26話:駆け引き
俺は、学校をサボり、【輪廻のセカイ】へ来ていた。
そう、壊れていない、本物の【輪廻のセカイ】だ。
そこに八雲は居た。
「あら、フウキ。私のところに来たのは、私を選んでくれた……わけじゃなさそうね」
目線だけで気づくか。
「まあ、な」
「でも、敵意も殺意も殺気もない。ってことは、何?取引かしら?」
流石、察しが良い。
「そんなとこだ。と言うわけで、俺と来ないか?」
「それは、フウキだけと、ってことじゃないのよね?狼姫も一緒?」
まあ、灰色だしな。
「まだ誘ってねぇけど、そのつもりだ」
「それは無理な相談ね。私は、狼姫を殺したい。向こうも私を殺したい。犬猿の仲。敵同士を部屋に入れると殺しあう。ね、無理でしょ?」
殺しあうって……。
「ただでさえライバル。しかも、恋敵。一緒に行く理由がないんだけれど」
まあ、言うと思ったが、
「でもよ、俺の今考えてる方法だと、この世界が滅びず、シリウスも死なねぇんだけど、それでもついてくる気ない?」
「それは、無理よ。夢から目を覚ましなさい」
無理、か。でも、できる。
【原初】と、【終焉】。それがあって、そして、【輪廻】があれば。
「じゃあ、さ。俺と戦って、俺が勝てば、お前は俺についてくる。俺が負ければ、俺はお前につく」
「へ~、いいわね。でも、フウキ、貴方、私と賭け事して、一回でも勝てたことあったっけ?」
「ねぇな」
だって、コイツ、手加減してくんねぇから。
「雅、来て、【時空剣】」
時空剣を取り出す。
「切り取りなさい!」
「おっと、
焼けろ焔、
輝け深紅、
弾けろ爆炎、
天に昇る焔神よ、
幾千、幾万にも重なり、
燃え広がれ、
【焔丹】」
空間に黄金の魔法陣が浮かび上がる。紅の焔が魔法陣から飛び出す。
前、雷を使った時は、浮かばなかったはずの魔法陣、これは、
「【時空剣】、消し去って!」
おっと、考える時間もなしか……。
「忍び寄れ静寂、
広がれ暗闇、
見えざる漆黒、
天を覆う黒魔よ、
幾千、幾万にも重なり、
塞ぎつくせ、
【闇宵】」
黄金の魔法陣から闇が放たれ、世界を黒く塗りつぶす。
俺は、八雲の背後に手を構え、
「奏でろ雷鳴、
煌け稲妻、
弾けろ電流、
天より来たる雷撃よ、
幾千、幾万にも重なり、
打ち放て、」
後は、【雷光】と唱えるだけ。
もう魔法陣は形成されている。
「チェックメイト、てことね。はあ、分かった。負けよ負け」




