お掃除~
あらすじ
異世界の文化に触れるリサ。
そして時広が勇気を振り絞って言った一言に対するリサの反応は?
「本当ですか!?」
目をパァーっと輝かせて非常にうれしそうにするリサ。
「で、でもやはり迷惑じゃ……。」
「いや、大丈夫だようん。狭いけど片付ければ人二人寝れるスペースはあるし……。それに
なんかの縁じゃない? 日本人ってのは縁やゆかりってのを重んじる民族なんだよ。日本の
格言に旅は道連れ世は情けってのがあるくらいね。」
「その……、本当に良いのですか? お金などは持ってませんし……。」
「良いよ良いよ、人一人くらい増えたって平気平気! ……多分。」
いや、今趣味に裂いてる金を食費とかに回せば全然平気なはず……。
マグラの油圧クラッチはしばらく見送りだな……。
「でもやっぱり悪いです……、ここまでお世話になったのに……。」
「んー……、リサって家事とかできるの?」
「あ、はい。私昔からちょっと体が弱くて家にこもってばっかりだったんです。それで良く
お手伝いさんと一緒に料理作ったりとかお洗濯したりしてたんですよ。」
どうだ、と言わんばかりに胸を張るリサ。
「じゃあさ、俺がリサの事雇うよ。お給料はご飯とその他もろもろで、住み込みで働いてみ
ない? 仕事内容は家事全般。自慢じゃないけど俺料理下手なんだよね……。」
これなら良いだろう、ご飯作るのは本当に苦手だし。
それに掃除も滅多にしないし……、面倒臭いから。
「でも……、本当に良いんですか……?」
「俺が良いって言ってるんだから良いの!」
すこし恥ずかしくなってそっぽを向いてしまう。
きっと今の俺の顔はすこし赤みがさしているであろう。
「じゃあ……、おねがいします。」
少し伏目がちにリサが言う。
それ反則だって……。
「うん……、よろしくね。リサ。」
「はい、こちらこそ。トキヒロさん。」
満面の笑みのリサが眩しすぎてまたそっぽを向いてしまう。
ず、ずるいよリサ!!
そこからファミレスを出て、タバコに火を付ける。
長い事吸ってるブラックデビルのミルクココナッツ。
いつもならファミレスで遠慮なく吸うが今回はリサがいるために遠慮した。
外なら風があるから平気だろう。
「あ……、すごく良い香りですね……。とても甘くて優しい香り……。」
「あぁ、ごめんごめん。これタバコって言って葉巻みたいな物なんだ。迷惑だったかな?」
「いえ、お爺様も葉巻は嗜んでいましたので大丈夫ですよ。」
「そっか……、煙かったら言ってね。」
「はい。」
それからタバコを吸いつつ歩いて帰ってくる。
「とりあえず……、掃除しなきゃね。」
ゴミ屋敷と化してる家を掃除しなければ布団が敷けないし……、なにより俺が恥ずかし
い。
「初仕事ですね! フフッ。」
「あぁ、俺も手伝うよ。」
「お願いしますね?」
それからしばらくゴミを適当にぽいぽい捨てて行き、あらかた捨て終わった後にカーペッ
トをコロコロする。
あの粘着テープのやつね。
そしてリサはというとビショビショの玄関を掃除していた。
そういえば……。
「リサ、そういえばさ。」
「はい? どうかしました?」
「いや、俺に言葉の祝福かけた後に魔力尽きたって言ってなかったっけ?」
「あぁ……、あれですか……。あれは嘘です。もしトキヒロさんが蛮行に及ぶ危険性も考え
て多少は魔力が残っている状態でした。」
まぁたしかにいきなり見ず知らずの男の家に転移したらそら警戒するわな。
うん、納得。
「さてと、あらかた片付いたかな……?」
「はい、かなり綺麗になりましたね。」
「うん、ありがとねぇ……、ふぁあーー」
大きな口を開けて欠伸をする。
そういえば俺まだ寝て無かった、バイトから帰ってきたら飯食って寝るってのが最近のリ
ズムだったからなぁ……。
「トキヒロさん寝ますか?」
「んー……、リサは眠く無い?」
「正直少し眠たいですね……、ほとんど寝てませんし……。」
あぁ……、そりゃ里襲われてたら寝る暇無いよな……。
俺はあえてその話題には触れずに喋りだす。
「わかった、布団一組あるから使ってくれ。」
友達が泊まる時なんかに使う布団を押し入れからひっぱりだす。
掃除して良かった……。掃除しなかったら布団敷くスペースすらなかったからな……。
「あ、これ洗濯してから使って無いから綺麗だと思う……。」
「あ、そこまで気にしてもらわなくても大丈夫ですよ。」
クスッと笑うリサ。
その一動作だけでも絵になる……。
「と、とりあえずここに敷いて置くね。」
俺の布団から離して布団を敷く。
狭いからそんなに離れていないが……、まぁリサは女の子だからきっと近いと嫌がるだろ
う……。
「あ……、寝巻き……。」
俺は基本的に着の身着のまま布団に飛び込んで寝るから構わないけど……。
「いえ、気にしていただかなくても本当に平気ですよ?」
そうリサは言うが寝巻きくらいは用意してあげた方が良いだろう……。
「と、とりあえずこれ着といて。今度買いに行こう。」
XLサイズの上下グレーのスウェットを渡す。
正直彼女じゃダボッダボになってしまうだろうが……。まぁ、きついよりかはゆるい方が
いいだろう。
「すいません……、ありがとうございます。」
それを受け取って脱衣所に向かうリサ。
スウェットはヒモ式だから平気だろう。
しばらくすると上下スウェットに着替えたリサが出てくる。
今までかぶってたニット帽も脱いで、綺麗な銀蒼髪が見える。
うん、やっぱり綺麗だ。
ダボダボのスウェットもなんか言い表し辛いけどぐっと来る物がある。
「この寝巻き、とても肌触りが良いですね……。それにいい匂いがする……。」
「うわ、ごめんっ! ヤニ臭くない……? 大丈夫?」
「はい、さきほどの甘くて良い匂いがします。」
くんくんとスウェットの匂いをかぐリサ。
なんか本当に犬みたいでかわいいな……。
「そ、それじゃあおやすみ……。」
赤くなった顔を隠すため、布団にさっさと潜り込む。
「はい、おやすみなさい。トキヒロさん。」
「あ、あぁ。おやすみ、リサ。」
今までの生活に無かったそのとても優しくて美しい声が俺の頭の中に反復しながら、俺の
意識はすぐに落ちた。
これから、俺の新生活が始まるんだな……。
その時の時広の顔は幸せに満ち溢れていた。
これにて第1章とかそこらへん終了です。
次の章はリサがこの世界に慣れ親しんで行く所とか
新しいキャラとか
そして書きたかったバイクの描写とか出てきます。
正直長かった……。
しかし作者が書きたかった所はここから始まります。
お楽しみに。
そしてPV1万ありがとうございます!!
まだ物語が全然進んでいないので企画とかできないのが悲しいです;;
この場にて感謝を示したいと思います。
この物語を読んで下さっている皆様に最大の感謝を。