日常
よろしくおねがいします。
「宮中君お疲れ様ー」
「あ、お疲れ様っす」
タイムカードを押し終わると店長に話しかけられる。
このおっちゃん見た目は冴えないおっちゃんなのに、中身もぱっとしないおっちゃんなのである。
当たり障りが無さ過ぎるし、とくにこれいった特徴もなく詳細は適当にイメージして欲しい。
今の時間は5時ちょっと過ぎと言った所か、明け方のコンビニは人気が全く無く、ガランとしていた。
俺のシフトは深夜から明け方までの4~5時間。
元々夜型人間であるしフリーターだったので時間の余裕はあった、むしろありまくった。
形式上はフリーターなのだが心は根っからのニートであり、正直人生はもうすでに半ば諦めている。
適当な短大を出たものの、時代は就職氷河期。とくにこれといった物が無かった俺は例に漏れなく現在絶賛就職活動中だ。
そんな普通を極めたような宮中時広事俺は適当にラーメンと飲み物の入ったコンビニ袋片手に家路に付いた。
バイト先から徒歩5分ほどで我が家に付く。
短大入学と共に上京してきたのは良かったのだが、いかんせん財布が寒く貧乏だった俺は良い場所に住めるはずもなく。
この築60年、野差荘の6畳一間、家賃1万2千円の超ボロアパートに住んでいる。
冬は冷たく夏は暑い、名前に反して住民には優しくないのが恨み所だ。
意味があるのかどうかすらわからない簡素な鍵を通すと玄関の扉を開ける。
そこには一人暮らし特有の大量のゴミと万年床で足の踏み場もない何時もと変わらぬ我が家の姿があった。
電気ケトルでお湯を沸かしてる最中にとりあえずテレビを付ける。
世間では殺人や強盗など物騒なニュースは無くただただ政治家の足の引っ張り合いを写しているだけである。
これは平和だな、と安堵すればいいのかそれとも日本の行く先を危惧すればいいのか…。
そんな事を考えている間に電気ケトルのお湯が沸く。
それをカップラーメンに注ぐとなんとも腹が減る匂いが部屋を包む。かじかんだ手を器に当てて手を温めているとそれは起こった。