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665―ハーツ―  作者: 桃姫
炎の星――Dazzling flame wraps up the sky and lights up the world――
3/33

3話:尻尾

 昼休みになった。

 昼休みになると、尻尾で飛べるのではないかと思うくらいに尻尾がグルグル回っていた。それがあまりにも勢いが強いため、周囲の机をどんどんずらしていく。

 邪魔だなあ。しかも、パンツ丸見えだし。幸い(かどうかは微妙だが)俺にしか見えない位置である。

 ピンクのレース付きが大胆公開だが、それよりも、尻尾が気になって仕方が無い。尻尾は、どうやら、お尻のちょっと上の辺りから生えているらしく、ものすごく綺麗なお尻が見えるのに、尻尾が気になる俺ってどうなんだ?と自問しながら、少女が、ご飯をぱくつく様子を見るが、一瞬口を開けた瞬間に、八重歯が見えた。いや、八重歯と表現するには鋭すぎるくらいの歯だった。

 やっぱ狼…?嫌な考えが頭に過ぎったが、今まで狐や狸が人を化かす事は聞いた事があるが、狼が化かすなんて聞いた事も無いしな……。

 少女は、ご飯を食べ終わったら寝るらしく、机に突っ伏した。うちの学校には、基本的に真面目な奴しかいないので、転校生がどんなだろうが、他クラスが見に来ることはないし、うちのクラスの奴らも、もう興味が無い様で、全員食堂やら図書室やらに行ってしまっている。後藤はサボるために、校庭の外れに行っているだろうし。

 つまりは、簡単に言えば、このクラスには、今、俺とシリウスと言う少女しかいない訳だ。思わぬチャンスが来た。このタイミングで、尻尾を引っ張ることにしよう。

 俺は、裏に回って、机に突っ伏して寝ているためか、垂れ下がっている尻尾を、おもいっきり引っ張った。

「ふみゃっ!」

 突如奇声を上げ、尻尾を庇うように手をおしりにやる。そして、わなわなと口を動かしてから、

「し、ししっ、尻尾を触られっ、ま、まさっ、か。【ラスト・オブ・エデン】……?」

 ラストオブ……なんだって?よく分からないことを言う。

「あ、あの……。貴方には、この髪が、何色に見えますか?」

 何色って……。

「銀と朱色の混ざった……う~ん、銀朱色?」

 俺の答えに、少女は、目を煌かせる。

「そう、そうなんですね。貴方が、私の……私たちのマスターなんですね」

 は?マスター?なんじゃそりゃ?

 俺の思考は、少女に無理矢理抱きつかれ、胸に顔を埋められたことで止まった。と言うか、息が止まる!

「くっ、苦しいっ!」

 俺は、無理矢理引っぺがす。

「あっ、も、申し訳ありません」

 何なんだ。マスターとか。俺は、別に何のとりえもない少年だ。心も体も清らかな!いや、そんな恥ずかしいカミングアウトはどうでもいい。こいつが、何なのかだ……。人、なのか?

 しかし、ちょうどクラスメイトが帰ってきだした。

「この話は、また後でしましょう。指定する場所に、放課後来て下さい……」

 小声で囁いた少女はまた、器用に席に着いた。


 それから二時間半ほどして、学校が終わった。少女、シリウスは、すぐさま消えてしまった。「報告しなきゃ」とか言ってたがよく分からない。


 俺は、授業中にこっそりメモで渡してきた「場所」に向かっていた。しかし、不意に、謎の感覚に襲われる。

――頭が、痛い。

 なんだ、この感覚は。頭痛とは違う、何か別の感覚だ。頭の中が、躑躅色に塗りつぶされる。な、何だ?


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