28話:代償
俺と八雲は、廃墟に来ていた。
「ラスト・オブ・エデン……。と、【輪廻】」
「妙な組み合わせね。それは、こちらを裏切ったと言うことでいいのかしら?」
スピカと猫耳さんが聞いてくる。
「いや、裏切ったわけじゃねぇよ。ちょっとした取引……いや、提案、かな」
「提案?」
猫耳さんが眉を顰め聞いてくる。
「今の状況を打開したいから【終焉】を使うんだろ?」
そう、スピカの説明だとそういう認識のはずだ。
しかし、それだけだと世界は狂う。
だから、俺は考えた。
「俺は、【原初】の魔法使い……。【調律者】として、【終焉】のみの使用は許可できない」
「【終焉】のみ?それじゃあ、何と使えと言うのかしら」
簡単だ。
「【原初】と【終焉】の二つの魔法を最大の状態でぶつけて、起源魔力にアクセスさせ、【輪廻】で、起源魔力を散らす」
そもそも、獣人とハーツの差はどこから来ているかと言うと、魔法的力を自由に使える者の数の差だ。
ハーツで言う姫御子は、ハーツに四人だが、獣人には百人以上いるそうで、圧倒的に戦力が違う。それを覆すための【終焉】だと言うなら、根底を変えればいい。
「つまり、全員が力をなくせば、対等にやれるだろ?」
俺の言葉にスピカが、
「それは無理。ハーツの数と獣人の数が既に違いすぎる。数で圧倒される」
「それはいくらでも巻き返せるだろ?」
「無理。だから、その提案は却下する」
そう言って鎌を構える。
「麦と五月雨の姫御子。ラスト・オブ・エデンを頼む。【輪廻】は私が潰す」
予想通りの組み分けか。
猫耳さんもやはり姫御子か。シリウスとスピカと同等に話してたから、予想はしてたがな。
「焼けろ焔、
輝け深紅、
弾けろ爆炎、
天に昇る焔神よ、
幾千、幾万にも重なり、
燃え広がれ、
【焔丹】」
黄金の魔法陣から炎が噴出す。そして、俺は、手を動かし、魔法陣の位置を操作する。
猫耳さんとスピカの間に噴射が来るようにし、炎が、壁を作り、分断する。
「壁か」
「念のために一対一の真剣勝負ってことで」




