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そういえば、そろそろ剣も鍛え終えたころじゃないだろうか?
エレオノーレを少し待たせることになってしまうが、得物がいつまでも無いのは心理的によろしくない。腰の短剣だけでは出来ることにも限りがある。それに店は飯屋への途中にあるし、鍛冶屋も覗いていくことにした。
適当に工房を覗きながら、道なりに進む。飯に行っているのがほとんどなのか、中にはほとんど人がいない。いても奴隷の鍛冶師ばかりだ。そして、その連中も主人が不在なのをいいことにだらだらしていた。
もっとも、こちらとしてもどうせひやかしで、見たところで数打ち物は買わないんだがな。
結局、腕の怪我が安定した頃に改めて剣を探すと、市販品はそのほとんどが二度振っただけで根元から折れた。腕を怪我していたあの時だから拾った剣で戦えていたのであって、本気になれば普通の剣じゃ役不足だ。そもそも俺は、兜だろうが盾だろうが膂力に物を言わせて両断し、もしくは、叩き潰すのが本来の戦い方だ。
なので、この街の工房を片っ端から当たって、ようやく見つけた一番腕の良い鍛冶屋に多めに金を握らせて無茶をさせている。
これでダメなら、加減をしながら戦わなければいけなくなるが……。
しかし、鍛冶屋に顔を出すと、どうやらそれは杞憂だったらしく、明らかに異様な剣が店の一角に鎮座していた。
「仕上がったか?」
一応、訊ねれば、壁に立てかけてあった――一目で俺用の剣だと分かったあの長剣を渡された。
木と牛革で誂えられた鞘を抜き払う。
片刃の剣だが、幅は握り拳ひとつ分はあり、俺の身長の半分ほどの刃の下に鍔は無く、捻っただけの柄が刀身と同じ長さだけ伸びている。俺の身長と同じ位の、柄尻を持てば槍としても使えそうな、刃も柄も長い剣だ。
片手で握って振り上げてみる。
子供の爪ほどの厚みのせいか、前の剣よりも大分重いが、長い柄のおかげで握る位置さえ気をつけれは振るのに苦労は無さそうだ。それに、重い分、骨まで容易に断てるだろう。
全力で振り下ろしても、剣は折れなかった。
「完璧な仕事だ」
「ありがとうございます」
「足りたか?」
一応訊ねてみると、ニコニコした顔で頷かれた。追加の金は、どうやら必要なさそうだ。
「また、よろしくお願いします。今度は盾などいかがですか?」
「視界を塞がず、軽くて丈夫な物があればな」
商魂逞しい店主に、素っ気無く言い放つ。盾は、陣形を組んでの集団戦では役に立つが、俺のようにひとりで戦う場合には邪魔にしかならない。重いし、視界もふさがれる。攻撃を防ぐなら、それなりの腕がある人間なら、剣で受け流したり払ったりした方が効率的だ。
「またどうぞ」
受け取った剣を革紐で背負うように斜めに背中に差し、店を出る。あの春の終わりの日からひとつの季節が過ぎ去って――ようやく、次へと俺達も動き出せる準備が整った。




