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Archetyp―アーキタイプ―  作者: 王道楽土
一章 出会い ―希望―
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15話 決意


「説明がずれたな少年。では絶光蟲だがな少年」


「ちょっと、ちょっと待って……話の展開についていくのがやっとで……そんな存在……普通なら信じられないけど、あの大男や君が居るもんな……あれ……なんであそこに冷ちゃんいたんだ……」


「やつらは日共センだ少年。アウトクリーチャーの対応組織だ少年」


 ああやっぱりと納得する望。日共センの冷子を見たあの大男が一時撤退。縷々の容赦ない発砲。なんとなくであるが感じていたのである。


 名も無き子供は望に忠告した。――蟲目は誰にも伝えてはいけないと。日共センに伝えれば保護はして貰えるだろう。表向きは。裏では確実にサンプルデータとしか判断されないと。外者は手助けする変わり者もいるだろうが、危険なので安易に接するものでないと望に伝えた――


「じゃあ君は変わり者の外者で、僕を手助けしてくれてるの?」


 素直な質問であった。それに対し名も無き子供は、


「ボクはボクだ。手助けではない。興味を持ったそれだけだ少年」


 そう云うと微笑みともとれる曖昧な表情を浮かべた。望はそれでも良かった。心細さが紛れるし、なにより冷子を助けられた経緯があるからである。


「それでは話を戻すぞ少年」


 名も無き子供は語った――絶光蟲についてだ。遠い昔、ある外者から教えて貰った知識だと前置きをし説明しだした。この蟲は誰にも見えず、主に外物の死骸に入り込む蟲である。外物が死ぬまで待つ習性があり、その影響で望にも『絶消見殺す』なる能力が備わった。


 本来は死骸の持つArchetypアーキタイプ――所謂、元型。その元型に寄せられ、それを捕り込む。そしてその元型を、生きた外物へ運び体内で同化するという蟲だ。いくら蟲目を潰そうとも一度体内に侵入すればホストが絶命しない限り取り除くのは厳しい。


「同化!? どうゆうことそれ!?」


 望は激しく動揺した。除去できないという情報より同化に反応したのは、名も無き子供が右手を制止した行動から察していた。


「落ち着け少年。同化と云っても人間の寿命では足らない時間だ」


 そう、本来百年以上で完全同化する蟲なので望と完全同化はまずない。それこそ突然変異しない限り。


「そ、そう……でも元型アーキタイプって何? なぜそれが僕に……」


 大丈夫だという言葉がないのに望は不安を抱く。万が一もあるだろうから。そもそも、その万が一の確率で絶光蟲が体内混入しているのだから当たり前であった。


 名も無き子供は元型と絶光蟲についてはある程度の知識はあったが、なぜ望にという疑問は全くの謎である。そこに興味を持ったと言えるだろう。


 元型は生物すべてにあるものであり、一概に答えられるものでもない。流石の名も無き子供も望の元型には答えられなかったが、一例を出した。


――人間で例えるなら防衛本能だろう。外者で例えるなら攻撃本能だろう。その元型が才能・能力に影響を及ぼす。


 この例えに望は納得した。人間が繁栄したのは防衛本能のおかげだろうと心にすんなり入ったのである。逆に外者はその攻撃本能のせいで衰退したのだろと。出る杭は打つ的な考え。だがこれは例えであり、名も無き子供は簡略化した説明であった。


「それらの謎に興味あると云えばわかりやすかったかな少年?」


「うん。元型と蟲と僕の因果関係を知りたいんだね?」


「そうだ少年。理解が早くなったな。…………伝えてない事象もあるがどうする少年?」


 望と出会って初めて躊躇いの質問を出す。望はそれに対し即答した。伝えて欲しいと。この躊躇いは望も感づいた。その返答も薄々であるが納得するものだった。


「少年はもう――人間ではない。アウトクリーチャー。外者だ少年」


 厳密にはまだほぼ人間であるが、外者へ近づいているのも事実であった。ほぼ人間であるのは名も無き子供でも、出合った時に望を認識できなかったからである。


「うん。なんとなく気づいてた。直接言われるとショック受けるかと思ったけど、そうでもなかった……」


 本心だった。様々な体験を受けてきた望。人間でない事を受け入れた。この何でも受け入れる姿勢に名も無き子供は疑問を抱く。


「少年の過去を聞いてなかったな」


 望は事細かに土筆との出会いから別れ。冷子との出来事も話した。蟲に関する情報も全て包み隠さず説明した。話を聞き終わった名も無き子供はニヤリとした表情で云う。


「いくつか判ったぞ少年。まず蟲目だがな」


 名も無き子供はそう云うと、騒ぐ理由は至極簡単だと。拒絶反応でアウトクリーチャーが周りにいるから騒ぐのだ。範囲まではわからないと付け加えた。集中していると騒がないのは蟲目を押さえ込んでいる状態であり、うまく活用すれば絶消見殺しも回避できるかもしれないという希望。――だが逆にアウトクリーチャーとしての同化が早まる危険性も帯びている。この希望とも絶望ともとれる発言に望は、


「見殺すくらいならやってみる価値はある。いや……やる」


 見殺しに対する反抗。絶光蟲の特性に対する拒絶であった。宣戦布告と呼べるだろう。この『決意ある宣戦布告』を機に望の成長していなかった童心が急激に進歩するのであった。

一章終了です。

次話から二章になります。

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