23話:スピカ
躑躅の世界に突如囚われた俺。
世界は、荒廃した。
「あ~、まったく、色々忙しいってのに。ま、とりあえず、一人は、まだまずいな」
俺はしばらく走っていたが、敵の気配を感じたので、隠れる事にした。すると、さっきまで、俺が居た道を、こないだの黒い何かこと、獣人の使い魔が通っていく。数十匹まとまっている。見つかると即死の可能性あるな。
そう思って身を潜めていたが、突如、俺の首筋に、冷たい何かが当たる。驚いて、勢いよく振り向こうとしたが、言葉で、止められた。
「やめた方がいい。振り向いた瞬間、首が中を舞うから」
そして、首元にあったのは、大きな鎌。確かに、振り向いていたら、首は今頃無かったかもしれない。
「あんた、誰?」
「ワタシは、春と真珠の姫御子。スピカと呼んでくれればいい」
炎と光の姫御子、春と真珠の姫御子、麦と五月雨の姫御子、源と銀の姫御子。
四人のハーツのトップの一人。
「お前こそ、誰だ?」
「俺は、篠宮フウキ。お前等の言うところの【最後の光の民】」
やっと、鎌が首から離れた。
「では、シリウスの呪印を見たはず。どのようなものだった。黒かった?」
「黒い羽が……」
「そう、では、やはり、シリウスが【終焉】」
そう言ってから、急に顔を上げるスピカ。
「チッ、【輪廻】か」
「【輪廻】?」
話も半ばにスピカは羽を出した。
白い羽。鳥人……か?
「そこね……【時空剣】!切り取りなさい!」
瞬間、世界が歪んだような錯覚を覚え、石垣も塀も道路も消えた。
「チッ!」
スピカは鎌で何もなくなった空間のその先を斬る。
「鳥姫、ね。あら、フウキも一緒?」
「八雲っ!」
俺は叫んだ。
「さあて、と。鳥姫。貴女には死んでもらうわ」
「厄介な武器……」
八雲が持っている剣のことだろう。
「【時空剣】は、時空間を切り取る剣。そこにあった空間は、切り取ったわ」
八雲が剣を構える。
剣がジリジリと音を立てて振るえている。
次の一撃で、この辺一帯を切り取る気か?
「安心して、フウキ。貴方は残すわ」
これは、まずいな。
ったく、人が真中の道行こうとしてんのに……。
――始まりの魔法使い、それを継ぐもの。
――大きな力、それは、自然。始まりは、全てを飲み込む、そして、包む自然の魔法。




