154想定外の再会
「明日まで考えさせてくれないか?」
脱獄の提案をされた時、咄嗟にそう言い返そうになってアキラは喉まで出かかった言葉を呑み込む。
(何を考えてんだ……ドエルは覚悟を決めたから俺に話を持ちかけたんだ。もしここで考えさせてくれなんて言えばどうなる?)
アキラは同じチームだとしても真の意味では第三者的立場であることには変わりない。例え「待ってくれ」の提案を了承したとしても、必ず先延ばしにしたという形はどうであれ尾を引く。
「どうだ?」
(今すぐ決めろってのか? もし脱獄が失敗すれば間違いなく次のチャンスはほぼ無くなる。それどころか即処刑なんてことも有り得る)
先程脅威度不明のサイクロプス相手にハンデを背負って倒したばかりだ。この時の決断は今でも間違っていないと確信出来ている。だが今回の判断材料が戦いの時と違い、不確かなドエルの発言のみだ。
「そうだな……計画は聞かせてもらえないのか?」
「はは、わかってるだろ?」
「聞いてみただけだ」
少しでも情報を得ようとするが、まだ了承したわけでもないアキラに渡せる物など有りはしない。当たり前と言えば当たり前の回答だった。
(どうする? あまり時間は…………時間、か)
「決まったか?」
「ああ」
アキラの雰囲気が変わったのを受けてつい答えを急かす。急かしたのはドエル自身だが、彼のこめかみには暑さだけではなく、別種の汗がじんわりと頬を伝って顎へと垂れてきた。
「なら答えを聞かせてくれ」
「その前に、1つ聞かせてくれないか?」
「なんだ?」
「脱獄はここに居る奴ら全員納得しての計画か?」
「……ロビタリア以外、だな」
「ロビタリアって確か俺の手を治療してくれた神父、だったか?」
「そうだ」
「以外、でもないか? 神父と言えど規律を無視なんかしないか、さっきの実況の言葉を聞くなら犯した罪も本当かどうか怪しいしな」
「あいつはペドなんて物とは無縁の存在だ。強いて言うなら、ここに居る奴らは本当の意味で罪を犯して死刑囚になった奴は殆どいないぜ?」
「そうなのか?」
「あぁ、大体は――」
ドエルの話をまとめると、今この牢屋に居る全員が先の罪状の罪を着せられるか嵌められたとのことだ。政治的な理由が主なだけに、発散出来ないやるせなさを感じる。
「――正直こんな所、腐った奴らが権力を振り回して金儲けのシステムを確立してるだけだぜ? まぁ犯罪を犯してない奴が居ない訳じゃ無いが、少なくともこの房は死刑になる罪を犯した奴なんて“居ない筈”なんだ」
「そうか」
全部が全部この話を鵜呑みにするわけにはいかない。それでも、自身の中で決めた選択の好材料には違いなかった。スッキリとしたアキラは両膝を付いて立ち上がる。
「ん? どこへ行く?」
「ちょっと腹ごなしに散歩をな」
「待て待て、返事を聞かせてくれ」
「あっ、ごめんごめん。話しに満足して答えた気になってた。じゃ改めて、俺も仲間に入れてくれ」
「……! あぁ、歓迎しよう!」
あまりにも自然だったため、若干事態を受け入れるのに即断を強いたドエルは喜色を含んだ声を上げ、立ち上がってアキラに握手を迫る。それに応えたアキラだった。
どこからか彼等を見る目に殺気立つ物が含まれているのだが、戦いも終わり、次が見え始め気を抜いていたためか、アキラはそれに気がつくことはなかった。
細かい話しは後で集まってすることになり外へ出る。牢の位置が3Fに変わっていたが、気にしないことにして他の死刑囚の呻き声が聞こえない位置へと移動する。腹ごなしと言うには若干手遅れではあるが、散歩しながらとある場所へと到着したアキラは刑務所と呼ぶにはシンプルすぎる作りに、改めて悪い意味で感心していた。
「外の景色が見えると思ったら、なんだよここ……」
中を自由に見学出来るため外壁を登って外を見ていた。流石にこのような場所でそんなことが許されるのかと疑問に思っていたが、それは景色を見れば解決する。
「外なのかどうなのかもわかんないってなんだよ……」
罪都の牢屋型のコロシアムの外は、本当に何も無い。青空や雲、地面の土や砂、海や湖、それらが何一つ無い。
(上には太陽みたいな丸っこいのがあるだけ……灰一色で気味悪いな。にしてもよくこの人達こんな所でじっとしてられるな)
アキラは横目に並んで瞑想でもしているかのように座禅している彼等の邪魔をしないようによじ登った所からテンポ良く飛び降りる。
「よっと……フゥ」
軽く一息吐くと自身が降りた壁を見上げ、改めて感じ入る。
(今更だけど数メートル位じゃそう苦労はしない……か。力は元の世界なんか目じゃない位出てるけどもしこの世界から帰ることが出来て、この力が本当に現実世界でも使えたらどうなる? って、それは今俺が考えることじゃないか、今はどうでもいいしそれどころじゃ無い。それはそれとして、装備もコレしかないしオルターも出せないから安心感ゼロなのはどうにかしたい。何かここを出るための手助けになるヒントってか情報は無いのか?)
改めて別の所へ見て回ろうと歩き出そうとしたその時だった。
「よぉ」
「ん?」
そこで声を掛けられたのは、どこかで見たことのあるドワーフだった。
「もしかしてと思ったらまさかだかんな」
「……」
アキラは無言で距離を取る。今は丸腰でありオルターは出せない。様子を見るためにも取り敢えず声を掛ける。
「…………久々?」
「言ってることは間違ってないかんな。でもオラからすれば、おめぇが生きてたのか? って感じだかんな?」
それは、いつしか貴族の息女であるクロエを護衛して王都アザストへと向かう途中で遭遇した相手、イドしか使えなかったアキラに対して、エゴを使ってきた斧のオルター使い。ドワーフのガンダだった。
「てっきりオラの一撃で消滅したと思ってたかんな。死んでないのには驚きだ、だどもどうやって生き延びたんだ?」
「その前に、お前もう俺を襲ったりしないのか?」
「必要ねぇだろ? それにここだとお仲間みたいなもんだかんな」
「だ、だよな」
場所が場所なだけにアキラも一応は察していたが、口頭で確認してしまう。身構えるのをやめてガンダに近づきつつ、取り敢えずは落ち着ける所へと場所を移して背もたれも無いベンチに並んで腰を掛ける。
「んで? おめぇどうやってオラの一撃から逃れたんだ?」
「何言ってんの? まず訂正させて貰うけど逃れてないからな? ふっつうに当たったからな? 腕は吹き飛ぶは意識飛びそうになるわ――」
その時の攻防や怪我、逃走について思い出したせいか愚痴のように語る。
「――ってなわけでお前がマップを使って調べてたら見つかってたって位綱渡りだったんだよ」
「へぇ~」
「なんだよその気の抜けた返事は」
「お前難しいこと考えて戦ってたんだなって思ってよぉ」
「そっちも気づいてただろうけど“あの時の”俺はエゴを使えなかったんだ。だったら出来ることをするしか無いだろ」
「だわなぁ~」
「本当はエゴの時間切れを狙ってぶちのめそうと思ったんだけど、一瞬の時間を稼ぐのが関の山……いやあれはただの幸運だった」
「確かになぁ、時間切れギリギリだったからこっちも本気出すしかなかったかんな。なら、今のオラは間違いなくおめぇには勝てねぇか」
「ん? あれから結構経ってるんだからどっちがどっちとか言えないだろ?」
「あぁ……そういや言ってなかったかんな」
間を置いてガンダは疲れたように溜息を吐く。
「オラはおめぇを殺したと思った後、少ししてずーっとここにぶち込まれてるかんな」
「は? どうして?」
「それな、そんじゃ次はこっちが聞かせるかんな」
「あぁ頼む」
「そういや覚えてるか? オラとおめぇで殺り合った時、どうしてまだ自分の国に居るのかって聞いたこと」
「……なんか言ってたような気もしなくも無い感じだな」
「それどっちなんだ? まぁいいや続けるかんな」
「おう」
不謹慎だが、この時のアキラは何があるのか期待に胸を膨らませていた。この世界に来て今まで殆どが生死を賭した戦いに一息吐く暇も無い移動、他のプレイヤーの事情は片手で数えるほどの量しか無い。こうしてプレイヤー同士で落ち着いて話したのも翠火達やリョウ位の物だ。
「オラは見ての通りドワーフを選んだかんな。んだから始まりは――」
オラがそもそもヒューマンの領域に来てた理由は簡単だぁ。クエストを受けたってだけさ。ストーリーがある程度進むとランダムに選ばれた国の☆4つ以上のクエストを1つ以上こなさにゃならん。その内容も国王からの勅命でギルドに発行されるかんな。
おめぇの……そういや名前なんてった? あぁ、アキラってのか? オラはガンダだ。ん、よろしく。
そんでよ、オラの受けたクエストはヒューマンの国で「ある貴族の困りごとを解決せよ!」ってクエストだったかんな。これが自分の国にどうして居るのかって質問の意味だ。まぁここは中立国だから関係ねぇかんな……んでな? 面倒そうなクエストだったんだども、それ以外☆4つ以上で受けられるクエストが無いって言うもんだからよ? 仕方なくな? 仕方なく受けた。んでその結果は見ての通りここに居る話しに繋がるかんな。
いやぁ~あん時はほんと貴族のやばさが際だったかんな……だって護衛なのに理由付けてお前を襲わせたの見たろ? あ、いいから早く続けろって? まぁ慌てんな、色々あってからそれは聞くも涙、語るも涙な展開だかんな。ハンケチ用意しとけぇ。
おめぇを倒したと思って一緒に居た嬢ちゃん探したらよ、アキラが言ったようにもぬけの空で誰も居ないわけだわな? そしたらフライスっつう依頼してきた貴族の下っ端がぶち切れてオラをクエスト失敗扱い……要するにクビにするって行ってきやがった訳よ。オラもエゴのせいで疲れ切ってて頭回んなくてなぁ。一刻も早くあの野郎の顔が見えない所に行きたくて仕方がなかったんだ。
初めて行くヒューマンの国はそりゃ行きも帰りも大変なんだよこれがよぉ? 種族毎の国境付近はタクリューもビークルも使えねぇしで、ドワーフとヒューマンは国の間で一番離れてっから長旅だったんだ。まぁ時間掛けてドワーフの国に帰り着いて、自棄になって帰ったことを後悔しながら酒飲んでたんだわ。
ん? 後どの位かだって? だから慌てんなって、もう最後だかんな。
そんでやり直そうと思ってギルド行ったらよ? フライスっつう奴のクエストは誘拐の偽装クエストで、フライス本人も行方知れずってことらしいんだわ。んでな、関係者になっちまったクエスト受注者のオラは捕まっちまったって訳だ。
「じゃぁあんたが罪都に居るのはただのとばっちりって訳か?」
「みたいだぁ。まぁギルド側もそれを知ってるらしいからよ、ここに居るのは形だけらしいかんな」
「形だけ?」
「おう、オラはランクも一番緩いAの牢屋に入ってる。ここのシステムを知ってればわかるだろう? ランクはアルファベット順でAに近い程、悪趣味なこの見世物の魔物の強さが緩くなる。Aはゴブリン程度の敵しか出ねぇから死ぬこともないってもんよ。それにそろそろ関係者を裁いたって体裁も落ち着くらしいから、オラは明日にはここを出るかんな」
「……そうか、でもそんな扱いなのにどうしてあんたは怒らない?」
ガンダからは自然に振る舞う余裕のような雰囲気すら感じる。もし自分が同じ立場だったらどんな感情を抱いていたかは想像に難くない。
「そだなぁ、そんなクエスト紹介したギルド側からも申し訳なさそうに謝罪してもらったし、担当した受付嬢も罰則受けたって聞いたかんな。ここでの生活は案外悪くなかったし、何より報酬も出るかんな」
「報酬?」
「あぁ、形だけって言ったろ? ここにはクエストを受けて来てんだ。まぁ期間は長かったが、調査ってぇ名目が付いてるかんな。罪人扱いはここに入る時以外、オラは受けてないんだ」
「そう、か……」
アキラは根本的にガンダの扱いが自分とは真逆な現実に落胆する。こんな現実を知らされるなら房の外に出なければ良かったとさえ思っていたが、そこでふと思い出す。
「……あれ? そういや、あんたさっき言ってたよな? 聞くも涙、語るも涙って」
「言ったな」
なんでもない風に顎髭を擦りながら笑うガンダに、アキラも力が抜ける。
「まぁいいや……」
「ははは! お、そういやアキラはどうしてこんなとこに居るんだ?」
「俺か? 俺も詳しくは知ったばかりなんだけどさ」
先程のコロシアムであった出来事をガンダに語って聞かせる。それを聞きながらガンダは頷いていたが、途中から険呑な雰囲気に変わり始めた。
「って感じだ。俺からしたら気がついたら覚えの無い罪を着せられて訳がわかんないうちに死刑判決で、サイクロプスって化け物と戦わされて全く納得がいかないんだけどな」
「んーオラが罪都に居る間になんか色々あったんだなぁ。んでアキラよぉ」
「なんだ?」
「素手でサイクロプスを殴り殺したってのは本当か?」
「当然だろ、じゃないと生きてないさ」
「オルターが使えないのもか?」
「あぁ……ガンダも使えないだろ?」
そう聞くとなんの気概も無しにいつか見たことのある斧のオルター、木製の柄で出来た見たことのある片刃のムスキを呼び出す。
「は? え?」
「こういっちゃなんだけどよ、やっぱおめぇは普通じゃねぇ」
「いや、なんでオルター普通に出せてんの? そっちの方が普通じゃないってかずるくね?」
「そりゃ首輪の警戒レベルが……いや、それよりサイクロプスの話だかんな」
「警戒レベルについては後で教えてくれ、んで?」
「サイクロプスは普通の魔物じゃねぇんだ。その見た目通りの怪力に巨体に反した俊敏さ、魔法にも若干の耐性を持ってる。オラが倒した時は6人がかりで【イド】だったかんな」
「え」
「それだけじゃねぇ、おめぇの話を聞く限りイド所かオルターすらねぇって言うじゃんか? 初めておめぇと戦った時から思ってたんだが、やっぱりおめぇの力は異常って言う他ねぇ。イドであれだったのに、エゴになったら比べ物にならんだろ」
「待って待って待って」
「あん?」
「あのさ……俺やばくね?」
「……そりゃ強すぎてやばいって意味か?」
アキラは首を小刻みに横に振って否定する。
「いやいやいや、俺が意味不明すぎてやばいって意味」
「お、おう……なんかあれだな、おめぇやっぱよくわかんねぇ奴だな? 強そうには見えねぇし今の話聞いても会った時同様ふざけた奴だかんな」
「だって一応ゲームの世界が元なのにバランス崩壊してるだろ? もう強いとか弱いとかじゃなくて意味不明過ぎて怖い」
アキラはこれまで戦った自身より強い敵を思い出す。パイオニアクラスのモブやボス、ノートリアスモンスターに自身の影、更にその上には本人(?)の言葉を信じるなら破壊という概念が形を為した訳のわからない絶対的存在であるデフテロスだ。
「ふぅん? そんなもんか」
「あぁ、そんなもんだ」
「強くなる方法ってのは聞けば答えてくれるんか?」
「ん? ん……俺は一般的な方法を知らないけど、取り敢えずダンジョンのパイオニアで影倒せばいいんじゃないか? あ、行くならポーション絶対持って行けよ」
「パイオニアだって? それに影?」
「ほら、――あれ? 言葉に出来ない……そういえば前にもこんなことがあったような……」
「言葉に出来ないってんなら、プロテクトワードだかんな」
「何それ」
「んとだな、あるイベントを経験しているプレイヤーはその情報を話せなくなるってもんだ。ニュースにも載せれないみたいだども、探り方や載せ方も色々あるかんな。そこまで厳しいもんじゃねぇ」
アキラは自分の知らないシステム的な情報を知り、これからは暇潰しだけじゃ無くもう少しまめにニュースをチェックすることを決めた。新聞やニュースなんかを自分で見る習慣を付けてこなかった過去の自分が悪いと他人事のように言い訳する。
「合ってたら頷いてくれ、影ってのは特種な敵か? ふむ、んじゃ探せばダンジョン内のどこにでも居るのか? 違うと、んじゃあれかアニマ修練場か? ほぉアニマ修練場に影か、全くわかんね」
「おい」
「アニマ修練場に影は兎も角、魔物しか出てこねぇんだから影って言われてもイマイチわかんねぇかんな」
「あぁー……んっんっ! ――の―だよ!」
アキラはジェスチャーで自分を差しながら伝える。
「影? 自分? んん?」
「もうほんっとそのまんまだから! もう答え出てるから! 合ってるから!」
「ああ、自分の影? ってのが出てくるのか?」
「そうそう!」
まだ掴みきれていないガンダの言葉だが、言いたいことが伝わってアキラは若干満足する。
「ってもういいだろ?」
「ああ、アキラの言葉を信じるなら強くなった理由も納得は出来ねぇが理解はしたかんな。にしてもなぁ、パイオニアに挑んだなんておめぇもアホだなぁ」
「……こっちにも理由があったんだよ、別に良いだろ?」
「まぁ、“自殺コース”にそんな秘密があったんなら帰って来ねぇ奴らばっかなのも納得だかんな」
「帰ってこない? 自殺コース?」
「んだな。挑んだ奴らは誰一人として帰ってこねぇもんだから、ダンジョンのパイオニアだけはそう呼ばれてんだわ。そのせいか、ダンジョンを攻略するなら他二つの難易度で十分だってんだからな。普通にレベルも上がるしオルターは強化されるしでわざわざ危険を冒してパイオニアになんて行く奴がいねぇってのも道理だわな」
「……」
今アキラは根本的に自身とガンダの言う他のプレイヤーとの違いを明確に理解した。魂や魄が強制的に鍛え上げられるあの空間に初期から潜ってきた自分とはその魂魄の質その物、強化度合いが段違いなのだと。
(そういうことだったのか……俺がいくら強くなったって言っても、最初のウルフは兎も角一人でボスクラスの敵を倒し続けるなんて普通に考えれば無茶だ。ノートリアスモンスターだって事前に翠火さん達が削ってくれてたから一人でもなんとかなったようなもんだし)
デフテロスが告げた言葉を思い出し、自身の手を見つめる。今持っている実力が他の一般プレイヤーと隔絶した物であるのならば、と考える。実際に比べてはいなくともパイオニアで味わった生き地獄がその身に結果として現れているならば、と期待する。
(なら、俺がしなくちゃいけないことは……)
この限られたガンダとの出会いが、残された時間の少ない自分に出来る僅かなチャンスとしてこの身に降りかかったのなら、今自分で起こす行動は一つしか無い。
「ガンダ、ちょっといいか? あんたがギルドの依頼でここに来てて明日外に出るって言うならちょっとした頼みがあるんだけど」
「ん~まぁ情報の礼代わりに聞いてもいいかんな。あっ勿論脱獄とかの手助けは勘弁してくれな」
「別に犯罪に手を貸してくれなんて言わないって」
「んじゃ言ってみ?」
頷きながら魔物を倒した際に得られる“アイテムボックス”を取り出す。
「なんだこれ? 初めて見るアイテムボックスだかんな……」
恐らく前代未聞であろう氷の模様が浮かぶアイテムボックス、それはパイオニアのボスから出現した前代未聞のアイテムボックスであり、パイオニアが攻略されない故におとぎ話でしか認知されない伝説のアイテムボックスだった。
次回もよろしくお願いします。
評価、ブクマしてくれると嬉しいです。