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Archetyp―アーキタイプ―  作者: 王道楽土
一章 出会い ―希望―
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3話 読心


「最善くんは、大手蔵高校なんだ」


 望は会話のキャッチボールを余儀なくされた。この場合、「虚心さんは?」が妥当なのは理解している望だが、長年の親しい人物をつくらないという思念で返答に躊躇する。間が空き口を開く。


「…………虚心さんは、どこの高校なんですか?」


「光武高校だよ。……別に敬語じゃなくていいんだよ? 同い年なんだし、バイトの先輩面したくないしさ。そんなのに気を使わせたくないなー」


――光武高校……風の噂でたしか冷ちゃんが通ってたとこだ。あの日から小学校で数回すれ違うだけだったな……なにしてるんだろうな……。


「また黙るー」


 少しプクッと頬を膨らませる。


「いや、違うんです……」


「ああ、敬語のことじゃなく別のこと考えてたのか」


 望はなんなんだこの人という、もの恐ろしいが鮮やかな感覚を抱いた。


「はい。もう卒業してるけど知ってる人が通ってて……」


 この返答は望からすれば、涼加に譲歩したものだった。普段なら理由をつけてこの場から立ち去る算段をしている。人通りが多いのもあるが、若干ではあるが望から涼加にジリジリと歩み寄る感情。彼女の才能に期待している。


「へー、そうだったんだ。なんて人? 三歳以上年上ならわからないけど」


「三つ上ですよ。だから知らないと思います」


「そっかそっか。……対等なキャッチボールしようよ」


 少し頭を傾げながら「はい?」と望は聞き返す。


「た・い・わ! 対話だよ。対話のキャッチボール。同い年に敬語使われる身にもなってよ。私はそんな優越感いらないよ? だから対等に対話のキャッチボール」


 望はなるほどと納得するも、涼加の洩らした台詞に気づかないでいた。


――「そんな優越感いらない」という台詞。


 涼加の優越感――とは劣等感を抱いている人との対話であった。優越感と劣等感は対義語である。「優越感に浸っている」というと見下し、馬鹿にするイメージが強いが、涼加はそれとは違う。相手を救いたい願望がある。


――メサイアコンプレックス。他人を助けることで自分も救われるというコンプレックスを涼加は抱いている。


 彼女は読心術の意識などしていない。それは涼加の才能であって無意識に行えるものだった。一般人で例えるなら時計を視認し、時間がわかる感覚。ただその時計がアナログ型で、文字盤に時刻が書かれていたり、書いていなかったり。形も様々。それでも大体、何時かはわかる。そういった感覚で読心術を行ってる。


 涼加曰く――対話遊びを。


 涼加はこの才能を自覚している。だからこその優越感。その才能で他者を救い自分も救われる。その結果の――優越感が欲しいのである。


「普通はね、ストレート投げたらストレート投げ返すのよ?」


「はあ……」


 駅に向かいながら話す望は、周りに人がいるか確認しながら、視線を動かしていた。


「それ! 周りを気にしてる。こっちがストレート投げてるのに、カーブで返す」


「これは……癖だよ」


「まあいいわ。最善くんはたまにね、『隠し球』を投げるのよ」


「隠し球?」


 望は怪訝な表情を浮かべる。


「そう、投げたボールを懐に仕舞って、そこから違うボールを返してくる。これって隠し事している証拠」


「誰にでも隠し事なんてあると思うけど」


 望はずけずけと踏みこんでくる涼加に、少し反抗するかのように語気を少し強めていた。


「うん。私にもある。プライバシーもあるからこれ以上は駄目なのかなって思う。だけど最善くんのは……なんていうか……これは直感なんだけど……得体の知れないものって感じ……かな……そんなキミに興味をもった」


 望は悩んだ。勿論、蟲のことは話さない。だが、彼女の才能が魅力的に写っていたのだ。自分では気づかない指摘や助言を期待する。現状を打破とまでいかなくとも、――きっかけになるかもしれない。


 最後の言葉――そんなキミに興味をもったというストレートな台詞を見逃し足を止める。


「友達や親しい人はつくりたくないんだ……でも虚心さんと話していると……助言というか、ヒントというか……そうゆうの助かるし嬉しいんだけど……なんて伝えたらいいのかな…………」


 歯切れ悪く、もごもごしている望に涼加は一言投げる。


――『迷ったらストレートを投げたらいいよ』


 直球。基本ストレートな涼加が一言。それに突き動かされる。


「もっと話をしたい!」


 直球。真っ直ぐな気持ち。そのあとすぐに「あっ……」と洩れる望であった。

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