表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

脳内バクナノミクロ

作者: じゅラン椿

 ラインに立ち、手順書通りに組立をすすめる。ねじは3回、まわす。部品は左から順に差し込む何も考えずただ、手が動く。淡々としたリズムで・・・


 「違う、違う・・・」

上司の声が後ろから響く。振り返ると眉間にしわを寄せた顔。


"違う"?

手順書通りなのに???


脳がフリーズ開始。思考もループする、《ちがう、チガウ、違う?》

頭の中で同じ言葉に責められている感じ。


 (どっ・・・どうして間違えたのだろうか? 正確に動かしたはずなのに)


同僚たちは、淡々と作業を続けている。誰も止まらない。自分だけがバグっているまるで、違う次元にいるみたいだった。


小さなねじ1つ、部品1つ、ナノミクロの世界の中で自分の脳だけが大きく揺れている。



上司はため息をつき、手順書を示す。

そこにはわずかな違いがあった。自分がズレていたのかもしれない。


そして、気づく。数日前、手順が変更されていたのだ。

しかし、それを誰も知らなかった。同僚も自分も。


情報の欠落が、思い込み連鎖を生じていたのだ。

 深呼吸して自分に言い聞かせる。


小さな出来事。ナノミクロな出来事、極小なコト。

心の中では、波紋を広げたけれど、今はもう、修復している。


 手を止めず、次の作業へ・・・


 小さなバグは消え、ラインの音だけが工場内を支配していた。

 日常のラインの音が響く。


 ちょっとだけ、自分の脳が揺さぶっただけだった。




 日常の中には、ほんの小さな出来事がきっかけで、心が揺れる瞬間があります。

 手順書の違い、伝達のズレ、誰かの思い込み、それは一見すると取るに足らないことのように見えますが、当事者にとっては大きな混乱を呼ぶものです。


 「nano」という言葉には、"極小"という単位の意味と"・・・なの?"という、問いかけの響きを込めました。


 小さいけれど、確かに存在する違和感・不安・疑念。それが積み重なった先に、人は自分の思考を見つめ直すのかもしれません。



最後まで拝読、感謝申し上げます。

                      じゅラン 椿


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ