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姉バカ転生者〜ゲーム世界で魔物を蹴散らしながら妹をバズらせるまで〜  作者: マグローK


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第8話 お姉ちゃんとずっと一緒だよ

 カシャッ!


「うおっ、まぶし!」


 聞きなれたシャッター音にフラッシュ。


 いきなりのことで、ひやっとした嫌な感覚が心臓から指の先まで走り抜けた。


 現代の思い出がフラッシュバックした気がする。


「遠足とかで、何度笑ってないと言われたことか」


 今はそんなことどうでもいい。


 写真を撮る目的でもらった水晶がようやくカメラらしい動いたんだ。

 3割ほどの魔力を込めたところでようやく、ようやくだ。


 異常な動作でもないみたいで、光が収まるように、乳白色の残滓が中央へと収縮するように小さくなっていく。


「こ、れ、で、ようやく、リンちゃんを写真に収められるかな……?」


 ここまで長かった。

 魔力量でしかまともな変化がないなんて。


「でも、これはつまり、与える魔力量をメニュー扱いできるってことだよね。操作が変わってるし、水晶の変化からしてもそう。つまりそういうことだよね!」


 自信はないけど最有力仮説はそう言っている。


 ここまで、投げたり、置いたり、転がしたりして、とうさ……、自然体のリンちゃんを撮影しようとして失敗してきた。

 けども、案外操作方式は水晶自体の動きじゃないらしい。


 そんな急に降ってきたヒントへ私は臆せず飛びついた。


 早速魔力量を変えながら水晶を持つ。


「2割の魔力量ではシャッター音だけ……、1割5分、これは音無し。で、微小だと画像の表示っと、ほう……? あ、写ってる写ってる!」


 音だけかとも思ったけれど、しっかり写真も撮れてるね。

 表示機能で私の自撮りが写ってる。


 ただ、魔力量の違いで操作できるなら誰でもできそうだけど、表示以上の魔力を加えなかったのかな?

 音声の録音、再生も私が全力で魔力を加えると水晶が分裂したりして複製できたのと似たような現象?

 なんにせよ。メニューの操作方法がわかってよかったよかった。


「それにしても、私もかわいいかも」


 まだまだ子どもな年齢ってこともあるけど、こうしてまじまじと見られると、リンちゃんに似た茶髪美少女ってだけでありえんかわいい。

 今までナルシストというより自下げ女だっただけに、自分の姿を見てニヤニヤする日が来るとは思ってもいなかった。


 でも、私も存外悪くないかも……? なんて思えるのも、やっぱりリンちゃんに似てるからなんだけどね。


「やっぱりリンちゃんって不思議だなぁ。いや、この世はリンちゃんを中心に回ってるんだ」


 顔がいい人を見ると幸せになれるけど、リンちゃんの姿を見るともっと幸せになれる。


「これもリンちゃんのおかげか」


 リンちゃんを想うだけで心が救われる。

 なんて最高のライフハックなんだろう。


「とはいえ、このデカい水晶を持ち歩くのはスマホ世代にはダルすぎるよ」


 実のところ、音の水晶もめんどくささからアップグレードが進んでいる。

 今では実質イヤホンみたいな形で耳にはめられる加工もできるようになってきた。


 とすれば、今回も原理を理解して別へ移せたらいいのでは……?


「そうだっ! なんかファンタジーとかによく出てくるロケット? にすればいいんだよ」


 そうと決まれば解析と抽出だ。


「ふっふっふぅ。腕がなるなぁ」




 結局2日もかかってしまった。


 だけど、ついに完成した。


 水晶の動きを再現するのに、録音水晶よりも苦労して時間がかかったけど、ようやく原理を抽出できた。


 一徹した末のひらめき。

 複雑に絡み合った魔力路から一度の撮影と永続表示だけ抜き取って、小型水晶に実現できた。


 本当、徹夜残業なんてしたくないと思っていたけど、リンちゃんのためならできたね。ま、子どもは本来早く寝るべきだけど。


「もう……、ダメ……」




 ぐっすりと眠っていたはずが、物音で少しだけ意識が起こされた。


 泥棒、なはずはないんだけど……、なんだろう。夢、かな……?


「……お姉ちゃんの頼みでまた何かやったけど、今回はしゃべりもしなかったし、何やってたの?」


 なんだかリンちゃんの愛らしい声が遠くから聞こえる気がする。

 ああ、これは夢だな。ぼんやりふわふわ浮いている感覚がするのが夢っぽい。


「……またわたしの楽しみ……、仕事を奪うようなのだったら止めないと。たしか……、これ、だったかな」


 ごそごそと音がすると金属のこすれるような音がした気がする。

 ちょうど、私が明日つけようと思っていたロケットを置いたような場所からだ。

 すごい、鮮明な夢だなぁ。


「これ……」


 月明かりが入りんで、一瞬だけ、部屋が光に包まれた気がした。


 やっぱり夜。私は夢の中だ。


「わ、わたし……!?」


「リンちゃぁん」


「…………っ! ……起きた……?」


「お姉ちゃんがついてるよぉ。ヌフフ」


「寝言、か……。でも、これ、わたしが見える首飾りってことだよね。……んー……!」


 急に呼吸音がいつもの場所から聞こえるようになった気がする。

 凛ちゃんの寝息は最高のヒーリングミュージック。

 なんだか緊張が解けたように体から力が抜けていく。


「でも、これ。やっぱりわたしでよくない? ……、ま、まあ? これでいつでも一緒にいられるし?」


 何かが握られたような音とともに、ゆっくりと細く白いものが伸びてきた。

 気になってうっすら目を開けた瞬間、それは瞬時に引っ込んでしまった。


 何が近づいていたのか理解する前に机の上でまた金属のこすれるような音がした。

 風かな。


 私は抜けていく力に身を任せて目を閉じた。


「これを見てくれてる時は、確実にお姉ちゃんがわたしだけを見てるってコトだもんね」




 お腹の辺りに温い感覚。

 布団が上から押さえつけられるような音とともに、私の体が揺られた。

 あったかさが全身に広がってくる。


「おねーちゃん! 起きて。朝だよー」


「ん。起きるよー」


 ああ。今日はなんて最高の目覚め。いや、いつも以上。

 だって、いつも通りリンちゃんに起こしてもらっているんだか、ら……?


 私は眠気まなこをこすりながら、いまだにぼんやりしている視界でじっとその先に目を凝らした。


 今日のリンちゃんはいつも以上ににっこり笑顔。

 やけに嬉しそうな満面の笑みで私の体をゆすっていた。


「か、かわいい……」


「なに?」


「……おっと。口に出ちゃった」


「なにが?」


 いぶかしむような目を向けてくるリンちゃんに対して私は首を横に振った。


 どうやら聞き漏らしてくれたらしい。ということで私はほっと胸を撫で下ろす。

 伝えるならはっきり伝えたいもんね。


 いや、そうじゃなくって。


 私ははっきりしてきた目でリンちゃんのことを改めて見てみた。

 我慢しきれないみたいに顔に笑顔が満ち満ちている。


「リンちゃんどしたの? 何かいいことでもあった?」


「べーつにー? なーんでもー?」


「そう……?」


 何もないにしてはテンションが高い気がするけど……、そういう星の周りどきなのかな?

 何かあるような気もするけど、寝る前から起きるまでにいいことがあるような時間ってある?


 夢?


 そりゃ私もいい夢を見た気がするけど、夢ってそんなに覚えてなくない?


 私はよくわからず首をかしげていた。


 不思議な感覚の中でネックレスを取ろうと机に手を伸ばそうとして違和感に気づく。


「あれ? ロケットってここにあったっけ?」


 なんか場所が変わっているような……?

 そういえば、急に昨日の夢もそんな内容だった気がしてきた。


 もしかして、夢じゃないのかも?


「リンちゃん。何か知らない?」


「う、ううん。わたしは何もしてないよ?」


「そっか。でも、そうだよね。……ま、いっか」


 またも謎を抱えたまま私はネックレスを首から下げて布団を出た。


 これで私はリンちゃんと一緒。

 それができれば満足じゃ。


 世界に広める前に、リンちゃんは私だけの妹なんだから。


「とにかく、リンちゃんが幸せなら私も幸せだよ」


「ありがと。お姉ちゃん」


 一層笑ってくれるリンちゃんに胸の内があったかくなるのを感じながら私は目をつぶった。


 最高の朝だ。

 やっぱり遺せる人間になろう。せめて、魔王軍を追い返せるくらいには。


「……わたしもお姉ちゃんが幸せなら幸せなんだよ」


「ん?」


「んーん。行こっ」


 なんだか胸のロケットもあったかくなった気がした。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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