6話:契約
そういえば、だが、
「契約ってなんだ?」
ちょくちょく話しに出てくるが、一向に内容は分からない。
「契約、ね。契約については、実践したほうが早いから」
え?やるのか、契約ってやつを。どんな感じなのだろうか……。
「まずは、試しに一人だけ契約するって言うのでいいかしら、マイマスター」
「試しにって?」
「……。まず、理解して欲しいのは、私たちに関わった時点で貴方は、獣人たちとの戦いを余儀なくされるわ。それを知ったうえで、私たちと契約するかという話よ」
「なっ、ちょっと待て。じゃあ、俺は獣人に狙われるのか!?」
そんな馬鹿な。
「違いますよ、マスター」
シリウスが言う。
「狙われるのではなく、もう、狙われているのですよ」
「貴方、さっき、変な空間に紛れ込んだでしょ。そこはね、【壊れた輪廻のセカイ】よ」
壊れた、なのか?
「そこで、貴方を襲ったのは獣人の使い魔よ」
使い魔。魔法使いが持つ黒猫や烏なんかのイメージがあるんだが……。
「獣人の使い魔が貴方を発見した時点で、人間であの世界に侵入できたイコール【最後の光の民】って認識されたわね」
つまり、最後の異端分子だから、速攻で消しに来ると。
「要するに、お前等と一緒にいたほうが、安全性が高いってことか?」
「飲み込みが早くて、助かるわよ」
猫耳少女は、にこりと笑っていった。
「で、どうやって契約するんだ?」
「契約、【エデン・エンゲージ】」
ん?エンゲージって結婚じゃなかったっけか?よく分からんが。
俺とシリウスは、廃工場の屋上に連れてこられた。そこの中央まで、来ると、周囲のハーツたちは、囲むように、俺たちを見ている。
「第一契約、始動【エデン】」
俺とシリウスを囲うように青紫の魔法陣が浮かび上がる。
二重の円。その中に浮かぶ七芒星。
その、魔法陣は、光って俺の、俺たちのことを包む。そして、不意に、シリウスが、体を寄せる。
――第二契約、結【エンゲージ】
その声と共に、シリウスの綺麗な顔が俺の顔に近づいてくる。
唇が重なり合う。
その刹那、俺の左半身に痛みが走る。白い羽が俺の左半身を包む。
な、なんだ、これは……?
「くっ……」
シリウスのほうも、右半身に黒い羽が浮かび上がっていた。
そう、それは、まるで俺と対称になるように。
身体に刻まれる印がごとく、半身に沁み亘る。
「第三契約、刻幻【コンタクト】」
その言葉と同時に身体の痛みが散った。
「契約が、終了したようね」
「お、おい、これ、なんだよ?」
俺の言葉に、猫耳少女が言う。
「それは、【呪印】ね」
呪印……?なんだそれ。凄いのか……?
「驚いたわ、呪印は、過去の契約でも、高いエデンの力を持つものとハーツが契約した時のみに発動するらしいのだけど……」
へ~、凄いんだな。ん?高いエデンの力?何だそれ。




