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帰宅途中の異世界遊戯  作者: おいも
異世界編
3/175

2プロローグ2


【SoulAlter】開発室喫煙スペース


 二人の男がタバコを吸わずに煙を燻らせている。室内にはラフな格好をした二人が備え付けれらたベンチに気だるげに座っている。二人の内一人がアロハシャツに半ズボンのラフなスタイルで、力の抜けた体で背もたれに寄りかかっている。


 もう片方はカジュアルなシャツにジーパンのスタイルだが、清潔な印象を与える50代位の男性で、前のめりに座りながら肘を膝の上に乗せ、タバコの燻ぶって漂う煙を眺めていた。

 普段とは違った神妙な雰囲気の中、カジュアルな男性が会話を切り出した。


「よしもっちゃん…リリース1週間前だよ…」

「加賀さん…」

「ん?どしたのよしもっちゃん」

「どしたのじゃないですよ…β版のフィードバックを終える前ならともかく、マスター(完成品)も出しちゃったのに、VRにあんな仕様?って言っていいかわからないですけど、あんなことがあるなんて聞いてないですよ…」


 加賀と呼ばれているカジュアルな印象な男に対して、見た目に反して深刻そうなよしもっちゃんと呼ばれたアロハシャツの男が嘆いていた。


「ん~俺はそれより、開発期間以前の問題だと思うぞ。でも言いたいことはわかる、β版当たりなら発売止められたし…でもさ、今回のこれは俺らの問題じゃないんじゃないか?」

「いやいや、わかってて言わないでくださいよ。こんなもん開発しといて知りませんでしたってのは通らないでしょ!」

「だよなぁ…こんなことになって俺怖いよ」

「なんでそんな余裕あるんですか?ディレクターだからですか!?責任とか言うレベルじゃないですけど、俺は責任取れませんよ!俺、後のこと知りませんからね!」

「出た!俺は君の「俺知りませんからね!」って言ってなんとかしてきた所をいつも見てきた。メインプログラマー兼プログラマーリーダーの初仕事として最後に残ったこの爆弾…よしもっちゃんはどう対応するのか!」

「いやいや、そんな付き合い長くないでしょ!人事部の評価でしょそれ!流石に今回は人の手でどうにかできるレベルじゃないですよ…そもそも!今回はテスターの当たりから、おかしいと思ってたんですよ?なんでテスター全員がスポンサーの関係者なんですか!普通こういうのは一般的なユーザーを募集するものでしょう!」

「あれ?よしもっちゃん気づいたのそこから?俺は宣伝部が動いてない時点で異変を察知して、行方不明者が出た当たりから確信持ったぜ?」

「…きっと、その時聞いても何も変わらなかったと思うんで、何も言わないでください。早く言えよとか突っ込みたくないし、イラッとくるんで。と言うか、そんなレベルの問題でもないですし」


 加賀と吉本の二人は、長年仲の良い先輩後輩の様な掛け合いをしていた。実際は開発期間の途中で合流した1年の付き合いなのだが、そこは勝手知ったるクリエイター同士だ。


「ぶっちゃけあいつが居なくなったのは、未だに信じられないですし、幻覚見てるんじゃないかと今でも疑ってます」

「でも俺も見てたからなぁ」

「そうですよ!前任者が行方不明な理由もこれで納得出来ましたよ…いや全然納得出来ないですけど」

「ってかよしもっちゃん」

「はい?」

「一服してないで早いところ110番しようか」

「こんなこと誰も信じませんよ。それに…無駄だと思いますけどね」

「その心は?」


 吉本が無言で、喫煙スペースの外へ指を向けると、ドアの窓からパリッとスーツを着こなし、前ボタンを開け、耳に無線のイヤホンが伸びているSP風の男が数人見えた。

 スーツを着こなしたSP風の男に向かって加賀が尋ねる。


「ん?なんだあんた達?どこから入ってきた?」


 案内をしてきたと思しき、スタッフがしきりに頭を下げている。


「ディレクターの加賀さんとプログラマーの吉本さんですね?私は【SoulAlterソウルオルター】のスポンサーの警備担当を担当しています。今回来たのは、先ほど起こった現象についてお話を伺いたいためです。ご同行願いたいのですが?」


 なぜ先ほどの会話の内容と何が起こったかを把握しているのかとか、ガタイの良い強面の兄ちゃん達が喫煙室のドアの前に並んでいるのかはこの際置いておき、謎スポンサーの警備を担当と思しき相手にすぐさま加賀が切り返す。


「あぁ~っと…次の会議の時間が押してるね!よしもっちゃん、後は頼んだよ!」


 プロデューサーですら知らないスポンサーの大元が来たため、もはや加賀の中には胡散臭さしか無い。

 そのため加賀がスポンサーと聞いた瞬間撤退を決めていたため、すぐに会議で使用しているiPad片手に、タバコを消さずに席を立とうとしたが。


「申し訳ありませんが、会議は諦めてください」

「加賀さんこれ形だけの強制連行っぽいですよ…」

「だろうな、俺警察嫌いだったけど初めて頼りたくなったよ」


 と、呟きながら加賀が消さずにいたタバコの火を消した。


 そう言い残し、二人は警備担当と名乗る男達に連れられていく。まるで警護対象者であるかのように。

 連行される理由は定かではない。ただ、これから諦が遊ぼうとしている【SoulAlter】の開発側で起こった問題には、行方不明者が出るレベルで何かがあるらしい。と言うのが伺えた。

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