29話:時空を駆る者
Scene八雲
私は、唱える。
「【雷鬼招来】!」
【時空剣】の切っ先に雷が帯電する。パチパチと先行放電を走らせながら。
「こけおどし」
と半翼人はこちらに突っ込んで鎌を振ってくる。
「それはどうかしら」
鎌に【時空剣】をぶつける。
瞬間、雷が鎌を伝う。
「……っ!」
半翼人は、鎌を地面に捨てた。
その反応は正解だったわね。でも、軽く痺れたはずよ。
さて、と、そろそろ行こうかしら。
「【雷鬼残像】」
その言葉を唱えると、【時空剣】が二本に増えた。
世界に二本とない伝説の剣、異時間、異空間取捨の剱。
「チッ!」
二本を振るわれるのはまずいと判断したのか、半翼人は、片方の剣を蹴り上げる。丁度、半翼人の横に落下した。しかし、帯電しているため、半翼人が触るのはおすすめできない。それを分かっている故か、鎌でこちらの首を狙ってくる。
私は、それを半円を描くように避ける。
そして、これを待っていた。
こちらへ向かってくる半翼人。
「【雷鬼一陣】」
半翼人の後ろにあるコピーの剣が雷となって、こちらの剣に戻ってくる。
バチィッと弾けるような音が聞こえ、半翼人の腹は、雷により焼かれていた。
「【雷鬼一陣】
【雷鬼残像】によって作られたコピーを元の一つの物体に戻すことができる。しかし、戻る時は、物質から雷となり「呪符」に戻るため、感電に注意すること」
そう書かれていた、とフウキが言っていた。
私が弾き飛ばされたほうがコピーだとしても、本物だとしても、反対の位置にあれば、どちらかが、相手を貫いて、どちらかに戻る。つまり、重要なのは、位置だけだった。




