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【5話】異世界転生初日

【隠れ蓑の店(ウェシルの店)】


 薄暗いくらいくらいの照明が光る部屋。

ここはウェシルの店の中にある魔術道具を作るための部屋、今ウェシルはそこにいた。



(えぇっと?レシピ通りなら素材は足りてるな、こんなの作ることないって思ってたんだがな、いらなそうなのでも覚えてみるもんだな)


 机の上に展開された魔法陣の中に『言語の書』『転換の虚眼』というアイテムを机の上に置く、すると魔法陣に吸い込まれるようにアイテムが沈んでゆき魔法陣に変化が起きる。


 アイテムが沈み終わると魔法陣の青から赤へと色が変わり、赤に変わった魔法陣は、円の形にも変化が起こる。

円に亀裂が走り、円が4分割される。


4分割された円はその場で回転を始め、その魔法陣はまるで花の蕾のような形になる。


赤い蕾ができたかと思えば、それはすぐに花へと変わり花の中央には新たなアイテムが現れる。


 見た目としては、少し古びた黒塗りの本という感じだ。

だがその本の表紙には題名も何もなく、ただ魔法陣が刻まれているのがこれを魔法道具とする証拠だろう。


『深き智謀の書』

消費することで未知の言語を習得することができる、効果は永続する。


 その効果を確認すると、それを手に取り本を発動させる。

すると本が開き、光を放ち始める。


  本の光の中から魔法文字が浮かび上がり、中に浮かび上がる。

 浮かび上がった文字はふわふわと浮かぶとそれが帯のように列を作る、ウェシルの周りを魔法文字の帯が囲み、ゆっくりと消えてゆく。


これでこのアイテムの演出は終了だ、問題はこれで本当にこの世界の文字が読めるのかということだ。


「よし、準備はできたし合成屋を探しに行こうかな」


 そう、このアイテムを作ったのはこの世界の文字が読めないのが不便というのもあるが、マサキの目標としてのこの街の住人たちの強さ、レベルを確認するためなのだ。


(鍛冶職はあんまりだったけどアルケミストは元の世界よりも進んでるってこともあるかもだしな)


そう思いながら店の扉を開けると、外は真っ暗、つまり夜だ。


「ん!まじか、やっぱりアルケミーしてると時間の進みが早いなぁ」


 アイテムを作るのにはそれなりの時間が必要だ、特に上級以上では魔法陣の制御など忙しいため放置することもできないのだ。


といってもゲーム内ではそこらへんは設定上だけであって実際には数秒で出来上がる。



(昼間はあんまり気にならなかったけど夜になってくるとだいぶ冷え込んでくるな、時期にして秋と冬の間くらいじゃないだろうか?というか現実離れした世界で温度を感じるってのはなんか新鮮な気分になるな…)


扉を開けて突っ立っていると、肌寒いくらいの風があたり我に帰る。


ガチャン…


寒気を感じゆっくりと扉を閉めると、ひゅうひゅうと風がドアを叩く音が鳴る。


(さて、これからどうするか……)


 本来なら、これから街に出向きちゃんと魔法道具が発動しているかを確認し、合成屋を探そうとしていたのだが暗くなってからではなれない街での探索は困難だろう。

それにこの街のチンピラに絡まれるのもめんどうというのもある。


だったら何をするか……


「武器でも作るか?」


 この世界に転移してから未だに、武器を作っていない。

 作ってないということに問題があるわけではない、ただ気になったのはこの世界でちゃんと自分のスキルやバフがつけれるかどうかということだ。

 もしかするとこの世界では武器に付与効果をつけれない可能性だって存在する、だとすればこの先大変困ることになるだろう。


 アルケミースキルはきちんと発動したことから、特に問題はないとは思うが、ここは新天地、新世界なのだ。

何事も慎重に動かなければいけない、あまり図に乗るのもいけない。


まだまだいろんなことを検証して見ないと、もしもの時に困るのは自分なのだ。


そう心に置いて、自分の店の作業場へと向かう。


 金属の扉を開き入ったのは熱気立ち込める煉瓦造りの部屋だ。

さっき居た魔法道具を作るための作業部屋、今度は鍛治をするための作業部屋だ。


 その壁際にある竃と金床に向かい、金床のそばにあった椅子へと腰をかけ、インベントリの中から折れた直剣と剣先を取り出す、昼間に鍛冶屋で買ったものだ。

それを金床の上に置くと、近くにある金槌のなかでも少し特殊な形をした金槌を取り出す。


その金槌の名は『分解の金槌』

効果はその名の通り分解が出来るという能力だ。


『Ω-オメガ』では、壊れた装備というのは修理か分解が出来る。

修理をすれば、同じ武器をまた使える。

分解をすれば、新しい武器を作るための素材を得られる。


金床に置いてある剣に『分解の金槌』を叩きつける。

叩かれた剣は、武器を作るときのように光の粒子となり金床の中心に集まる。


集まった光はインゴット状の形になり、ウェシルはそれを慣れたように新しく取り出した金槌、『形成の金槌(神髄)』で叩く。


カンッカンッカンッカンッ……


何度も叩き、形を整える。

力加減は強すぎず弱すぎず、その素材にぴったりな力加減で保ちその素材を最高の状態に鍛え上げる。


本来ならばここで一度竈の熱に浸し何度も鍛え直すのだが、それは今使っている金床の効果により必要なくなっている。


『玄人の虚火を持つ金床』

効果:作り出したアイテムに着く付与効果全てに+40する。

一定以下のレアリティの金属系素材の加熱の必要をなくす。

鍛治職のレベルが高い程熟練度の上がりが低くなる替わりに武器の耐久値を上げることができる。


 少し癖のある魔法道具だが、その効果はウェシルの持っている金床のなかでは中の上と言ったところだがこのくらいのアイテムを作るのにはオーバーといってもいい性能だ。


そして、何度も金槌で叩かれたインゴットは剣の形となる。

剣の形になったものをトングで掴みすぐさま冷水に打ち込む。


冷水が熱された金属にあたりジュウっと音を立て水が跳ねる。

 急激に冷やされた金属は硬くなるというのは、現実世界でも古きに渡って伝えられている武器を強くするための先人の知恵だ。


ジュウジュウと急激に冷やされた金属がなる音が収まったころを見計らい冷水から剣を引き抜く。


「ふぅ…」


この一連の動作が剣を作るための動作だ。

 本来ゲームではこのほとんどが省かれているため、ウェシルにわかるはずもないのだが、なぜか今まで何度もやってきたかのように感覚でわかるのだ。


 自ら引き抜いた剣からは水蒸気が未だに上がっているが、その剣についている水を布で拭うことでそれを終わらせる。


そして、剣の刀身の部分に合う持ち手部分を付ける。


これで一本の剣ができた。

見た目だけ見れば素晴らしい出来栄えだ、だが問題なのはこの武器に付与効果がついているかどうかだ。


「製作者権限、武器ステータス表示」


そう言うと武器の上にメニュー画面にも似た空中スクリーンが現れる。


_____________


名称・鉄の剣

素材・鉄

製作者・ウェシル

制作日・?$€'?!


ATK・15(+304)(+60)

MATK・0(+304)(+60)

DF・8(+304)(+60)

MDF・0(+304)(+60)

SP・6(+304)(+60)


追加効果・無し


備考・レベルによる追加パラメーター(+304)

   制作道具による補正(+60)

_____________


「うっし!これで安心っと!」


 ステータス表示に追加パラメーターがあることに思わずガッツポーズをするウェシル。

とりあえずの検証は成功、つまりこの先の心配もだいぶ軽減されたと言うものだ。


「ふぁあ〜……」


かなりの重労働と一安心が加わり、急な睡魔がウェシルのまぶたにのしかかる。


(うぅむ……今日のところはもう寝よう、疲れたし、あ、でもまだ風呂に、ってまぁいいか……)


とりあえず寝室に向かおうとフラフラと眠いまぶたをこすり歩き始める。



作業場から少し離れた部屋の前に着くとその扉を開く。


寝室というのはゲーム内では必要ないのだが、一応作っておいた寝室がこんな形で役に立つとは思いもしなかった。


内装にはそこまでこだわってないため、質素な寝室に入るとベットに体を預ける。




「あぁ……明日………仕事はないのか…………………今日は……ゆっくり…………眠れる……………」


そう呟くと、ウェシルはゆっくりとその意識を閉ざしてゆく。


こうして、ウェシルの異世界転生の1日目が終わったのだった。

遅れてしまい申し訳無い!


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