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665―ハーツ―  作者: 桃姫
黒の星――The star falls calmly――
26/33

26話:駆け引き

 俺は、学校をサボり、【輪廻のセカイ】へ来ていた。

 そう、壊れていない、本物の【輪廻のセカイ】だ。

 そこに八雲は居た。

「あら、フウキ。私のところに来たのは、私を選んでくれた……わけじゃなさそうね」

 目線だけで気づくか。

「まあ、な」

「でも、敵意も殺意も殺気もない。ってことは、何?取引かしら?」

 流石、察しが良い。

「そんなとこだ。と言うわけで、俺と来ないか?」

「それは、フウキだけと、ってことじゃないのよね?狼姫も一緒?」

 まあ、灰色だしな。

「まだ誘ってねぇけど、そのつもりだ」

「それは無理な相談ね。私は、狼姫を殺したい。向こうも私を殺したい。犬猿の仲。敵同士を部屋に入れると殺しあう。ね、無理でしょ?」

 殺しあうって……。

「ただでさえライバル。しかも、恋敵。一緒に行く理由がないんだけれど」

 まあ、言うと思ったが、

「でもよ、俺の今考えてる方法だと、この世界が滅びず、シリウスも死なねぇんだけど、それでもついてくる気ない?」

「それは、無理よ。夢から目を覚ましなさい」

 無理、か。でも、できる。

 【原初】と、【終焉】。それがあって、そして、【輪廻】があれば。

「じゃあ、さ。俺と戦って、俺が勝てば、お前は俺についてくる。俺が負ければ、俺はお前につく」

「へ~、いいわね。でも、フウキ、貴方、私と賭け事して、一回でも勝てたことあったっけ?」

「ねぇな」

 だって、コイツ、手加減してくんねぇから。

「雅、来て、【時空剣(レリファス)】」

 時空剣を取り出す。

「切り取りなさい!」

「おっと、

 焼けろ(ほむら)

 輝け深紅(しんく)

 弾けろ爆炎(ばくえん)

 天に昇る焔神(えんじん)よ、

 幾千、幾万にも重なり、

 燃え広がれ、

 【焔丹(えんたん)】」

 空間に黄金の魔法陣が浮かび上がる。紅の焔が魔法陣から飛び出す。

 前、雷を使った時は、浮かばなかったはずの魔法陣、これは、

「【時空剣(レリファス)】、消し去って!」

 おっと、考える時間もなしか……。

「忍び寄れ静寂、

 広がれ暗闇、

 見えざる漆黒、

 天を覆う黒魔(こくま)よ、

 幾千、幾万にも重なり、

 塞ぎつくせ、

 【闇宵(あんしょう)】」

 黄金の魔法陣から闇が放たれ、世界を黒く塗りつぶす。

 俺は、八雲の背後に手を構え、

「奏でろ雷鳴、

 煌け稲妻、

 弾けろ電流、

 天より来たる雷撃よ、

 幾千、幾万にも重なり、

 打ち放て、」

 後は、【雷光】と唱えるだけ。

 もう魔法陣は形成されている。

「チェックメイト、てことね。はあ、分かった。負けよ負け」


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