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Archetyp―アーキタイプ―  作者: 王道楽土
二章 前進 ―信望―
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3話 七三

 蟲目が騒ぐまではうまい棒男の思考は遮断させ、涼加と他愛もない対話をしながら無事帰宅する。結局あの男は現れず、この日の出来事は涼加に悟られることはなかった。だが二人で食事をした後に何かあったと、涼加は感づいていた。


――追求はしない。それが対話遊びでもあった。


「ただいまー」


 自室に戻ってラルカに早速聞こうとするが居ない。焦る望がリビングに行くとラルカが愛利の隣に座ってお笑い番組を観て一緒に笑っているのである。


「はははっ!「ハハハッ」


「いっ!!」


 愛利と母親が声の発信源である望に振り向く。愛利はすぐテレビに視線を戻し何事もなかったように番組を観る。


「どうしたの望?」


 母親が普通の疑問を投げかける。


「い、いや、喉が変だっただけだよ。飲み物取ったら部屋に戻るかな」


 語尾を少し強調して、ラルカを見ると察したようでとぼとぼと望の方へ歩いてきた。そのままラルカを先に自室に入れ、望が入室し鍵をかけた。


「ちょっと! 何してるんだよ!」


「やかましいな少年。ダジャレの追求だ少年」


 ダジャレの追求には否定せず。リビングに勝手に行くのはやめてほしいのと、愛利の横に座ったりして大丈夫なのかとまくしたてる。だが冷静な顔でラルカは絶対に接触しないし気付かないと言った。絶対に接触しない。普通なら有り得ないが、この名も無き子供ならなんでも有りなのだろうなと望は妙に納得した。


 あまり突拍子もない事はやめてと伝えると同時に、あのチャラ男を思い出しすぐに出来事を話しだした。


「稀少だが察知するやつはいるぞ少年。あの大男もその一種だ」


「え? あいつもそうなの?」


 動揺する。あんな敵意剝き出しの攻撃タイプに察知されたら堪ったものでない。命の危険性大である。その動揺をラルカが察し、


「安心しろ少年。大男は臭覚で感知するタイプ。もうボクらを感知する事は出来ない。その男はボクは見てないのでなんとも言えないな少年」


 大男こと犬牙はあの日、どこからかカルラの匂いを入手していた。感知したのはラルカからカルラに替わり、姿も声も――匂いも分かる時間が生まれたからだ。望に至っては自ら持ち上げ投げ捨てたので、匂いを記憶していた。そのおかげでまだ望があの修繕ビル屋上に居たのが分かったのであった。しかも屋上とあって人混みのような混ざった匂いもない。


「そっか。ラルカがそう言うなら安心したよ。あの男の目的は何だと思う?」


「真意を捉えるのは禅問答だぞ少年。よし明日から少年に付き添う」


「ほ、本当!? 安心したよありがとう」


 喜ぶ望であったがそれこそ、この真意を理解していないのであった。ラルカが来るという事は身の危険が高まる。カルラが施した察知する能力をスーパーでしない限りは。付いて行くというのは、身を守ってあげるというニュアンスより、――興味を持ったからそいつを見てみたい、真意を確かめたいというニュアンス。よってカルラの能力を使わないのである。


 もしそこで戦闘にでもなれば、名も無き子供は人間を救うような事はしない。自分の身を守る為の行動か、そこに望も加算されるかどうか。いくら周りの人間が死のうが関係ないのである。危険極まりないが望にはまだそこまでの考察力はない。


「それはそうと、早くテレビだ少年」


「はいはい」


 それから三日経ったがあの男は現れなかった。その間にまだいた日共センの尾行者はもう付いてないとラルカが望に知らせた。それにしてもあの男は結局ただの冷やかしだったのか、それともラルカが傍に居るので違和感みたいなものを察知したのか悩む望はラルカに問う。


「どうなんだろうねラルカ」


「現れない限りボクも何とも言えないぞ少年。なんなら替わってみようか少年?」


「替わるってカルラに!? やめて滅茶苦茶になりそう……」


「失礼だな少年。ボクに言ってるのと同じだぞ少年」


「そうなのかもしれないけど……もうバイトに付くからあまり話しかけないでね」


 蟲目も反応せず、スーパーに到着。タイムカードを押し、少し早めに着いたので休憩室に寄る。しばらくすると望の所に涼加がやってきた。


「おはよー! ちょいお久だね! キミ今日は早いね」


 望がバイトを復帰した日以来であった。涼加はいつも予定時間より早めにくる性格で学校共に遅刻ゼロである。


「おはよう。たまたまだよ」


「そっかー。あ、そうそうさっき店長に会ったんだけど、今日新しいバイトの子が来るみたいでどうやら同い年みたいだよ」


「へー、そうなんだ」


「なんかね、今どき珍しい真っ黒な髪で、七三分けしてる真面目な人なんだって」


 そんな高校生いるのかと望でも思っていたらその新人と店長が休憩室に入って来たのである。噂をすればであった。


 店長がこの休憩室で待っているよう新人の男に伝える。本当に真っ黒な七三分けした新人の男は望と涼加に挨拶をしてきた。


「本日からお世話になります新人の犬飼忠志いぬかいただしです。よろしくお願いします。」


 ラルカが一言。


「少年、こいつ外者」


「!!??」


 望は勢いよく立ち上がり椅子が後ろにバンっと倒れ大きく音が響く。


「ひゃん! なに!? キミ! もうっ! ビックリなんだけどっ!」

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