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Archetyp―アーキタイプ―  作者: 王道楽土
二章 前進 ―信望―
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1話 名前

 犬牙事件の日から三日目。望は名も無き少年といつまで続くかわからない共同生活が始まっていた。お互い話し合い、利害の一致でそうすることになったのだ。


 望の利益、それは蟲目の絶消見殺しを失くす事であり、名も無き子供の知識である。損失は名も無き子供を狙う犬牙などのアウトクリーチャーと接触する危険性であった。


 一方、名も無き子供の利益、それは絶消を一段上回る能力の解析であり、絶光蟲が望とどういった影響を及ぼすのかの因果関係。探究心に近い。損失は無い。名も無き子供には損失など無いのである。どういった状況でも身の危険など有り得ない存在が名も無き子供。利益しかないのである。


 そんな名も無き子供に名前がないと呼びにくいと望が申し出た。


「ボクはボクだが、少年が呼びにくいなら勝手に名付けるといい少年」


「勝手にって……でも僕が言い出したし、そうだなー……」


 たまたまリビングにあった音楽雑誌が目に入りこれだと決めた名前。


「ラルカ! なんか呼びやすいし、少女の時は逆から読んでカルラ! ……どうかな?」


「かまわないぞ少年「それでいいわよ、よかったわね少年」


 単にバンド名の頭三文字から命名した。命名するのは土筆以来であった。ふと土筆を想いだす望にラルカはカルラに替わりそのまま話しだした。


「なぜ少年の部屋にはパソコンがないの? 用意して少年」


 ずうずうしい物言いでカルラは冷たい目で望を見つめる。カルラとは事件の日以来。望には、どちらの姿でも見えてる状態だが、カルラは誰にでも見れる状態である。それを思い出だした望は焦りながら答える。


「父さんの使ってないのあるから用意するよ。それより姿見えるから! ここリビングだよ! 誰か帰ってきたらどうするの!?」


「大丈夫よ少年。誰か近づいてきたらわかるように、施したから。それよりパソコン」


 どういった原理でわかるのかを聞くより、慌てて先にパソコンを用意する望だった。カルラは説明を省いていたが、アウトクリーチャーに気付かれないようにも施していた。これは望に危険が及ぶ可能性と、自分がアウトクリーチャーの相手をするのを手間を省く為であった。


 ノートパソコンを父親の部屋から持ち出し、カルラの背中を押しながら自室に戻る。


「ふぅ……ばれたらどうするの!?」


「どうもしないよ少年。そんな事いいからパソコン用意しなさい少年」


 パソコンをセッティングし、カルラに手渡すとカチカチ操作しだした。チッ性能悪いな、など何やら文句をブツブツ言いながらも嬉しそうに伺えた。


 性格が違うのかとここで望は気付いた。望は名も無き子供の情報を知らないと言っていい程であった。知っていることなど絶消の有り無しと、ラルカ即ち少年の時は冷静で物腰良く知的。カルラ即ち少女の時は、冷酷で上から目線で色々できる。色々とは、冷子を治療したり、先程言ってた感知を施す行為だ。望にはこれくらいしか知らない。


 他人と接してこなかった望は、他人がどういった人物なのかという好奇心や探究心は薄い。ここで名も無き子供について言及してもいいのにしないのである。これがかえって名も無き子供は望に好印象を与えていたのだ。それでもパソコンを使用するカルラには興味は持ったが、覗き見もしなければ聞きもしない。


 ベッドで横になりながら足をバタバタさせパソコンをしているカルラに望は疑問をぶつける。


「そういえばその服は洗濯しなくていいの? ずっと着ているけど」


 パソコンを弄ってる手がピタっと止まる。


「……何を考えてるの少年? 脱いでほしいの少年?」


 睨み付けるように望を見る。


「え! 違う! そうゆう意味じゃないって。その民族衣装みたいのずっと着てるから汚れてないのかなって……」


 若干焦るが、そうゆう風にとられるんだと、カルラとラルカの違いにまた一つ知る。


「この服はこないだまでいたベトナムのアオザイという服よ少年。ワタシが浄化させるからいいの」


 洗浄の間違いじゃないのかと感じたがカルラがそう言うならそうなんだろうと変に望は納得したのである。カルラは何か思い出したかのようにベッドから起き上がり望に云った。


「なぜこの服を選んだか教えてあげる少年」


 立ち上がるカルラに望は何をしだすんだと不安になる。


「!? なっ、なにどうなってんの!?」


 驚く望の視界には十歳くらいのカルラが二十歳くらいまで成長した姿だった。手足が伸び、胸も大きく膨らみ、顔つきも幼さが無くなり大人であった。


「ね。これなら大きくなっても七分丈くらいで変じゃないでしょ少年。興奮した?良かったわね少年」


 そう言うとまた少女のカルラに戻った。カルラには様々な能力がありこれもその一つだった。


「……興奮というかカルラには驚愕ばかりだよ……」


「そう、よかったわね少年」


 そういい残すとまたベッドに横たわりパソコンを操作しだした。

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