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ものごころついた頃には何となく理解していた
何かを得ようと手を伸ばす その行為がどれだけ愚かな事か
勿論当時はそこまで具体的に考えていたわけではない。
何となく"欲しいものを得られなくて悔しい"
という嫌な感情を抱きたくなかった
そう考えれば何も欲しがらなくなる事は私にとっては至極当然なことで。
そんなあたしだけどどうやらまわりの連中から見れば、あたしは他の奴らが欲しがる物をたくさん持っているらしい
まぁ、否定はしない
この恵まれた容姿、高校入試に全く困らない程度の頭脳、やったことないスポーツや何かも大体初見で対応可能な程の動体視力
客観的に見れば連中が欲しがる能力だ
私だって持っていて良かったなと思うことは当然ある。一般的にはスパダリと言うらしい
そんなあたしは最近思う
あたしは何が欲しいんだろうか
何が欲しかったんだろうか
桜の花びらが、道一面に敷き詰められている
それを踏みながら歩いていく初登校の今日、ふと思う。
何か、欲しいものがあった気がする
気づけば下駄箱についていた。
あたしはいつもこうだなー
どうせこれからも変わることは無い。
そんな事を考えながらあたしはクラス名簿の書かれた看板を見る
特に何の感慨もわかない
然程変わらない、多少水増しされたメンツ
そりゃ当然だ、あたしの通っていた中学校出身の奴は、大体距離の近いこの高校に入学してくる。
見飽きた看板から踵を返し、教室へ向おうとした。
春一番と花弁が私の視界を覆う
微かにベージュの入った長い髪が靡く。
視界が明けると一人、この春の情景に似合わない様相の女の子
ぱっと見分からないが、微かに震えながら手を合わせまるで何かに縋っているような仕草をする。
あたしの知らない女の子がそこにいた。
学校生活は円満に越したことはない。
知らない はじめましての人間ともある程度話せるようになっておくと、ただの歩がときたま金、銀 はては角、飛車に成る事だってある。
あたしはその女の子の手に手を重ねる
スパダリのあたしだからこそ出来る駒の作り方
どうせ温かさの種類なんて、与える者以外に分かるわけない
だから相手の欲しがるものを考えて機械的にそれをあげればいい。
大体連中の欲しがるものなんて安直なものばかりなのだから、楽で助かる。
大抵の物はそうやって流れてく
あの時全てに思えた約束は、時間と風がなんでも無いものに
あの悪意、奸謀すら過去、風化してしまったように
あのミサンガのように
そんなこんなであたしはまた手札を増やすのだった




