【3話】街の鍛冶屋
ウェシルは、あれから外に出て街を歩き回っていた。
そしてわかったことが三つあった。
一つは確認したというべきだがやはりこの場所が異世界、少なくとも現実世界でも『Ω-オメガ-』でもないということはわかった。
そして、ここは俺が今いる国の中でもかなりの辺境の街らしい
二つ目は、この世界には魔法が存在し、この世界の言語は同じようだが、文字は日本語ではないという事だ。
三つめ、この街の住人のレベルは低いということだ。
街を出歩いている際にチンピラに絡まれたのだが、近接の能力などほとんど取っていないはずのウェシルですら弱く思える程行動が鈍く、遅かった。
自分より強くないというのはいいことなのだが、オメガ内での村人NPCよりかなり弱いことにはさすがに驚いた。
(まぁ、あれはちょっと武装した平民みたいなもんだからな、弱いのは当たり前か)
そうわいっているが逆にこの世界の住人が自分に比べてとてつもなく強いということないということがわかり、少し安心しているからこその言葉だ。
そうしてウロウロ歩いていると、とある看板を見つけ足を止める。
看板の文字は分からないものの、その隣に書いてある金床と金槌を見ればそこが何なのかは予想がつく。
初めて来た街を歩く鍛治職人が最初に気になることと言えば、その街の鍛冶屋の腕前なのだ。
まぁ、ウェシルは鍛治職人というわけでもないのだが。
「いらっしゃい!何の用だい?」
入ると同時に渋めのおっさんの声がお出迎えされる。
そして、少し奥にあるカウンターの扉からおじさんが出て来た。
おっさんはずんぐりむっくりとした職人体型で頭の耳のとんがり具合からドワーフに見える。
しかしドワーフ特有の小ささはないため、違う種族のようにも見える。
(あれは……ドワーフ?それともエルフか?いやあの肌質からしてドワーフなんだろうけど……亜種的なやつか?どちらにせよ見たことないなぁ)
そのドワーフは、扉を閉めるとカウンターに置いてある椅子に腰掛けこちらを見ている。
見たことのない種族だったため、少し観察しているとこちらへと詰め寄って来た。
「なんだいお客さん、そんなに俺を見つめて、惚れたか?でも俺にはそういう趣味はないんでなわるいな!」
「いや違いますよ!?そういう絶対趣味はありません!ただ聞きたいことがあってですね」
「なんだ?ちなみに俺はもう結婚してるぞ?」
「いやだから違いますって!あのですね、えっと、あなたの種族はなんというんですか?」
「ん?なんでそんな知れたことを……ってあぁ、よそ者なのかアンタ」
「えぇ、まぁそうです」
「なるほどね、俺はこの街じゃ少し有名でね、知らない奴の方が少ないんだ」
自慢げに腕を組みながら顔にニヤリと笑みを浮かべている。
おっさん顔に浮かべられた笑みは顔面凶器と言うべきものだ。
「おっとそうだった、俺の種族はだな……」
そう言いかけると、おっさんは腕を組むとうーむと唸り始める。
「ん?どうかしましたか?」
「いや、俺の種族ってなんていうんだろうなって思ってな」
「え?自分の種族がわからないんですか!?」
「わかんねぇわけじゃねえよ!ただ俺、ハーフだからな、人間とドワーフとの」
「なるへそ、だから困ってたんですか…にしても人間とドワーフのハーフですか……」
(『Ω-オメガ-』内にハーフ種なんていうのはまだ確認されてないはず、つまりこの世界にはオメガには無い未知のものもあるということか、これは気をつけなくちゃな)
そう考え込んでいるとなぜかおっさんドワーフは苦笑いしながらこちらを見ていた。
「珍しいか?それともハーフは嫌いか?」
珍しいかと聞いてくる以上、この人のようなハーフは少ないのであろう、そのことに少しだけ安心する。
「少し珍しいと思っただけだよ、それより種族名じゃなくて名前の方はなんていうんだ?」
「お、そういえばまだ名前も言ってなかったんだな」
そういうと腕を組みながらスゥっと息を吸う。
「俺の名はグリム!名工の父の血を受け継いだ鍛治職人だ!…んであんたは?」
名工を受け継いだ……その言葉に興味が湧きピクリと眉を動かす。
グリムと名乗った男はウェシルへ好印象を持たれようと元気よく自己紹介をしたつもりなのだがあまりウケが良くなかったことに少しガッカリする。
「俺の名前はウェシルだ、よろしく」
ウェシルは名工の……という言葉に若干のライバル心、というより興味がが湧き、そんなことを感じず何事もなかったかのように手を差し出し握手をしようとする。
手を差し出すと一瞬戸惑ったがグリムはすぐに理解したようで手を握り返して来る。
(あれ?握手の文化がないのか?異世界(仮)だし色々と常識の違いもあるのかな)
握手を終えるとグリムはカウンターへと行き椅子へとどっすりと座る。
「見たいもんがあったら見て行きな、買うんだったら持ってきな」
「はい、ありがとうございます」
言われた通り、店の中の剣や防具を見て回った。
この街で有名ということもあって期待していたのだが、何個か独特な形で見たことのないものはあるものの、大抵の装備は低純度な鉄で作られており鍛冶師としてのレベルもおそらく20あるかどうかってところの、オメガであれば下級鍛治師をギリギリ取れるくらいだった。
何か工夫があるのかと思い、剣にエンチャントがついていないかとかルーンが刻まれてないかなど調べて見たが特にない、隠しスキルで軽量化がついているのかと思い剣を振って見ても普通に重いだけの鉄の剣だ。
(この街で有名な鍛冶屋って言ってたから期待したものの、こんなものなのか?幾ら何でもコレは………ってまてよ?辺境だからこれくらいが普通ってこともあるのか?)
「なぁおっちゃん」
「なんだ?なんか欲しいものでも見つかったか?」
「いや、そうじゃないんだが少し質問していいか?」
「兄ちゃんよ、もの売ってる奴にそういう質問するときは物を買ってからいうのが礼儀だぜ?」
「じゃぁ、この質問に答えてくれたら買うっていうのはどうだ?」
「うむむ、質問の内容にもよるが答えてやる」
「この鍛冶屋って王都で売られてるものとどっちが品質がいいんだ?」
「なんだ!そんなことか!んなもんうちの剣の方が王都の下手な鍛冶屋よりはうまいだろうが、もっと高みの奴らも王都には集まってるからなぁ、中の上くらいだな」
「え、それで……」
思わず口に出してしまったことが口に出てしまったことに慌て、顔色を確認するが、どうやら聞こえていなかったようで「なんかいったか?」と言った顔でこちらを見てくる。
「そうか、なるほど、これでか……」
「俺の剣がどうかしたのかー?」
グリムは、ウェシルが剣を見ながらブツブツとしゃべっているのが気になりカウンターから声をかける。
「いや、なんでもない!ちょっと剣を見て感じたものがあってな……あ、そうだ答えてくれお礼に、この剣はちゃんと買い取らせてもらういます、ちなみにいくらです?」
「おいおい、値札見ろよ」
そう言われ、剣がかけてあった箱の中を見ると5000と書かれた数字があった。
「まぁ、それくらいなら……」
カウンターまで歩いていき、お金を払う。
コレはここまでくるまでにわかったことなのだが、この世界のお金がオメガの世界のお金と一緒なのだ。これはありがたい。
「おっしゃ!まいどあり!」
「どうもおっちゃん、んじゃ、俺はちょっと今から家に帰りますわ」
そういうと、買った剣を布で包み、インベントリの中へとしまう。
そして、すぐさま鍛冶屋の中から外へと出る。
「おうおう!達者でなー」
後ろからおっさんの声が聞こえる。
出てから数分、自分の家の前へとつく、そして家のドアをゆっくりと閉めると、そのまま体をしゃがませ、プルプルと震える。
そして、急に勢いよく天井を見上げ自分の手を天井へと突き出す、そして____
「俺の時代キタァアアアアアアアアアアア!」
誰もいない天井へ向かってそう叫ぶのであった。
何度も更新スルスル詐欺してすいません(´・ω・`)
定期登校にしたかったので少し調整いれました。お許しください!_:(´ཀ`」 ∠):
そして、最後の表現については次の話で補足します、