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女王様達の大好きな両親

作者: 柊 風水

とある国に季節を司る四人の女王様がいました。女王様達は交代で『季節の塔』へ入り、入った女王様が司る季節が訪れるのです。

しかしある年の事。どう言う訳か冬の女王様が塔へ出て行きません。春の女王様も迎えの使者が来たら春の女王様の御屋敷は誰も居らず行方不明となっていました。

困った国の人達は他の夏の女王と秋の女王の元へ訪れて、何とか冬の女王を説得と春の女王の捜索の手伝いをして欲しいと頼みますが、二人の屋敷には誰も居らず、兵士達が懸命に三人を探している。


困った国の王様が国中に御触れを出しました。

『冬の女王様と春の女王様を交代させた者には褒美を取らせよう。ただし冬の女王が次の季節に来られない様な事はしない』と。



そんな御触れがとある田舎町の老夫婦の耳にも届きました。その夫婦はこの町では知らない者がいない程仲が良い夫婦でした。

おばあさんは大変な料理好きで、それと同じ位食べるのも大好きな人でした。彼女が作る料理は絶品で若い奥さんはおばあさんの元へ尋ねて料理を教えて貰っています。おばあさんは若い奥さん達が作った料理をとても美味しそうに食べるので奥さん達のやる気は上がります。

おじいさんも働き者で、知識深い人でした。よく子供達にせがまれて昔話や異国の話をしていました。働き盛りの男達と共に土いじりに精を出していました。


「ばあさんや。聞きましたかい?」

「ええ、聞きましたとも。あの子達も一体どうしたのでしょうねー? あの子達が自分の仕事を放棄するなんて……」

「王都の方はこのままだと食料が尽きるそうだ。……王様が二人の交代を成功した暁には好きな褒美をくれるらしい」

「あらあら。それなら行かない理由は無いわね」

「そうと決まれば出かける準備をしようか。ワシは馬車の用意をしようか」

「それならアタシはあの子達の好物を作ろうかね」


そうして二人は旅に出たのです。




兵士達はやっとの思いで二人の女王がいる古ぼけた小さなお屋敷を見つける事が出来ました。

「秋の女王様! 夏の女王様! どうか、どうか謁見を! お願いです!! 出てきて下さい!!」

固く閉ざされた扉をひたすら叩く若い兵士。だが、扉は依然閉ざされたまま。

「扉を叩き壊した方がよろしいのでは?」

「ならぬ。秋の女王様は繊細なお方。大きな音ですら怯える様な方にその様な事をすれば最悪『秋』を失うかもしれん」

兵士の提案に兵士長は即座に却下する。

万事休すか……周囲は重苦しい雰囲気になる。そんな時でした。



ドナドーナドーナうーられていーくー。ドナドーナドーナー。


どこからか歌が聞こえるではありませんか。しかもあんまり音楽の才がないのか変な所で音程が外れたり、声が裏返ったりで思わず歌を聞いた兵士達は一瞬脱力してしまいました。


見るとロバに牽かれて馬車が此方に向かってくるではありませんか。

手綱を引いているのは痩せた老人。隣には老人の妻なのか恰幅の良い老婆。二人は笑いながら歌を歌っていました。

そうして兵士達の目の前で止まると夫婦は、そこでやっと兵士の存在に気付いたのか目を大きく開きました。

「あらあらおじいさん、兵士さんですよ」

「これはまた、こんな辺鄙な所に来るとわ。やはりキンモクセイとフヨウが此処にいるのか」

夫婦は馬車から下りると兵士達の前に歩き出した。はっと最初に正気に戻った兵士長が咄嗟に剣を持ち始めたが、直ぐに離してしまった。


夫婦が兵士達に頭を下げたからだ。


「こんな辺境な所にまで来て本当に申し訳ありません」

「あの子達は責任感の強い子達なのです。理由もナシに自分の仕事を放置する子ではないのです」

突然の事に固まる兵士達。だげど夫婦はそんな事気にもしない様でポンポンと話を進めます。


「それはそうと、こんな寒い中外に居っては辛かろう。家内が温かい料理を作っておりますので一緒に食べましょう。ばあさんや、確か料理の下ごしらえは終わっていた筈だね?」

「ええおじいさん。後は温めれば完成ですよ」

「それじゃあ火の準備をしましょうか」


そうしておじいさんはせっせと竈を作り、おばあさんはテキパキと料理の仕上げをしていました。ですが、二人共お年寄りなのでどこかよろよろと転びそうになるので、思わず兵士達も手伝い始めました。

段々と美味しい匂いが漂ってきて、兵士達のお腹がぐーぐーと鳴き始めました。その匂いは屋敷の中に入っている事も知らずに。




「さあ、出来ましたよ」

おばあさんは蓋を開くと、そこには美味しいそうなシチューがグツグツと煮込んでいました。

「こっちも焼きあがったぞ」

おじいさんは料理を一つ一つ丁寧に皿に盛りつけました。

塩を振りかけた焼き鮭、お肉を焼いたのをソースで絡めたサンドイッチ、ブロッコリーやニンジンなどの温野菜、東洋の知り合いから貰ったと言う『オコメ』を握って、これもその知り合いから貰った『ミソ』『ショウユ』で味を付けて焼いた焼きおにぎり、デザートにシナモンシュガーを振りかけた焼きりんご。

女王様を探している間、ご飯はボソボソとしたパンか干し肉を挟んだサンドイッチ(他は全て国民に回したのです)しか食べてない上、長時間雪が舞う外に出ていたので兵士達はもう、温かい料理が恋しくて恋してくしかたがありませんでした。

そうしておじいさん達から料理を受け取ると一心不乱に食べ始めました。


初め食べたのは熱々のシチュー。一口食べただけで凍った身体が溶け出して初め、大きめに切ったジャガイモ・ニンジン・ブロッコリー等の野菜やお肉がお口いっぱいに頬張る度に身体が温まり始めた。

塩で味付けした鮭はシンプルで、だからこそとても美味しい。兵士の中にはシチューに入れて食べる者もいました。

初めて食べる焼きおにぎりは甘くて、その上ショウユが香ばしくミゾも良いアクセントで幾つあっても食べられる程とても美味しい料理です。

サンドイッチは肉汁とソースがハーモニーを奏でている様で、こんな美味しいサンドイッチ兵士達は食べた事もありません。

何より焼きりんご。まるで母親の手作りで作るアップルパイの様にどこか懐かしく、ほろりと涙が出てくる程甘かった。


「何とお礼をすれば……部下も私も此処最近碌な食べ物を食べてなかったので、貴方方の料理は本当にありがたい」

兵士長はおじいさん達に頭を下げます。部下達のこんな幸せそうな顔は夏の女王と秋の女王の捜索前以来です。


「いやいや。あんまりも御宅等の顔が悪かったもので老婆心が出ただけですよ」

「それにそろそろお目当ての子が出てくる筈ですし」


二人の言っている事に理解出来なかった兵士長は頭に?マークを浮かばせたその時でした。


ギイッーと重苦しい扉が開く音がした。

皆が一斉に扉を見ると扉の隙間から、ススキ色の髪をした女性と海を連想する様な真っ青な髪の女性が出て来ました。

「あ、秋の女王様! 夏の女王様!!」

何と秋の女王様と夏の女王様があんなにも扉を固く閉じていたのに、出て来たのです。

兵士達は皆びっくりしていましたが、老夫婦だけは最初から知っていたかのように穏やかな顔でした。



「父様、母様」

「どうしてここが分かったのですか?」

父様母様!? 突然の言葉に目を見開く兵士達は一斉に夫婦を注目しました。

「そりゃあ、ここはお前達が季節の女王として自立するまでここに六人で暮らしていた場所だからね」

「お前達が行くならまずここからと思いましてね」

おばあさんは二人分のシチューを皿に入れて二人に差し出した。ソレを女王様達は黙って受け取って食べ始めました。


「キンモクセイ、フヨウ。駄目じゃないか。お前達は季節を司る女王として時に他の女王達を窘める事も仕事の内だぞ?」

「……だって私達が仕事を勤めたら母様達がっ」

「キンモクセイ」

おばあさんは秋の女王の肩を掴み優しく語りかけました。


「私もおじいさんも十分幸せでしたよ。息子や娘に恵まれて可愛い孫にも出会えて。十分幸せでしたよ。だけど可愛い娘達が仕事をしなくなったせいで、国民の皆が困っていると聞いたら黙っていられませんわ」

「そうそう。お前達だって分かっているだろう。このままでは食料がつき、暖炉をくべる薪もなくなりこの国が滅ぶ。そうなってしまえばお前達も死んでしまう。親より子が先立つ事は何よりも不幸な事なんじゃよ」

確かに二人の言う通り冬の季節は獲れる食べ物は限りがあるし、その食べ物も無くなりかけているのです。このままでは餓死や凍死する国民達が出始めます。今は大丈夫ですが、もしかすれば怒れる国民達によって季節の女王様達が害されるかもしれません。おじいさん達にはソレがとても怖かったのです。


「サクラはサザンカの元へいるんだね」

二人は静かに頷いた。

「これからワシ等が・・・・いなくても・・・・・ちゃんと皆の為に自分の仕事をやり遂げられるかい?」

「……父様、母様。私達お別れしたくない」

「フヨウ。人も何時か別れが来るの。それが私達がちょうどその時間・・・・が来ただけ。今は悲しくて仕方がないのかも知れないけど、必ずその痛みは乗り越えられるわ」

「ホント?」

「本当よ」



四人の話に付いていけない兵士達でしたが、兵士長ははっ! と何かに気付きました。

 

「それじゃあばあさんや。ツバキ達の元へと向かいましょうかね」

「ええ。おじいさんや。さあ、キンモクセイ、フヨウ。お前達は城へ戻って王様達に『春が来る』と伝えなさい」

「「はい」」

話が終わったのかおじいさん達は二人の女王に別れのキスをして、また自分達が乗って来た馬車に乗ろうとした時でした。


「ご老人。良ければ我が早馬をお使いなってはどうでしょうか? 我が自慢の早馬は此処から塔まで一時間も掛からないでしょう」

「それはそれは! 兵士様ありがとうございます」

「いや、お礼を言うべきなのは我等の方ですよ。……女王様達を育て上げたご両親君ですからね」

此処まで言って他の兵士達も、やっと二人の正体に気付いたのでした。



さて早馬で塔にやって来たおじいさん達はコンコンと扉を叩きました。

「おおーい。サザンカやーどうか扉を開けておくれー」

「サクラもいるんでしょー? お前達の大好物のサンドイッチを持ってきたから皆で食べましょうー?」

まるで魔法に掛かった様に閉じられた扉はいとも簡単に開きました。

兵士長や副兵士長も入る事は出来たのですが、家族の間に赤の他人が入ってはならぬと思い外に待つ事にしました。







塔の最上階に春の女王である桃色の髪をしたサクラ、そしてこの長き冬の原因である雪の様な銀色の髪のサザンカが待っていました。

「……母様、父様」

「おー二人共。随分とまあ綺麗になって」

「本当に何時でもお嫁様に貰われても可笑しくはありませんねおじいさん」

老夫婦が和気藹々と話しているのに女王様達は暗い顔のまま。大好きだったサンドイッチも口にする事もありません。


「サザンカ。そろそろサクラと交代してはくれんかね?」

「いやです」

「サザンカそんな我が侭をっ」

「だって!」

サクラは耐えきれなくなったのか叫び始めた。



だって春が来たら・・・・・・・・父様達が死ぬんだよ・・・・・・・・・!!??」




ちょうど秋の女王と冬の女王が交代し終わったときでした。神様が老夫婦の前に現れたのは。

『二人共良く季節の子達を育て上げた。貴方達がいなければここまでこの土地が栄える事は出来なかった』

『いえいえそんな……ワシ等は当たり前の事をしただけです』

『そうか……』

神様は悲しそう顔を作られました。

『お前達に辛い宣告をする』

『それは……何でしょうか?』

『……春の季節に訪れた時。二人共あの世の迎えが来る』


突然の神様の宣告に二人は目を大きく見開いて互いの顔を見合わせました。

『……つまり私達は死ぬ、と?』

『簡単に言えばそうなる。二人は季節の子達と長く暮らしていた。そのせいか二人共同世代と比べれば若く、健康であろう? しかし所詮人の身体。長い年月で死に向かっているのだ。そうして今度の春で季節が産まれてちょうど百年。その日が二人の寿命が尽きる日なのだ』

神様の残酷すぎる話に二人は泣く事も怒る事もせず、ただ静かに受け入れました。


『……それは誰にも変えられないのですか?』

『人の生死は神である私でも変える事は出来ないのだ』

『そうですか。……ならばおおじいさん。準備をしましょうか』

『だな。早い内に自分達の余命を聞けて良かったよ。お陰で早い内に片付けられるからな』

『本当にすまない……』




この話を偶々遊びに来ていた春の女王が聞いてしまったのが、この国で起きている騒動の真相でした。






「母様達が死ぬのは絶対に嫌!!」

「……春さえ来なければ二人は死なない。それならばずっと私は此処に住む」

娘達の言葉におじいさん達は大きな声で笑いました。


「何で笑うのよ!?」

「それはなサクラ。ワシ等は死なないよ」

「だって神様すら人の生死は操れないって」

「そう言う事じゃあないの」


おばあさんは女王様の心に手を当てました。

「私達は貴方達の心に、記憶に生き続けるの。貴方達が私達を忘れない限り貴方達の中で永遠に生き続けるわ」

「……詭弁よ」

まだ納得しないのか春の女王は、小さいながらも反抗声を上げた。


「実はなサザンカ。ワシ等がお前達の交代に成功した暁には王様にあるお願いをして貰う予定なんだ」

「あれやこれやとおじいさんと相談して決めたの」

「「何を願うの?」」



「「ワシ等 (私達)の孫にどうかワシ等 (私達)の事を季節の女王様達の口から話して欲しい」」


「お前達それぞれの視点でワシ等の話をして欲しいんだ」

「どうせ春になれば私達はいなくなるのだから、何も知らない私達の孫に私達がどんな人物だったのか娘であるお前達に話して欲しいの。そうすれば私達は永遠に忘れなれないわ」


二人の突飛な話に一瞬固まったが、春の女王は大きな声で笑い冬の女王はやれやれと頭を振った。

「母様達が変人だと思っていたけど、ここまで変人とは思いもしなかったわね」

「あーもう。ここまで悩んで損した。そうよ、こんなお人好しな夫婦誰も忘れる事はそう簡単にはないわね」

「その変人に育てられたのは誰だろうな?」

「「そりゃあ私達よ」」

その言葉に四人は大きな声で笑い合いました。





「もし私達の料理が恋しければレシピを息子の嫁に残してあるから、彼女から習うのよ」

「うん」

「姉妹で喧嘩しないで仲良くな。出来れば息子の方も仲良くしてくれたらワシは嬉しい」

「何言ってるの。父様の子なら私達の子も同然よ」

「ちゃんと自分達の仕事を全うして、人の為になる子になってね」

「はぁい」

「好きな人が出来たら相手の意見を尊重してキチンと言葉にして愛を伝えなさい」

「父様達の姿を見ているから大丈夫よ」



そんな話をしながら四人の女王様と老夫婦は別れの挨拶を終わりました。

そして冬の女王と春の女王が交代したその日に、息子家族に見守られて夫婦は静かに息を引き取りました。





昔々。

この国が建国するずっとずっと前の話。

この土地は元々不安定な気候である日は干からびる様な晴れだと思えば、次の日は洪水を起きる程の大雨、また次の日は家が屋根まで隠れるほどの大雪が降ったりして一日も安心して暮らせる日はありませんでした。

そのせいで作物も育たず、動物も魚も獲れる量も大きさも小さく、そこに住んでいる人達は毎日苦しんで暮らしていました。


ある日人間達は祈りました。

『どうか私達に安定した気候を下さい。このままでは作物は枯れ、動物や魚は死に、遂には私達も死んでしまう』

そんな人間達の祈りを聞いて神様は姿を現しました。手には四人の赤ちゃんを持って。


『この子達は春の子・夏の子・秋の子・冬の子です。期間を決め天を貫く様な大きな建物に入らせたらその季節が巡って来るでしょう。ただし雑に扱ってはいけませんよ。この子達の誰か一人でも欠けてしまえば、また混沌とした気候がやって来るでしょう。どうかこの子達を大切に育て上げて下さい』


神様のお言葉に人間達は狂喜乱舞しました。

早速人間達は誰が四人の神子達を育てるかと話し合いました。其処に手を上げたのはとある夫婦でした。

夫婦は周りも認める程の仲の良い夫婦でしたが、中々子供に恵まれませんでした。例え血の繋がりのない子でも大切に育て上げたいと名乗りあげたのです。


周りの人達は言いました。

『恐らく神子達は我等と生きる時間が違う。お前達ももしかすればその影響を受けて長い年月を生きるであろう。それでも育てる覚悟があるのか?』

夫婦は答えました。

『例え人の理から外れようと私達の子が欲しいのです。例えこの子達が神子でなく、悪魔の子でもきっと同じ様に親として名乗り上げるでしょう』

周りは夫婦の覚悟を受け取り、屋敷を立てそこに六人を住まわせました。夫婦が四人を育てる間、神子達が入る塔を作り上げ、どの神子がどれ位の期間その塔に住まうのか話し合っていました。



さて、四人の神子の親代わりになった夫婦はと言うと、毎日が大騒ぎでした。

朝から晩まで赤ちゃんは泣き続けて、あっちの子が泣きやんだと思ったらそっちの子がまだ泣いて、そっちの子が泣きやんだと思ったら今度はあっちの子が……と一日も休まる日はありません。

また、四人がもう少し大きくなると今度はあっちこっちに興味を持ち始めてもう大変。

少し目を離せば包丁等の危ないモノの近くにいるものですから、危険物の管理には神経を尖らせ、階段には柵を作って登らせない様にあの手この手で子供達から危険から守っていました。


それでも二人は一日たりとも子供達を引き取った事を後悔した事はありませんでした。

子供達にサクラ・フヨウ・キンモクセイ・サザンカと名前を付けて愛情を注ぎ、時に厳しく育て上げました。

お父さんが四人に生きる為に大切な事を教え、お母さんは美味しい料理を作って子供達を育て上げました。

夫婦の愛が実って四人の娘達は立派な季節を司る神子として育つ事が出来ました。それは神様が現れて九十年の歳月が流れていました。ちょうどその頃に塔が完成し、どの子がどれ位の塔に入る期間も決められて時でした。


そうして神子達が決められた期間に塔に入ると、神子達がそれぞれ司る季節がやってきました。


春が温かな季節を呼んで沢山の植物や生き物達が産まれ。

夏が動物や植物達を元気良く育て上げ。

秋の季節はそろそろ次の世代にバトンを繋げる為の準備をして。

冬にはまた新しい生命を育む為の力を蓄える準備をして。

また春がやってくるのです。


こうしてその土地に住んでいた人達はやっと安定した気候を手に入れて、畑を耕したり、狩りをしたりして食べ物を安定して獲れる様になり、生活に余裕が持てるようになるとその余暇に歌を歌ったり絵を描いたりと思い思いにし始めて、何時しか大きな国が産まれたのです。

何時しか四人の神子達はそれぞれ『春の女王』『夏の女王』『秋の女王』『冬の女王』と呼ばれ始めました。


一方最大の功労者である夫婦はと言うと。

四人が自立したと同じ時期に妊娠した事が分かり、二人は小さな村に移り住みました。

神子達を育て上げている間まったく年を取る事は無かったのですが、月日が経つ度に老け、自分達の子が結婚して自立すると二人で仲良く暮らしてたそうです。

そして季節が産まれて百年目の春の季節に息子家族に見守られて夫婦は一緒に息を引き取りました。彼等の死は村だけではなく国中の人達がその死に心を痛めたそうです。



これがこの国の人達全員が知っている物語。この国が産まれた切っ掛けの物語ですから子供達が一番に親や学校に教えられる物語。


その物語に老夫婦の孫達やその友人達が季節の塔へ遊びに行って、女王様達に老夫婦の話をして貰う姿が見られる様になったと語られるようになる日もそう遠くない未来の話。


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