【4話】熾天使の会議
ウェシルは、自分の店の天井を仰ぎながら、この世界での自分の立場というものを理解したと感じていた。
(おっと落ち着かないと、こう言う時は冷静にならなきゃいかんな)
自分の中ではまだ少し興奮しているが、いったん冷静になる。
なぜ、自分の立場を理解したのかというと、今机の上へインベントリから取り出した剣がある、それが理由だ。
(あのおっさんの言うことが正しければ、この剣は、この性能でこの世界では中の上といったところで少なくとも王都で売られている武具と同じ性能か)
そう思うと机の上に置いてある剣を持ち、手近に飾っある自分で作った剣を手に取る。
《畏怖の剣》
状態異常に特化した武器であり、基本ATKはウェシルの持っているものの中では最低のものだ。
そしてそれを軽く買ってきた鉄の剣へと当てる。
キン!
すると短い金属音がなり、鉄の剣が半端からポキリと折れ地面に落ちる。
(やっぱり低級スミスのものだと付与ステータスの差でポッキリしちゃうよね)
レベルの違う鍛治師が同じ武器を作ったする、すると鍛治職の総合レベルによって付与される追加パラメーターというものが生まれ、レベルの低い鍛治師の武器は高い人のより性能が下がるのだ。
そして、ある程度の性能差が開くと、隠しステータスである『破損値』という相手の武器の耐久値をどれだけ削るかを決めるものが、相手の耐久値よりも上回った場合に起こる『破壊』ということが起こる。
だが、プレイヤー
破損値に特化した武器でなければほとんど起こることのないことだ。
そして今、ポッキリと折れた鉄の剣に起きたことが『破壊』だ。
(ふっ、モロヘイヤよりモロいな!)
折れた剣先を拾い上げ、その本体と一緒にインベントリへ入れる。
「さてと!今度は合成屋でも行くか!あ、でもその前にっと」
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【天界・熾天使世界秩序統制部】
真っ暗な空間にスポットライトのように一箇所に光が集まる。
すると、その場所に巨大なテーブルが中央に現れ、同時に椅子も出現する。その数計8席。
そして、その椅子の上にどこからともなく光の粒子が集まってくる。
光の粒子は一定まで集まるとそれは突然、人の形へと変化する。
それがテーブルの周りにある椅子全てで同時に起こる。
光の粒は人の形になり完全に形が整うと、その光は無くなり本物の人(?)が現れる。
そして、現れた人達の中の一人が、現れて間も置かず口を開く
「……それで?今回やってきた転生者はどういった奴だ?」
誰にというという問う相手の指定はないが、これは知っているものがいれば話せという意思表示でもある。
その問いに答えるように別の席に座っている男が口を開く
「現在、わかってる点は2つある」
その言葉に口を開いた男へと視線が集まる。
「一つは今回のやつが鍛冶職であるという点だ」
「ほう、ならば今回はこの世界への干渉は必要なさそうじゃな」
最初に口を開いた男の反対側の席の老人がヒゲをいじりながら口を挟む。
その発言に、口を挟まれた男はあからさまに老人へ睨みを効かせる。
「いえ、それは軽率ですよ」
「これが二つ目なのですが、今回の転生者はレベルが少なくとも100以上あるということです」
「100以上っだと?何を根拠にそんなことを?」
老人は信じられないような顔をしながらそう言う。
「これはまだ確定ではないのですが、少なくとも前回の転生者より装備が良いというのは確かなことです、それだけでも十分警戒に当たるかと」
そういうと、老人は表情を少し和らげ逆に挑発的な笑みを浮かべる。
「はぁ……全く、前回の転生者が少しお主に傷を付けたくらいでエラく臆病になったのぅ」
その発言に、若い方の男は眉をひそめる。
「ほざけ、お前はあの戦いには居なかったであろう?」
若い方の男はひたいにしわを作りながら、今度は逆に挑発をする。
完全に張り詰めた空気になった空間の中に起こる。
しかし、それを止めるものはいない。
この中で今喧嘩になっている二人はこの中では一,二の権力を持つのだ。
「ふん、わしはあの時龍神様との会談があったのじゃ、如何に不届きものが天界に踏み込もうと、龍神様との面会を外せばお主もどうなるかわかるじゃろ?」
「それはわかってるさ、だからこそ!あの時その場にいなかったあなたにはその話題について触れる権利はないと思うのだが?」
そういうと、老人はヒゲをいじりながらバチの悪そうな顔をする。
「ふむ、そうじゃな、確かに悪かったわい」
「……しかし、今回の転生者は鍛治職なのだろう?であれば際してこちらの脅威になるとは思えんのじゃが?」
「人間という生き物は自分が他者より強いとわかると図に乗る生き物だ、そして、その図に乗った時に自分より強そうな奴がいたらそれを叩くのが人間というものだ」
「確かにのう……それならば先に摘んでおくというのはどうじゃ?」
「それは無理だな、我々は下界に干渉できないであろう」
「うむぅ……ならばしばらくは様子見といったところか?」
「そうだな、それがいいだろう」
言い合いが終わると、老人が目配せし意義がないかを問う。
そして、意義がないことを確認すると椅子に座っているもの達が順々に光の粒に包まれ消えてゆく。
そして、8つの椅子から人が消えるとそのテーブルは消滅し、光も途絶え、虚無が空間を包みこむ。
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