあったのか、こりゃ結構ブラックな仕事だな、ファンタジー感丸つぶれじゃないか。


あ、そういえばインベントリーの中にポーション入ってなかったっけ?

そう思いインベントリーをを開きアイテム欄の中を探すが、検索して出てくるのは【ハイポーション】や【エクスポーション】【世界樹の聖水】といった上位アイテムばかりだった。


はぁ、そうだそういえば中位アイテムなどもっていてもインベントリ圧迫するからって初心者に配布してたっけか。


となるとポーションを作るしかないのか…幸いポーションを作るための材料だけは大量に持っていたため作ろうと思えばいくらでも作れるな。


「はぁ、一個一個作るのもめんどいな一気に作るか【簡易錬金術】【多重錬成】」


左手をテーブルの上へと向けスキルを同時に発動する。

するとテーブルの上に丸釜の下に書かれている魔法陣が縮小した同じものが同時にいくつも現れる、上級錬金術である【簡易錬金術】でポーションを作る魔法陣を圧縮し、極級錬金術である【多重錬成】でそれを大量に作り出したのだ。


魔法陣の中へインベントリーのアイテムを消費し、ポーション10個を一気に作り上げた。


作り上げたポーションを横一列に並べ、15個あることを確認するとテトラへと顔を向ける、するとテトラはテーブルの上に並べられた唖然とした表情で見ていた。


「す、すごい…あの量を一瞬で作っちゃった……」


目を輝かせ、感動をあらわにしながら作られたポーションを注視する。

テーブルのポーションを手に取りそれが本物であるか確かめたあと、それをそっと地面に置く。


ウェシルは少しそれが懐かしく感じた、ウェシルがまだ『Ω‐オメガ‐』のゲームを始めたばかりのころはいろいろな魔法や剣劇をみてああいう風に「すごい」と言っていた。

始めたばかりのころはウェシルも戦闘職にあこがれていたのだが、ひねくれもののウェシルは「なるべくマイナー職業を極めたい」とさまざまな生産職の育成を始めたのだ。


初めて上級の錬金術をした時の派手なエフェクトでの大規模錬金術とかあんなような感動をしたなぁ~


「ふぅ、それじゃ休憩にしませんか?」


「あ、あの、ありがとうございます!」


テトラは、さっきまでとは違い自分のことを尊敬したような目で礼を言ってくる。

人に感謝されえるっていうのは一人暮らしのみとしては何とも言えないむずがゆさというものを感じる、だが、それでも褒められることを悪くは感じない。


「どういたしまして、っていえばいいのかな?これは…ははは……」


慣れない誉め言葉にどう返してよいかというのもいまいちよくわからなく、苦笑いをしてしまう。


「それじゃ、お茶を用意してきますね!そこに座って待っててください!」


さっきまで魔力の使い過ぎでぐったりしていた彼女は今はもうものすごく元気な表情を見している。

そんな姿を見ていると、あれで疲れないのかなぁ~っと思ってしまったりする。



そうして、この後この二人はのんびりと話し合いを続けるのだった。



錬金術師というのはアルケミストと同じ意味ですが、錬金術師というのは見習い、下級、中級、上級、超級、極級、神位というアルケミストのランクを全部まとめて表現するときに使います。○○アルケミストというのはそれを具体表現にした形です。


というかなんかあれだなー、1話に進むストーリーのテンポが遅いよなぁ~って最近思います、つぎからもっとストレスなく読めるようにしたいな(´・ω・`)

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