恋愛曲式
「恋愛曲式」
とある神社にやってきたのは
傷心気味の哀れな乙女
彼との両思いを願ってお百度参り
百度目に現れた神サマは
彼との恋をやり直すチカラをくれました
”最初の世界では彼にフラれてしまったけれど
次の世界ではきっと両思いでしょう?”
乙女は新たな恋を夢想して
新たな世界に一歩踏み出す
一度目の世界で彼に恋し
二度目の世界で彼をさらに好きになった
だけども
だけど
何度繰り返しても
何度やり直しても
彼は乙女に見向きもしない
彼とのハッピーエンドは訪れない
三度目の世界では彼に既に彼女がいた
四度目の世界では彼は既に死んでいた
五度目の世界では彼は存在しなかった
六、七、八、九…と繰り返しても
彼との両思いは訪れない
彼とはまだ幸せになれない
十度目 失敗
五十度目 失敗
百度目 失敗
何度も何度も繰り返す中で乙女は
どこで間違えたのだろう、と
自身の旅路を振り返る
一度目で彼を好きになったのが間違いなのか
三度目で彼を奪わなかったのが間違いなのか
五度目で彼と出会わなかったのが間違いなのか
そもそも最初に彼を好きになったのが間違いなのか
答えを問うが神は答えず
乙女は再び自身の恋を繰り返すのみ…